夢とか希望とか
ソリティも、本当にマインに相談すれば解決すると思っていたわけじゃありません。だから表情も険しかったんです。
『お前に何ができるのかやって見せろ』
という気分だったのは事実です。
でも、同時に、他に当てもなかった。なかったから、
「私がどう生きたいかとか言われても、全然分かりません。なんで自分が生まれてきちゃったのかも分からないんです。それで先生は、私がどう生きればいいのか考えろって言うんですか?」
ソリティは、マインを睨みつけるようにして見ながら、挑発的な言い方をしながらも、素直に思ったことを口にしました。
さらに、
「大人はすぐに、夢とか希望とか語りますよね? だけど私はそういうの全然、いいこと言ってるっていう気がしないんです。逆にムカつくんです。そんな綺麗事言われたって、自分が何で生まれてきたのかも分かんないのに、なんで夢とか希望とか持てるんですか?
夢とか希望とか、そんなの、そういうのを考える余裕がある人が持つものですよね? 私はそんなの、全然、欲しいと思わないんです。夢とか希望とかそんなこと言ってるの見たら、殴ってやりたいって思います。ムカついてムカついてどうしようもないんです。
先生、私が変なんですか? 夢とか希望とか持たないとダメなんですか? 私は生きてちゃダメなんですか……?」
それは、とても十歳の子供が口にするような言葉じゃなかったでしょう。だけど、ソリティにとってはそれが本当の気持ちだったんです。それぐらいソリティはたくさんのことを考えていたんです。
「ソリティさん……」
彼女の想いを目の当たりにして、マインは目を潤ませていたのでした。




