ミコナフォン
「なになに? なんなの!?」
オウとフカが男の人に飛びついてるのを見たルイネが声を上げます。でも、エンファは、
「あ、でも、あの人、なんか変」
と口にしたのです。そして。
「あの家の人じゃない、と思う」
よくミコナの家に遊びに来ていて、それで時々、その家の人とは挨拶を交わしていたけれど、今、家から出てきた人は初めて見る人でした。
しかも、なんだかやけに大きなバッグを手にしてて。
「くそっ! 何だこいつら!!」
男の人はなんとかオウとフカを追い払おうと手を振り回しますが、まったく役に立ちません。オウとフカはその手をひらりひらりと躱しながら、
「こいつ! 泥棒だ!!」
「ぶっちめる!!」
叫びます。
実はその家には、おばあさんが一人で住んでいて、しかも今日は他の街に住んでいる息子さんが迎えに来て一緒に旅行に出てるはずだったのです。
そのおばあさんは、ミコナが生まれるずっと前どころか、ハカセとママが結婚する前から一人で住んでいたのを、ママは知っていたのです。そしてその男の人は、おばあさんの息子さんじゃないことも。
しかもその男の人は、割れた窓から出てきていました。
ミコナはいつも身に着けているポシェットから小さな機械を取り出して、
「パパ! ルイーザさんのうちに泥棒! 警察呼んで!!」
ハカセに知らせます。その機械は、離れててもお話ができるようにハカセが彼女に持たせてくれていたものでした。
近頃普及し始めた携帯用の電話機<パーソナルフォン>を真似てハカセが作った<ミコナフォン>という機械だったのです。
繋がるのはハカセが持ってる同じ機械だけですけど。
それでも、ハカセに繋がればそれで十分。
「分かった!」
応えたハカセがそのまま警察に電話します。
その間もウルとフカが泥棒を足止めして、駆けつけたおまわりさんに泥棒はあえなく捕まってしまったのでした。