退屈なだけのシェルター
ソリティは、おとなしくしてる条件として、自分の部屋には一切、誰も入れないことを両親に認めさせていました。だから自室は、ソリティにとっては一種の聖域になっていたのでしょう。
彼女にとって、唯一の安らげる場所に。
だけどそれも、今となっては退屈なだけのシェルターに。両親がくれる、小学生としては桁が完全に一つ違っているお小遣いで買い漁ったゲームも漫画も、電子マネーで契約したアニメ配信も、彼女を満たしてはくれません。
だって彼女が本当に求めてるのは、そういうのじゃないから。
「ふざけんな……ふざけんな……ふざけんな……」
まるで呪文でも唱えるみたいに、ソリティはベッドに横になり、自分の腕で顔を覆いながら、何度もそう呟きました。
何度も、何度も、何度もです。十分くらい。
そうしているうちに、彼女はいつしか眠ってしまっていました。
それからまた一時間くらいすると、今度は枕下に置いた携帯端末が、ヴーッ、ヴーッ、と振動します。メッセージの着信を報せるものでした。
気付いたソリティが携帯端末を手に取って画面を見ると、
『晩ごはん、できたよ』
アルマからのメッセージが。
「……」
ソリティは、とても十歳とは思えない、覇気のない元気のない活力を感じさせない様子でのっそりと体を起こして、気だるそうに部屋を出て、家を出て、アルマの家に行きました。
「いらっしゃい。ソリティちゃん。もう用意できてるからね」
あたたかな笑顔で彼女を迎えてくれたのは、アルマのお母さん。
なのにソリティは、それにも挨拶さえ返さずにずかずかと家に上がり込み、慣れた様子でダイニングにいって、彼女の定位置に着いたのでした。




