難しいところ
ミコナやルイネと遊びながらも、携帯端末のアラームが鳴るたびに、エンファは、
「四時三十分。大丈夫だよ」
と、ボイスメッセージで両親に連絡を入れていました。
しかも、彼女が実際に口にしていたように、二時三十分なら二時三十分と、四時三十分なら四時三十分と時刻も入れて。
録音したものをメッセージとして使われないようにするためですね。
エンファの体調だけでなく、誘拐などに関しても案じているということです。もっとも、この街では、泥棒すら滅多にいなくて大騒ぎになるくらいですから、誘拐なんてそれこそ何十年も起こってませんけど。
「…」
そんな様子を見て、ガーが、心配そうにエンファを見上げます。
するとエンファも、ガーを見て、
「大丈夫だよ。いつものことだから」
と笑顔で答えました。
でも、「大丈夫」とは言いながらも、エンファ自身、両親の過干渉には思うところがないわけでもありません。
だからつい、連絡の後で、ため息をついてしまったりすることもあります。
ミコナは、そんなエンファを案じながらも、
『そんなことしなくてもいいよ』
とは、言いません。
エンファの家庭にとっては必要なことだからです。
ただそっと背中に触れて、
「ご苦労様」
と笑顔で声をかけるだけです。それに倣い、ルイネも、
「よしよし」
と、エンファの背中を撫でながら笑顔を向けます。
そんな二人の気遣いに、エンファも、ホッとできるんです。それがなかったら、もしかしたらエンファは、精神的に追い詰められてしまっていたかもしれません。
ミコナとルイネがいたからこそ、エンファは、落ち着いていられたのでしょう。
本当なら両親が過干渉をやめてくれるのが一番なんでしょうが、やっぱり、両親が心配するのも無理はないでしょうし、難しいところです。




