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楽になれた

このオシャレなカフェで、「あの<機械の洞窟>のような店の店主が実は女性だった」という話を切り出すハカセの独特のセンスには、結婚する前を含めればそれなりに長い付き合いだったママの魂の一部と記憶を持つウルも、呆気に取られてしまいます。


けれど、当のハカセは、


「あの人はね、昔、大きな怪我をして、顔の再建手術を受けたんだ。だけどその時の医師の腕があまり良くなかったそうで、男性みたいな顔になってしまって」


と続けます。


「なんと……」


ウルの方は、話の内容に声を詰まらせます。なのにハカセの話はここからさらに意外な方向に。


「普通はそこで、直してもらおうとするところなんだろうけど、実は店主は元の顔が嫌いだったそうで、『このままでいい』と言ったそうなんだ」


「マジか……」


思いがけない話題の思いがけない結末に、ウルはやっぱり唖然とするしかできませんでした。


言われてみると、あの店主の顔自体、どこか不自然な印象はありました。何となくですけど、作り物のような感じがしていたんです。それはてっきり、表情に乏しいからかと思っていたら、完全に予想外の展開。


そんなこと、他人に話すでしょうか?


戸惑うウルに、ハカセは、


「あの店主はね、それでよかったそうなんだ。普通の人にとってはとんでもない話かもしれなくても、あの店主にとっては、逆にそれによって、『楽になれた』って」


と、静かに語ります。すると、


「そうなんだ……」


不意に、腑に落ちるのが感じられたのです。『それによって楽になれた』という言葉がなんだか納得できてしまって。


あの店主も、それまで、いろいろなものを抱えていたのかもしれません。だからこそ、普通に考えれば『とんでもないこと』であってもそれによって大きく状況が変わり、むしろ<救い>になった。


世の中には、そういうこともあってもおかしくないんでしょう。



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