自分のしてきたことは
「……」
ミコナの言葉に、フカは答えることができませんでした。
ただ目を逸らし、黙るだけです。
『オレはオレだ、ルリアじゃない』
そうは言ったけれど、だけどフカがミコナのママの一部だったことは間違いなく事実。ママとして自分がミコナとどう接してきたかも思い出されてしまいます。
他人を危険に曝すからながら運転は禁止されているのに、他人を危険に曝してでも、屁理屈を並べてでも、とにかく携帯端末をいじるのをやめられない。それくらいにただのちっぽけな機械に依存しないといけないなんて悲しい状態にミコナを陥らせたくなかった。そのためにどう努力してきたかも。
地図は立ち止まって見ればいい。歩きながら運転しながら動画なんて見る必要はない。SNSなんてやる必要はない。メッセージを読む必要はない。手が空くまでの数分数十分も返信を待ってくれないような人とは付き合わなくていい。
僅かな金額で買えてしまうのちっぽけな機械になんか依存する必要なんてない。
そのために世界の誰よりもミコナのことを認めて受け止めて許してきた。
ミコナが悲しんでる時、怖がってる時、不安になってる時、いつもママが傍にいた。ちっぽけな機械で自分を慰めなくて済むように。
自分が病に侵されていると知った時、悲しんでる怖がってる不安になってるミコナの傍にいてあげられなくなるのが何より辛かった。何より怖かった。
だけど、あのどうしようもなく不器用なハカセが、カリナの助けを得ながらでもなんとか上手くやってこれたのが、今のミコナの様子を見るだけでも分かる。
自分のしてきたことは間違いじゃなかった。
ルールを守らない他人を責めるんじゃなく、変えようとするんじゃなく、自分がちゃんとしようと思える人間に育ってくれてた。
フカは、それを実感させられたのでした。




