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トウキョウダンジョンシティ  作者: ぐるぐる
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ゴブリンと自信 その1

 目が覚めた。




 時計を見て時間を確認する。




 朝七時。




 昨日は最悪の日だったが、寝て覚めると昨日の出来事のすべてが夢だったかのではないかと思う。




 僕は伸びをしてひとり呟く。




「はぁ、寝て忘れるってあるんだな……」




 昨日の憂鬱が嘘のように、晴れ晴れとしていた。




「魔力が低かったとはいっても、なんだかんだそれなりには戦えるでしょ」




 魔力がなかったわけではない。著しく低かっただけ。




 秋葉原の下に続くダンジョン。その第一階層に現れる魔物も僕と同様、魔力が著しく低い。




 それだったら僕にだってできるはず、戦えるはずだ。 




 僕は主人公ではない。それはもう割り切った。




 割り切ったからこそ、次の一歩を踏み出せる。人間とはこうして成長していくものだ。僕はそう思う。



 首からぶら下がった、ただ5とだけ記してある冒険者証を握る。




「さてと、とりあえず朝ごはんでも食べて、ダンジョンに行ってみるか」




 僕はご機嫌な朝食をつくる。




 焼き鮭に納豆、豆腐の味噌汁。これに炊き立てのごはんと副菜のひじきの煮もの。最後にデザートのヨーグルト。




 健康な心は健康な体に宿る。僕はそう信じている。




 台所に立ち、鼻歌なんかを歌いながらそれぞれ準備する。




 僕は料理が好きだ。




 お金のない貧乏一人暮らしの僕にとっては、生命維持のために必要不可欠だが、それを置いてもとても好きだ。




 料理はすべてが積み重ねだ。




 筑前煮なんかがいい例だ。




 本に書いてあった料亭の筑前煮なんかは特に当てはまる。




 それぞれの食材にそれぞれ合った方法で下ごしらえをし、最後にそれぞれをあわせ、まとめる。




 すると食材ひとつひとつがメイン級の存在感を持ち、とてもおいしくなる。




 人間だってそうだ。




 いろいろなことに真面目に打ち込んで、最終的な目標にたどり着くまでにさまざまな努力をする。




 そして、様々な目標への努力が実り、ついには夢を成し遂げる。




 そうやって生きていれば絶対にどこかで救われる時がくる。そう信じている。




 料理では積み重ねたすべてが味になり、人生では積み重ねたすべてが人間を作る。




 日進月歩、少しずつでも確実に前に。そうやっていきていきたいものだ。




 そうすればいつかは僕だって、英雄にはなれなくても、誰かを守ることができるのではないだろうか。そう信じたい。




 こうして思案にふけていると、炊飯器がごはんの炊きあがりを告げ、爽やかな甘い香りを鼻腔に届ける。




 出来上がったすべてをお皿に盛り付け、ローテーブルに付く。




「いただきます」




 僕は大きな口で頬張った。



次話からちゃんと冒険始めます。

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