冒険者になる その2
結論から言おう。
試験は最悪だった。
この試験は例年にならい、受験者の能力測定が行われる。
まずは運動能力の測定。
次に反射速度。
そして、体力測定。
ここまでは良かった。
なんなら、努力をした成果が実っていたのか、すべてにおいて優秀な成績だった。
だが、最後の魔力測定。
これが悪かった、いや最悪だった。
僕は観測史上、最低の魔力量を計測したのだ。
冒険者で無いものは口々に言う。魔力以外の能力が優秀であればそれでいいではないか、と。
それは冒険者について何も知らないからだ。
冒険者について、ダンジョンについて、どちらにおいても少しばかりの知識があればそんなことは言えない。
魔力が低いこと。それは冒険者にとっては致命的なことである。
なぜなら、魔力が物理現象の上位存在だとされているからだ。
それではどうしてそれがわかったのか。そしてなぜそれが致命的なのか。
それは、『魔物には銃弾が効かない』という性質からだった。
大災害の日、門からあふれ出た魔物をどうにか打ち倒そうと、自衛隊や米軍が連合部隊を組み、戦った。
しかし、重火器や戦略兵器のことごとくは効果が無く、代わりに、連合部隊で一人だけ生き残った軍人が行った格闘戦でのみ撃退することに成功したのだ。
このことから、魔力を帯びているものは魔力を帯びているものによる攻撃を受け付け、逆に魔力を帯びていないものの攻撃を受け付けないということがわかった。
話を戻そう。
僕は魔力が低い。そして、魔力を使い超常現象を起こしたり、身体能力の向上を図り戦う冒険者として、魔物と戦うためには魔力が必要不可欠である。
つまるところは、魔物との戦闘においての絶対的な才能が無いのだ。
僕はずっと冒険者にあこがれていた。
大災害の日、僕を助けてくれたあの英雄たちに。
だからこそ今日この日まで、体を鍛え、体力をつけ、努力をしてきた。
あの英雄のようになるため。
見ず知らずの誰かを守るため。
だが、魔力の高さが魔物への戦闘力に比例し、それが絶対的なものであるという事実が、僕の英雄への道を閉ざしたのであった。
僕は流れそうな涙をグッとこらえ、岐路につくことにした。
あきらめきれないというこの羨望、隣にいた過去最高の魔力量を記録したという男への嫉妬、そして冒険者としての能力の欠如、そのすべてがぐちゃぐちゃにないまぜになり、気づいてしまうのだった。
僕は主人公ではない、と。
背を向けたダンジョン協会。夕暮れが落とす影が下を向く僕にその大きさを強く見せつけてくる。
ダンジョンがすべての中心であるこの街で僕だけが小さかった。