弱虫な少年冒険者はいずれ伝説に名を遺す
初めて投稿します。
僕自身は小説を書くということを今までにしたことはありませんでしたが、ラノベを含め、多数の文学に触れたことで、興味を持ちましたので、やってみたいと思います。
1
東京は大地震に見舞われた。
ビルは倒壊し、家屋は潰れ、埋め立てられた土地には津波が押し寄せ、東京はあらゆる叡智を失った。
しかしそれは、これから始まる絶望の序章に過ぎなかった。
東京は秋葉原。そこにひとつの大きな門が現れた。
大理石のような豪奢な様相のそれは、崩れたビルの合間にそびえ、一際異彩を放つ。
災害から逃れた人々は、その異常な門の存在に気を向けることすらできず、ただただ放心していた。
あぁ、全てを無くしてしまった。
いっそのこと、自分も死んでしまえればよかったのに。
諦めが支配する。
すると、そんな気持ちに呼応するように、門が開く。
軋むような音。まるで嘲笑うような音に私は目を向ける。
それと同時か、人のような影が扉の奥から近づいてくる。
神か仏か、豪奢な作りの、まるで神話で聞くような門から現れる存在だ。どうか、この私を救ってくれ。藁にもすがるような思いでそれを見つめた。
しかし、現れたのは神でも仏でもなかった。
それは、悪魔だった。
一万とも十万とも言われるそれらは東京を飲み込み、抵抗する者、逃げ惑う者、諦める者、どんな者も分け隔てなく蹂躙した。
東京は叡智を失った。
東京は人々を失った。
東京は全てを失った。
すると、そこに5人の英雄が現れた。
彼らは見たこともない力を使い、悪魔どもを殲滅した。
そして彼らは言った。
我らは冒険者である。我ら人間には、門の出現により、力が宿った。これ以上何かを失いたくないもの、奪われたくないもの、そして、こんな理不尽からだれかを守りたいもの。立ち上がれ。そして我々と戦おう。
東京は全てを失った。
だが、その言葉が人々に勇気を与えた。
10年前、東京は全てを失った。
そして今、東京は失った全てを取り戻した。
僕は、立ち読みしていた五英雄の奇跡という本をしまった。
長いこと読みふけってしまったと少し後悔をし、伸びをしてからスマホを見る。
14:50。
予定の時刻は15:00だから、もう時間が無い。
急いで本屋から出る。
ここは東京の秋葉原。
地上50階クラスのビルが何棟も佇む近未来的なその街には、人の体よりも大きな剣を背負う者や、見るからに重そうな鉄鎧を身にまとうものなど、ファンタジー世界の住人のような人々が行き交っており、多少異様にすら見える。
しかし、そんなアンマッチな光景に僕は心を躍らせるのだった。
「僕も彼らみたいに強くなるんだ……!」
彼ら冒険者への憧れが僕の心を駆り立てる。
ひとりぽつりとついた言葉を置き去るように、早足で目的地に向かった。