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夏休みの前に
「はぁ……」
終礼が鳴り、俺のため息とともに学生たちは思い思いに解散していく。
真っ先に教室から出ていく者、級友と話し始める者、読書を始める者。
今から夏休みだ。誰もが浮かれた気分だろう。
わかるぜ、その気持ち。
俺も少し前までそうだった。
だからこそ取り残された感じがして、ため息もでる。
だが何かを恨むとしたら、それは俺自身の不勉強に他ならない。
端的にいって、赤点とったのでこれから補習なのである。
「木下くん、大丈夫?補習受けられそう?」
いつの間にか竹下先生が机の傍まで来ていた。
どうやら補習の呼び出しに来たらしい。
「気分悪いなら、もう少し後にする?補習」
優しい先生だ。テストの採点もこれくらい甘めにしてくれれば赤点取らずに済んだのにな。
「大丈夫です。すぐ受けます」
「そう、無理しないでね」
「あ、はい」
「用意ができたら荷物をもってB-21教室に来てくださいね」
「あ、はい」
竹下先生の気遣いに、気のない返事をする。
夏休み前の日なんて授業もなければ荷物などほとんどない。
俺は何も入っていない鞄をもって教室を後にした。