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ストーカー、あるいは冒険者 2

 「ここか……」


 思いの外簡単に冒険者ギルドは見つかった。『冒険者の都市』と言われるほどのこの街。一番大きな建物に行けば直ぐにわかった。


 多くの鎧や剣等の武具を持った人が開け放たれた大きな両扉を通り喧騒を作っている。内部では筋骨隆々とした男達が昼間から酒を飲んで騒ぎ、カウンターでは真剣に何か取引をする者の姿もあった。


 「まさに冒険者ギルドって感じだな」


 僕はそのままギルドの中に足を踏み入れる。

 中に入ると冒険者の何人かが此方を見るが無視。今はカウンターの前に作られている列に並ぶ。

 この列は冒険者希望の人達が並んでいるようだった。十五才位から二十歳位の男女が並んでいる。比率は男の方が圧倒的に高いが。

 暫くすると人が減って僕の番になる。カウンターには一人の女性がいた。


 「ようこそ冒険者ギルドへ。ご用は何でしょうか?」

 「冒険者登録したいのだが、やってもらえるか?」

 「かしこまりました。簡単な書類作成をしていただきます。こちらに名前、得意なこと、そして同意サインを」


 と、一枚の紙を渡される。


 名前、ユウタ・シンドウ


 得意なこと、追跡、調査?


 

 同意サインについては、冒険者同士のトラブルにはギルドは一切関与しないこと、生死についてギルドは一切の責任を持たないことを同意する。

 問題ないのでサインする。その時、異世界の言語も書けることに気がつき、違和感を覚えた。その内慣れるだろう、登録用紙を返す。

 登録用紙を受け取った受付嬢は登録用紙をよくわからない水晶の上にかざす。すると水晶は光り、カードを一枚吐き出した。


 「はい、ユウタ・シンドウ様ですね。これがギルドカードとなります。身分証明にもなるので無くさないで下さい。冒険者ランクはFスタートとなります。依頼を受けていく内に段々と上がって行くので頑張って下さい」


 と、名前と冒険者ランクが書かれている簡単なカードを渡された。


 「ありがとう」


 そう言ってカウンターから離れる。

 そのあとは冒険者ギルドの探索だ。


 冒険者ギルドは三階建ての建物だ。一階は一般的な受付と酒場を併設した場所。二階は装備品や道具類等を販売している。三階はギルドの宿で、ギルドメンバーであれば格安で泊まれるらしい。

 三階から降りて二階から一階を見下ろせる場所に着いた時、ギルド内が突然ざわめいた。


 「『戦乙女(ヴァルキュリア)』が帰還したぞ!」

 「「おお!」」


 戦乙女(ヴァルキュリア)?そんなことより、この、()()()()気配は(・・・)


 気配を頼りに()()()()を探す。そして、見つけた。

 

 ああ、あの絹のような黒髪、吸い込まれるような黒い瞳。忘れる筈がない。


 「二夜さん……!」


 ああ、見つけた。見つけた。だが、恐らく彼女がいるであろう『戦乙女ヴァルキュリア』とはなんだ?

 近くでざわついていた冒険者の一人に聞いてみる。


 「すまない、『戦乙女(ヴァルキュリア)』について教えてくれないか?今日この辺りに来て知らないんだ」

 「お前さん、新人か?『戦乙女ヴァルキュリア』っつーのはここ最近急に勢いを増してるパーティーだ」

 「なるほど。しかしこのざわめきようは何なんだ?ただ最近勢いのあるパーティーが帰ってきただけだろう?」

 「ばっかお前、『戦乙女ヴァルキュリア』のすげーところは『パーティーメンバー全員が女』ってことなんだよ。しかも上玉のな」

 「それは凄いな」

 「特に最近入った『アヤカ』って子また可愛くてよーーーっ!?」


 その名前を聞いて僕は全身の鳥肌が立った。

 やはり彼女は二夜さんだ。

 疑惑は、確信に変わった。

 だが、突然俺に色々教えてくれている冒険者が突然青ざめた。


 「どうした?何か不味い事でもあったか?」

 「いや、お前さん自分が恐ろしい雰囲気出してんの分かってねぇのか?何なんだ?お前、『アヤカ』って名前出したとたんにそんなんなりやがって」


 冒険者は僕を化け物のように見る。


 「そんな目で見ないでくれよ、ガラスのハートが割れてしまう」


 そう冗談めかして笑う。一瞬呆気にとられた冒険者も釣られて笑う。


 「ははは!冒険者になった奴がガラスのハートか!面白いことを言う。なんだ、昔『アヤカ』と何かあったのか?」

 「いや、昔そんな名前の知り合いがいただけだよ。」

 「そうか、なんか悪いことを言ったな」

 「いや、いい。色々教えてくれて助かった。ありがとう」


 冒険者はがはは、と快活に笑い、


 「良いってことよ、俺はジェイク。何かあったらまた聞きに来い。恋愛相談でも受けてやるぜ?」


 そんな冗談まで言ってきた。


 「僕はユウタ。何かあったらまた相談させてもらうよ。先輩」


 挨拶を交わすがもうジェイクの事などほとんど頭にない。考えてる事は1つ。


 二夜さん、今度こそ、貴女を守ります。


 

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