ストーカー、あるいは冒険者
送り出されたのはどうやら都市の路地裏らしい。
石造りの家々を見て、時代は中世ヨーロッパを思い起こさせる。
自分の服装を確認する。
身長は170センチと普通の高さ。黒いズボンに黒シャツ、黒コートと言う全身真っ黒だった。腰にはベルトポーチと黒塗りナイフが一本。
「・・・ん?」
コートのポケットに違和感。中には何枚かの銀色のコインと紙が入っていた。
どうやら神からの手紙らしい。
『無事転移できたようだね。そこは城塞都市ティロ。別名《冒険者の都市》だよ。彼女もここにいる。まずは冒険者ギルドに行くと良い。お約束の《ステータス》もあるから確認しようね』
そのあとは一般的な貨幣倍率等が書かれていた。
価値は銅貨から始まり大銅貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、魔鋼貨となるらしい。魔鋼ってなんだ。
しかし、ステータスか。
とりあえずありがちなことを言ってみる。
「『ステータス』」
そういうとあっさり目の前に淡く光る石板のようなものが出てきた。今までに見たことのない文字だったが不思議と理解できた。
ユウタ・シンドウ
Lv1
STR50
AGI100
VIT30
DEX120
LUCK10
スキル
《気配遮断》LvEX
《地理把握》Lv5
《変装》Lv2
《拷問》Lv10
《短剣術》Lv3
《気配察知》Lv3
《言語理解》Lv-
称号
《転生者》《ストーカー》
これが僕のステータス。レベルとか、スキルとか、現実感を無くしそうだ。
「しかし、《ストーカー》、ね」
自嘲気味に笑う。好きな人をストーキングして、その人を殺した奴に復讐して、死んだと思ったら異世界にまで追いかけにくる。
「僕にぴったりだ」
僕は薄暗い路地裏から、明るい街道に向けて歩き始めた。
まずは、冒険者ギルドに登録だ。