ストーカー、あるいは復讐鬼
かなり不定期投稿です
突然だが、僕、新藤裕太には好きな人がいる。
名前は二夜綾香さん。絹のような綺麗な黒髪を伸ばし、夜空のような吸い込まれそうな瞳、そして触れれば折れてしまいそうな華奢な体を持つ、美少女。性格は誰にでも優しく、頭もいい。誰もが憧れる女性だ。
彼女はいつもいろんな人に囲まれていて楽しそうだった。僕は遠くから見ていることしかできなかった。でも、それでいいと思っていた。彼女を見ていることができる。それだけで毎日が満足できた。
しかし、彼女を学校で見ているだけでは足りなくなってしまった。愛しくてたまらない彼女を、一分一秒でも長く見ていたかった。
あの髪を、あの目を、あの顔を、あの体を、あの全てを。
僕はずっと見ていたくて仕方なくなった。
だから僕はストーカーになった。
自覚はある。僕はもうおかしくなっている。彼女に怪しまれない距離感、移動ルート、服装、全てにおいて調べつくし、彼女を見ていた。
ただただ見つめていた。
だからあの日、あんなことになってしまったのは、神様が僕に天罰を与えたからなのかもしれない。
ある夏の日の夜のことだ。
その日もまた僕は二夜さんをストーキングしていた。
彼女が帰る時に必ず通ってしまう人気の無い道路。いつも彼女が何者かに襲われないかひやひやしていた道だ。その日ついに、その不安が的中してしまった。
思えば最初からおかしかった。
一人の僕と彼女と同じ高校の制服を着た男の子が突然彼女について来て告白したんだ。
男の子が好きな女の子に告白する。
青春によくある一ページ。
男の子の告白は断られてしまった。彼女は申し訳なさそうにしてた。その次の瞬間だった。
男の子の肩が震えた。顔もうなだれていて、よくわからなかった。最初は振られて悲しかっただけかと思っていた。でも、顔を上げた彼の顔は、この世のものとは思えない程憎しみに満ちていた。
『僕のものになら無いのなら、いっそのこと死んでしまえ』
そして彼は懐から鈍く光何かを出し、彼女のお腹にに突き刺した。
それは一本の包丁だった。
上がる悲鳴。何度も何度も肉を裂くような音が聞こえた。聞こえる笑い声。それを僕は、ガタガタ震えて見ていることしかできなかった。
なにもできなかった。彼女が動かなくなったあと、あの男は我に帰ったかのように悲鳴をあげて逃げていった。僕はゆるゆると、二夜さんに近づいた。
「ねぇ二夜さん。大丈夫?」
僕は彼女を抱き上げた。何でできたのかは今でもわからない。そしたら彼女はゆっくり目を開けたんだ。
「どう……して?」
明石くん。
そう言って彼女は逝った。
明石。そいつが犯人。
殺す。
殺す。
殺す!
殺す!!
殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスーーーーッ!
気づいたら、血の水溜まりの上に立ってた。その血は、彼女を殺した奴の血だった。
こいつはあのあと日本中を逃げ回り、僕に捕まった。そして、こいつを拷問した。
爪を剥がし、皮を剥ぎ、睾丸を潰し、歯を折り、目を潰し、指を一本一本落とした。ショック死しようとしたから闇で買った気付け薬で無理矢理起こして焼いた。
そんなのを永遠と永遠と永遠と永遠と永遠と永遠と繰り返して、
心臓をえぐり出した。
すっきりしなかった。すっきり?何で僕はすっきりしようとした?
彼女がいなくなったから?
彼女を殺したこいつが許せなかったから?
違う。
彼女を守れなかったからだ。
僕は僕が、許せない。
もう思い残すことはない。奴は殺した。
なら、もう終わりにしよう。
彼女を守れなかった僕に、罰を。
油を被り、火を着けた。
肉が焼ける感覚。直に無くなる。
そうして僕は、やっと死んだ。
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