3 女流作家たち
今回は自分が共感したり、なんだか考えさせられたりした女流作家たちの文章を【ノート】からご紹介します。
ここ10年以上まともに文章を読むことから遠ざかっていたので、最近の人気作家のものではないです。
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◆佐々木丸美『忘れな草』より
ひとつの手のひらには心に渦巻く人生の哀しみ、
もうひとつの手のひらには自然界に満ちる慈愛。
ふたつをぴったりと合わせて祈るとき、宇宙の片すみでささやかに生きる人間の本質が見えるのだ。
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◆吉本ばなな『キッチン』より
私がこの世でいちばん好きな場所は台所だと思う。
「(中略)本当にひとり立ちしたい人は、何かを育てるといいのよね。子供とかさ、鉢植えとかね。そうすると、自分の限界がわかるのよ。そこからが始まりなのよ」
「(中略)人生は本当にいっぺん絶望しないと、そこで本当に捨てらんないのは自分のどこなのかをわかんないと、本当に楽しいことが何かわかんないうちに大きくなっちゃうと思うの(中略)」
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◆水星今日子
想いは、言葉にしなければ通じない。
どれほどせつなく深い思いも、無頓着な相手に黙ったままで伝えることは至難の業。
それでも通じる時は、相手に既にそれを受けとめる心があるのだ。
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◆村田喜代子
「自分の過去と他人は変えられない」
流れ去った時間が確定しているのと同じように、私達は他人の性質も改造できないのだ。とするなら少しでも心地よく暮らすためには、自分の心の持ち方を改めるしかない。
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◆森瑤子
旅も人生も、目的地に至るまでの過程が一番楽しいのだ。
今、私たちはいきなり目的地に着いてしまう。
本当に大事なものを惜しげもなく飛び越えてしまっている。
一方的に与え続ける愛というものは、長続きしない。
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佐々木丸美は、北海道出身の作家で、代表作はおそらく映画化された『雪の断章』だと思います。
書かれている作品は北海道を舞台にしたものが多かったように記憶しています。
私の読んだ作品はどれも事件があり、ミステリータッチなのですが、ミステリー的な謎解きのところよりも、その美しく繊細に表現された文章のほうに惹かれたのを覚えています。
他作品は、『花嫁人形』、『風花の里』、『崖の館』、『水に描かれた館』を読みました。
何か仏教の教え的な文章ですが、とても綺麗だったので気に入って書き残したのだと思います。
吉本ばななは、みなさんのほうがよくご存知の作家かもしれません。私はこの『キッチン』しか読んだことがないのです。こちらも映画化されています。
この作品の持っている雰囲気がとても好きでした。気に入った部分の文章が私の【ノート】に5ページも書かれています。
読みやすい文章の中に、人間の必ず受け止めなければならない悲しみが根底に流れ、そこに綴られる優しい言葉の数々が心に染み入る感じがしました。
映画の中で映し出される可愛らしく懐かしい台所に憧れました。
水星今日子を調べたのですが、どのようなプロフィールの作家なのか、どのような作品を書いたとかまったくわかりませんでした。この文章をどれから抜粋したのかも私の【ノート】に書かれていなかったので、残念です。この文章は、そうだよなあと共感させられました。
なにかの小説のあとがきか何かでしょうか? そんな感じがしますが不明です。
村田喜代子のこの文章も、どこから書き写したのか不明です。ですが、調べるとプロフィールはわかりました。
この作家は、『渦の中』という作品で芥川賞を受賞し、他の作品でも数々の賞をとっているすごい方でした。
『渦の中』は、名前だけは聞いたことのある『八月の狂詩曲』という映画の原作だそうです。
他人は変えられないというのは、よく言われることですが、そう思っていない人が多いような気がします。
それでお互いとても苦しい思いをすることがありますよね。
森瑤子は大人の女性の恋愛を描いた作品が有名な人気作家で、私もどの作品だったかは忘れましたが、いくつかは読みました。改めて調べてみると、37歳から書き始め、52歳で亡くなるまでの短い間に、小説、エッセイ、翻訳など100冊以上の作品を書いたというのですから驚きです。
少し前に放送されたNHK朝の連続テレビ小説『マッサン』の原作はこの作家の『望郷』という作品だったそうです。
上記の文章からは、確かに自分もそうですが、楽をして直線コースを行こうとしがちな所を指摘されてるようで考えさせられます。人生は回り道の方が得るものが大きいのかもしれませんね。
愛については、親子の愛は別として、男女の間は改めてこのように文章にされるとその通りだと思います。