税金対策ロボ ゴシンタイザー
確定申告の準備に苦しみながら生み出しました。
「ぬううううう、なんということじゃあああああ!!」
その日、天王山地球科学研究所の天王山博士は、頭を抱えていた。
あらゆる分野の研究の第一人者である天王山博士は、数年前から宇宙からの侵略者ワルダック星人の出現を察知し、それに対抗するべく地球防衛戦力の開発に日夜いそしんでいた。そうして完成したのが、史上初となる搭乗型スーパーロボット〝ゼンカイザー〟である。身長40メートル、全重3万5千トン。未知のクリーンエネルギーである〝天王山スペシャルクリーンエネルギー〟によって稼働し、インフェルニック・レイ、カイザーフィスト、ウルトラ天王山スペシャルなどの必殺技で、あらゆる敵を粉砕する。
だが、ひとつ問題があった。
天王山博士は、ゼンカイザーを開発するのに今までに溜め込んだすべての貯蓄、そして天王山地球科学研究所の全資産を使い果たしてしまったのである。もはや、研究所に遺されているのはゼンカイザーのみ。このままでは固定資産税の対象となり、しかし手元に一銭もお金がない天王山博士は、税金未納者の烙印を押されてしまう。
天王山博士は、知人の税理士に相談した。
「どうすればいいだろうか先生! このままでは、研究所もゼンカイザーも差し押さえられてしまう! その間にワルダック星人の侵略があれば、世界は終わりじゃ!」
「ふむ、そうですね……」
税理士は天王山博士の提示した様々な書類に目を通し、こう答えたのである。
「ひとつ方法があります」
「おお、本当かね!? それは一体どんな手段じゃね!?」
「宗教法人を作りましょう」
税金対策ロボ ゴシンタイザー
最終話 新たなる旅立ち!ゴシンタイザーよ永遠に
宗教法人・天王山地球科学研究所。
この地球上で唯一、外宇宙からの侵略者、ワルダック星人に対抗する力を持つ人類の砦である。その本拠は山梨県の山中にあり、休眠中であった新興宗教の施設を買い取って改造したものである。そしてそれは、天王山地球科学教の総本山でもあった。
この日本では、宗教活動のためのものは固定資産とはみなされず、税金が発生しない。肌に入れ墨が入ったちょっと怖い人たちがやたらと純金の仏像を持っているのは、仏像が課税対象にならず、知人に贈与・相続をしても国にお金を取られないためだ。比較的有名な節税テクニックである。
天王山博士の知人である税理士の先生は、ここに着目した。
すなわち、ゼンカイザーを御神体とした新興宗教を設立すれば、ゼンカイザーに固定資産税は発生しない。天王山博士はゼンカイザーをゴシンタイザーと改め、新興宗教・天王山地球科学教の設立を決意した。教祖はもちろん自分、教義は『地球防衛』である。
政界、経済界の各方面に根強いパイプを持つ天王山博士は、設立からわずか数カ月で、天王山地球科学教を日本有数の宗教法人に押し上げた。そしてそのおよそ2年後、博士の予想は見事に的中し、ワルダック星人による地球侵略が始まったのである。
そして今、ワルダック星人の放ったブラッディロボ・マッドネスバルーン8号が、熱海を襲撃しているという情報が入った!
「剛児くん、ゴシンタイザー出撃じゃ! 準備はできておるかね!」
『ばっちりです、博士!』
モニターの向こうで、若きパイロット豪徳寺剛児が、爽やか熱血スマイルと共にサムズアップする。
「うむ、ではこれより、ゴシンタイザー出撃の儀を執り行う!!」
天王寺博士は、厳かに宣言した。オペレーターの各務原芽衣が頷き、施設内アナウンスで各部署へと通達する。
「これより、ゴシンタイザー出撃の儀を執り行います。第三位以上の各僧は所定の位置についてください」
世界を防衛するためと言えど、ゴシンタイザーの戦闘はあくまでも宗教活動の一環でなければならない。税務署の目を欺くため、ゴシンタイザー出撃の際には、常に出撃の儀が執り行われる習わしとなっていた。
神然の間の各ブロックに座り込んだ、天王寺地球科学教の僧侶たちが、念仏を唱え始める。念仏はスピーカーによって施設の外、あるいは、日本各地に存在する天王寺地球科学教の支部へと転送され、ワルダック星人迎撃に向かわんとするゴシンタイザーの存在を告げた。
別にプロパガンダをやっているつもりはない天王寺博士だが、この発進シークエンスにより、人々を(物理的に)救済するゴシンタイザーの姿が説得力を持つことになった。ワルダック星人の襲撃以来、天王寺地球科学教の教徒は増加の一途をたどっている。天王寺博士としては、当然世界を救うのが目的なので、教徒かそうでないかなど一切気にしないのだが、そのストイックな救済の姿勢がなお一層ウケた。
まぁ、天王寺博士としては、信者が増えた方が資金も潤沢に運用でき、よりワルダック星人を迎撃するための装備を整えられるのでありがたいのだが。
ゴシンタイザーを乗せたステージがゆっくりとせり上がり、そのそそり立つ威容が施設の外へと姿を現した。
『うおおおお! ゴシンタイザー様じゃあああ!』
『ゴシンタイザー様が降臨なされた!』
『ゴシンタイザー様、どうか、どうか熱海をお救いくださいませ!』
『おお……ありがたや、ありがたや……』
各支部や施設の外を映し出すモニターには、熱狂し、涙を流しながら拝む信者たちの姿がある。その姿を眺めながら、天王寺博士は腕を組み、オペレーターの各務原芽衣に言葉をかけた。
「各務原くん……」
「なんですかー?」
「私は、スーパーロボットとは、人々の応援を一身に背負って戦うものだと思っているのだが……」
天王寺博士の表情は暗い。
「これは果たして正しい姿なのだろうかね……?」
「さあ?」
芽衣は、サラダせんべいの袋をバリッと開けて首を傾げた。
「まぁ、良いんじゃないですか? みんな応援してくれてるし、税金も浮くし」
「そうか、それもそうだな! 各務原くん、私にもせんべいをくれ」
「はい」
二人はモニターをみながら、バリバリとサラダせんべいをかじる。モニターの向こうで、パイロットスーツを纏った豪徳寺剛児が叫んだ。
『博士、それじゃあ行って来るぜ!』
「うむ! 損害は気にするな! これは宗教活動の一環なのでな! 動力代も修繕費も全部経費で落ちる! 存分にやれ!」
『わかってるって! そんじゃあ行くぜ、ゴシンタイザー、ゴォーッ!!』
かくして、愛と平和の使者ゴシンタイザーは、熱海へと向けて旅立った。