戦闘
訓練開始の鐘がなる。
と、同時に俺達は訓練が行われる訓練ドームNo.1に到着した。
このドームは生徒の訓練のために作られたもので、数はNo.1からNo.4までの4つがあり、No.1の広さは東京ドームほどの広さがある。
中にはホログラムを使った最新鋭の技術が盛り込まれていて、様々なカリキュラムの指導が行うことができる。
「私の訓練にチャイムと同時に滑り込むとはいい度胸だ、本城凪」
「すいません…」
訓練の担当をしている篠宮師匠にやはり怒られた。
20代後半という若さで様々な修羅場をくぐり抜けてきた実戦経験豊富な正規の軍人だ。かなりの美人だが、仕事に打ち込んでいたが故に彼氏もいないらしい。(本人に聞いたらおそらく半殺しにはされるだろう)
「昼の時間に私のところにくるように。たっぷりしぼってやる。それでは訓練を始める。今日はUNHとのリンク率を私に報告したのち、生徒同士の乱戦を行う予定だ。リンク率を測ったら報告し、各自待機していろ」
リンク率とはUNHと適合者がどれほど結びついているかを数値化したもの、つまりこころを通わせているかを表すものだ。
手をつなぎ、[リンク・メジャー]と言うことでUNHにプログラムされているシステムにより計測することができる。
数値が高ければ高いほど、UNHが自分に合った動きになる。つまり自らに適合した武器として、パートナーとして、戦いの中における連携がよくなっていく。
「間に合ったのにあとで説教とはついてねえな…」
「マスターが遅いからです」
「運んでもらっておいて何様だお前は!」
「お姫様です」
「そうかよ! ならお姫様抱っこでもすればよかったかな」
「今更したいと言ってもダメですよ?どうしてもしたいなら誠意を見せてください」
「いや望んでないからな?」
「そうですね…… ここはチューをしてくれたら許します」
「いや望んでないからな?」
「え……今なんて言いました?」
「望んでないといったんだ」
「ええ!? 今宵は共に過ごそうだなんて… ダメです!進みすぎですマスター!」
「暴走しすぎだ! 一旦深呼吸でもしろ…」
「ひっひっふーー」
「産むな! それこそ進みすぎだろ!」
「お前ら遅刻に私語、さらには私の前でそういう話までするとは訓練をなめてるな?」
「「いや、先生こいつ[マスター]が……」」
「いいから早くしろ、後はお前らだけだ」
「はい…」
これ以上言い訳をして先生の逆鱗にふれるのは、後の説教のことを考えても避けなければならないので素直にしたがう。
カレンと手を握り、(なぜかカレンは顔を赤らめている)リンク・メジャーと唱える。
これでカレンの脳内でリンク率が測られ、俺たちに告げられる。ちなみにこの学校の生徒の平均は30%ほどだ。
「…70%」
「まあまあだな。ってことで70%です、篠宮 師匠」
「わかった」
「…私の心は100%全部マスターでいっぱいなのに…」
「カレン何かいったか??」
「いーえー、なにも」
なんとなくカレンの態度がおかしい気がする。
しかしそのことを尋ねる前に篠宮師匠の指示が飛んだ。
「乱戦開始!!」
その声の直後、近くにいた別のペアが俺たちに向かって左右から挟むように突撃してきた。二人とも模造刀を手にしている。ばっさり切られる、などということはないだろうが、骨折くらいはするかもしれない。突然の事態ではあるが、こんなことはこの学園では日常だ。
奇襲で向かってくるふた振りの刀を凪は 避けられない、いや、避けない。
直撃の寸前に後ろからカレンの手が同時にはらい、二本とも無力化する。
「くらっとけ!!」
驚いた相手の膝へ下段蹴りを叩き込む。カレンの守りのおかげで力を溜めることができたその蹴りはしばらく動けないくらいのダメージを与えることに成功する。
蹴りの勢いを生かして一回転しつつ、ラリアットの要領でもう片方の顔面に腕をヒットさせて倒す。
2人の相手を無力化した直後カレンは両方の手を盾へと変化させ、俺の心臓を守る。
何かが盾にあたる。強い衝撃が襲うが顔色ひとつ変えないカレン。
周りから見ているだけでは何が起きたのかわからなかっただろう。
そこにあったのはまさに俺の心臓に向かって打たれていたゴム弾だった。
訓練用とはいえ当たっていれば、威力の高い狙撃銃なので戦闘不能になっていただろう。
弾道の先にはドームの反対側で俺が倒れていないことに驚きを隠せない狙撃者と回復役のペア。
その一瞬がこの乱戦では命取り、横からの強襲をうけ、狙撃者たちはリタイアとなる。
その一部始終を目の端で捉えながらも、他のペアからのめまぐるしい攻撃は続く。
その絶え間なく続く猛攻を、カレンの鉄壁の守りと凪の徒手空拳は全て凌ぎ、また、すべての相手を無力化した。
「そこまで!!」
篠宮師匠の一声でその場に立ち、残っていることができた数少ない生徒全てが倒れこんだ。
一時も休めない戦闘は一時間目から行うにはなかなかに辛いのである。
「お疲れ様…でした… マスター…」
「ああ……、お疲れ、サンキューな…」
「諸君、これで訓練終了だ。怪我をしたものは保健室に行くように。では解散!」
こうしてヘトヘトになりながらも、校内最強とされる俺とカレンのペアの一時間目は終わった。