日常
プロローグから読んでいただけるとわかりやすいです。
ゆさゆさゆさ
何かが俺の体を揺すっている。
ゆさゆさゆさ
布団の中は心地よく、外に出るのは嫌なので気がつかないふりをしておく。もし運がよければ起こしに来た何かは諦めてくれて、このまま学校を休めるかもしれない。
ゆさゆさゆさゆさゆさ
俺は屈しないぞ、このまま惰眠を貪ってやる。
「……アームトランスフォーム ハンマー」
「ああ!いい朝だ!さぁ今日も元気に頑張ろう!」
「おはようございます。マスター」
朝から命を脅かされ、跳ね起きた俺にゆっくりとした声で挨拶をしてくるのは、俺のUNH正式名
[K-暗器00番]。本人(本機?)が正式名で呼ばれることを嫌がっているので、俺は頭文字をとってカレンと呼んでいる。
UNHはその特徴として、外見は人の形を取っていて、人工知能による会話もできる。日常生活どころか、近くで凝視しても全く気がつかないほどの精度だ。
「もう少し穏やかに起こしてくれないか……。毎朝こうだといつか死ぬぞ俺」
「マスターがゆさゆさしても起きないのがいけないのです。罰としておはようのチューを希望します」
「うちにそんな欧米な文化はない」
おとなしい顔で迫ってくるカレンを向こうへ押し戻す。普通ならベッドで美少女に迫られるというのは、そこまで恋愛経験が豊富ではない16歳には興奮するものであったかもしれない。
しかし、毎日このくだりをしている俺としては慣れたものだ。
不満そうなカレンは押し戻そうとしたその手を掴むと……手のひらを握ってきた。
ニギニギニギニギ
「なぁ」
ニギニギニギニギ
「離してくれ」
ニギニギニギニギ
「聞けよおおおお!!」
「私は今なにかしてましたか?」
しれっと手を離してスッとぼける美少女型武器。それでも満足したのか、顔がにやけている。
こういうところは素直に可愛い。
「とりあえず飯にするか……」
「賛成です」
リビングまで降り、カレンが作っておいてくれた朝食をたべる。
ご飯は白く立っていて、鮭の塩焼きと鰹ダシの味噌汁がいいおともになっている。漬け物も添えてあり、箸休めにちょうどいい。
「おいしいですか?」
「ああ、いつも通り美味いよ。ありがとな」
褒めてお礼を言うと、ニコニコとした笑顔を浮かべるカレン。料理の感想を聞けると嬉しいというのはよく聞くので今度は自分から言ってあげようと思う。
朝ごはんを済ませると、制服に着替えて家をでる。 勿論カレンも一緒にだ。
国立防衛大学付属 鏡原高校。
俺たちの通っているこの高校は、UNHの適合者のみが通う学校で、授業の中で戦闘訓練やクラスごとの模擬戦なども行われる。生徒はその訓練の成績と学業の成績の両方によって進路を決定していく。UNHには適合者と過ごした時間の濃さに応じて、経験値を獲得しその適合者に最適な武器となる機能がある。これが正規の軍人にUNHを与えられなかった理由で、どうしても正規軍人となると他の任務等のせいで濃い時間はかけられないのだ。
その点、学生ならばUNH適合者を集めた学校を作ることで、トレーニングとUNHのリンク(関係促進)を行いやすい。
大抵の生徒は国立防衛大学へとすすむが、中には自衛隊に進むものもいる。
「マスター、少し遅れ気味です。このままでは遅刻するかもしれません」
「そいつはまずいな……今日は一時間目から対人訓練だ。遅れると補習がめんどくさい。走るぞカレン」
「嫌です。私をおんぶして走ってください」
「どうしてそうなるんだ!」
「あ、持病の腹痛と腰痛と足の痛みと頭痛と目の痒みと深爪がいたいです。走れません」
「お前に深爪とかあるのか!?くそっ、こんなことで言い合ってる場合じゃない!もういい!乗れ!」
「なんだかんだ言って乗せてくれる優しいマスターが好きです」
待ってましたとばかりに背中に乗ってくるカレン。人工物ではあるのだが、女の子特有の柔らかさと甘い香りは本物のようで、ここまでくっつくと多少興奮はしてしまう。首からまわされた腕は白くスベスベで気持ちいい。
「それではマスター!れっつごう」
「はいはい……」
こうしてカレンを背負って走る俺は遅刻ギリギリで学校に到着するのであった。