3
翌日、朝早くからバンキムと剣の稽古をしていたキーエンスを呼びに、イオがやってきた。
「おはようございますバンキム様!キーエンス、母上が待ってる、僕の乗ってきた馬車で家へ行くといい」
「えぇ?」
本気だったのか…。
キーエンスは迷う。今まで想像もしたこともない。自分が舞いを踊るなんて。
けれど、ナナイの任がなくなった今、どんな生き方ができるか探さなければならない。
「…わかりました」
嫌だったら、すぐに断ろう。
そう決め、キーエンスはバンキムに礼をすると、馬車へ向かった。
「バンキム様の剣を継ぐのは、やはりキーエンスなのですか?気を悪くなさったのでは?」
イオは気まずげにバンキムを見上げる。
「別にいいさ。あれだけの舞姫に習うんだ。糧になりこそすれ、無駄にななるまい。キィは女だからな、剣のみで戦うには限度がある。あらゆる技能を身につけて損はない」
イオを見下ろし、にやりと笑う。
「僕は男です!一生懸命やります!教えて下さい」
「訓練所にはサボらず行けよ?古代語も習うんだろう?キィは礼儀作法もばっちりだぞ」
イオはぐ、と唇をかむ。どうやら礼儀作法は苦手らしい。
「エビネ家の嫡子なのだ。いずれ王族と深く関わることもあろう。作法は礼に繋がる。しっかり学べ」
はい、と元気のいい声が、カダールの屋敷に響いた。




