表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双剣の舞姫  作者: 黒猫るぅ
カダールの末裔
25/264

 二人が人混みに紛れ門をくぐると、大勢の人間が武器を手に集まっていた。キーエンスほどの子どもから、バンキムぐらいの大人まで、様々な年代の人間があちらこちらへと移動している。


「馬はあっちだ!徒歩で来るように書いてあっただろうに!15歳以下はこっちが受付だ! 」


 受付と公用語で書かれた腕章をした男が、叫んだ。


「ふむ」


 にやり、とバンキムは辺りを見回してからキーエンスへ笑いかける。


「行って来い、キィ。おもしろそうだ」


「受付をすればよいのですか?」


 バンキムは頷き、キーエンスの乗っていた馬も連れて馬小屋の方へと行ってしまった。 仕方なく、キーエンスは腕章の男が手招く方へと行く。


「いくつだ?訓練生ではなさそうだな」


 小柄なキーエンスに、訝しげな顔で、腕章の男が問うてくる。


「12歳です」


 キーエンスの細い腰に吊された二本の細剣を見下ろし、男は小馬鹿にしたように笑う。


「ケガするなよ。無理だと思ったらさっさと『参りました』って言え」


 腕章の男の向こうでは、ヒモで区切られた場所で少年達が剣を交えているのが見える。 どうやら、なにかの試合らしい。


「わかりました」


「最後尾につけ。来た順に対戦するからな」


 頷き、向かった先には15歳までの子ども達が並んでいた。最後尾にいた身体の大きい少年は、キーエンスの姿を見て笑う。


「やったな。チビだ」


「みろよ、細剣だぜ?」


「折っちまえよ」


「カワイソウだろ?訓練生じゃねーんだ、金払って武器用意しなきゃなんねえんだろうし」


 そうだな、と並んでいる少年達が笑い声をあげた。

 見ると確かに、彼らの持つ剣は同じ文様が彫られている。訓練生という者達なのだろう。

 彼らの持つ武器は型がどれも似ている。支給されたものなのだろう。


「知っての通りルールは簡単、無制限だ。『参りました』と相手に言わせたら勝ちだ!一回戦で負けた訓練生は、ゴルダの丘まで三往復させるからな!」


 監督官らしき青年が、大声を張り上げる。


「君は訓練生ではないな。肌の色からして、他の国の者だろう?旅の途中で寄ったのかな?」


 どうやらキーエンス以外は顔見知りらしい。新顔のキーエンスに監督官の青年が声をかけてくれる。


「父が、連れてきてくれました」


 たぶん、ここが目的地であるのだと思うのだが。


 声を聞いた監督官は、怪訝な顔をする。


「君はもしかして---」


 キン!と金属のぶつかり合う甲高い音がこだまする。監督官は仕方なく試合へと顔を戻した。


「参りました!」


 地面へ座り込む少年と、剣を鞘に収める赤毛の少年がいた。赤毛の少年は得意げに笑い、座り込む少年を立つのを手伝ってから、赤いリボンを手にした監督官のもとへ行き、リボンを受け取って腕に巻いた。負けた少年は照れ笑いをしながらヒモの外へ行き、観客に紛れる。


「やっぱり強ぇなぁ」


「将軍の息子だからな」


 ひそひそと少年達が囁く。


「次!」


 立ち上がる少年達を見やり、キーエンスはその防具に目を向ける。


 革の防具か。短剣を打ち込んでも、深く貫いてしまいそうだ。使わないほうがいいかもしれない。


 少年達の試合は短時間で決着がつく。技量も限られ、体力もないからだ。

 流れるように早く、キーエンスの番がきた。


「次!」


「キィ、マントを」


 ヒモで区切られた試合場に入ると、横からバンキムが手を差し出してきた。

 キーエンスは頷きマントを脱いで渡す。


「君!防具がないじゃないか」


 監督官が、ほっそりとした身体が、ただ簡素な服をきているだけなのに驚く。


「いけませんか?」


「ケガをしたらどうするんです!」


 保護者であるとみたのだろう、バンキムへ言う。


「ならば、ケガをしないように、勝て」


 一切その身に太刀を受けることなく、相手に負けを認めさせろ。

 キーエンスは頷き、礼儀正しく頭を下げてから、細剣を抜く。

 防具のない華奢な相手に、対戦する少年は笑う。


「一度血を見たいと思っていたんだ」


 監督官に聞こえぬよう、そう呟く。

 ふわり、とキーエンスの身体を、闘気が包んだ。


「始め!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ