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怜
病院を出て、月明かりが照らす道を二人で並んで歩く。
「怜、今度さ、押し付けたグローブ返してもらっても良い?」
「うん? それは別に、直のだから構わないけど、何で?」
「……俺さ、市村のおじさんの草野球チーム入れてもらおうかと思って」
「!」
「市村の思惑通りで悔しいんだけどさ、やっぱ楽しかったんだよなー、野球。まあ、リハビリとかしながらだから、そんな無茶できないけど」
「良いと思う!」
即答する私に、直は柔らかく笑って手のひらに指先を絡めた。
「リハビリ、手伝ってくれるか?」
「もちろん。ちゃんと投げられるようになるまで付き合うよ」
クチナシの花が香る、夕月夜。
白く咲き誇る花に、月色の花が寄り添うように咲いていた。