鉱山の戦い(検証編)
1.奇策提案の真実
「さて、鉱山の戦いの検証だけど」
アヤが口火を切った。
「牛に乗ってって、私が冗談で提案したつもりだったんだけど
俱利伽羅峠の牛の突撃。
あんなの史実じゃないし、本当にできるわけないこと知っているわよ」
「え、あれが冗談?アヤ、本気で提案していて、俺必死に止めたじゃない」
ハルトが冷静に突っ込んだ。
「本当に夜な夜な、なだめるの大変だったんだからね。」
ミツキが遠い目をして、返事をする。
「俺の歌が癒しになったということで」
「「「癒しになったのは、アリア様の歌」」」
「そうよ、あの下品な歌が癒しになるわけないでしょ!」
「あの歌、今思い出しても、、、ふっふ
おっと、女王があんな歌うたったらまた革命になっちゃいますね」
「と、とにかく、あの話は忘れましょ。」
アヤは風向きが悪くなる前に、話を切り上げた。
2. 夜襲の真実
「『ルークスの指揮のもと、弓兵二十名が闇から敵陣を射抜いた』」
アヤが顔を上げる。
「ダリウス」
「……ん?」
「弓兵、誰の部隊?」
ダリウスは一拍置いて答えた。
「俺の元部下だな」
「ですよね」
アヤ、即断。
「ルークス参加してない。そもそもあなたそのとき
弓は騎士の仕事じゃないって言ってたじゃない」
「いや、でも警戒はしてたぞ」
ルークスが小さく反論する。
「それは否定してないわ」
アヤは即座に切り返す。
「でも、“編成・運用・実行”はダリウスとその部下。
ルークスは戦場全体の一角を見てただけ」
ハルトが頷く。
「夜襲って、準備と経験が九割だよ。
即席で指揮できるもんじゃない」
「……」
ルークス、黙る。
3. 騎兵への罠の真実
「次」
ページをめくる。
「『地形を読み、敵を誘導し、騎兵を罠に嵌めた』」
アヤ、視線を横に投げる。
「これ、誰の案?」
「誰かといわれると」
ハルトは当時の会議を思い出した。
「馬を罠にかけるという発案は確かにルークスだったか。
でも、地形把握は俺。距離計算も俺。
あと、そもそも逃げに逃げて焦らすというのは
アヤとダリウスが方針決めたよね」
ミツキが静かに付け足す。
「私、あの柵、三回描き直してる」
「……ここは確かに、ルークスも発案しているわね」
アヤが本を指で叩く。
「でも英雄記では“統率者の一瞬の判断”になってる」
「そこが“盛り”だな」
コージが笑う。
3. 退路を残した慈悲の真実
ページがめくられるアリアが次の章のタイトルを読み上げる
「『騎士道に従い、逃げ道を残した』」
その瞬間。
「それ、私の策!!」
アヤが即座に声を上げた。
「しかも慈悲じゃない。
損害を減らすための合理的判断」
「兵を追い詰めると死兵になる、ってやつね」
とミツキが思い出したかのようにつぶやく。
「優しさじゃなくて、冷静さだよ」
とハルトが冷静に突っ込む。
ルークスは苦笑した。
「……言い方は、確かに違うな」
5.最後の突撃と身代わり
空気が少し、重くなる。
「ここは……」
アヤが一瞬、言葉を選ぶ。
「完全に捏造」
全員が頷いた。
「ルークス、あなたはダリウスと別の持ち場だった」
「警告はした。でも、間に合わなかった」
ルークスは静かに答える。
「それは責めてないわ」
アヤは首を振る。
「ただ——
“すべてを見て、すべてを救おうとした英雄”ではなかった」
6. 結論
ハルトが、指を折る。
「発案
設計
準備
全部、分業」
「でもさ」
コージが続ける。
「実際に前に立って、剣を振って、矢が飛ぶ中にいたのは?」
全員の視線が、ルークスに集まる。
「……俺とダリウスだな」
「うん」
アヤが頷く。
「だから結論はこれ」
本を閉じる。
「盛りすぎ。でも、芯は外してない」
「さー、結論が出たところでだな。そろそろ…」
「まだ、半分も検証終わってないわよ」
「今日はもう、公式執務は終わってます。
せっかくだから、もうちょっとこの話の続きが見たいです」
「それは、王命ですか?」
「いいえ、一女性のわがままです」
「そのほうが怖いのは気のせいでしょうか、陛下」




