ルークスの生い立ち
1.ルークスの生い立ち
我が名はルークス・ハーヴェイ。
王国に剣を捧げし家系に生まれ、
幼き日より己を鍛えることのみを是として生きてきた。
家は決して豊かではなく、
されど志は高く——
私は幼少の頃より、馬・剣・槍・弓の武芸を修め、
さらに絵画、歌、学問に至るまで、
騎士として、人として、あらゆる研鑽を積んだ。
その成果は騎士団試験にて遺憾なく発揮され、
私は優秀な成績をもって、王妃護衛隊へと配属される。
その折、遠くから見た一人の赤子。
柔らかな頬、しかし澄んだ瞳の奥に宿る、確かな知性。
私は悟った。
この子こそが、いつか王国の未来を担う存在であると。
この赤子の下で剣を振るい、
やがて大将軍となり、忠誠を尽くす。
それこそが、我が人生——
我が生の、すべてであると。
2.みんなの突っ込み
「……はい、ちょっと止めて」
アヤが本を閉じた。
「最初からツッコミどころ多すぎるんだけど」
「そもそも家は豊かではなくってさ」
ハルトが指を挙げる。
「実家の屋敷に訓練場、ありましたよね?
俺、初めて見たとき思ったもん。
あ、これ中堅貴族の設備だって」
アリアも頷いた。
「あなたの家系、何回も騎士隊長を輩出いたと記憶しております。
末端というほどではないと思います」
「絵画と歌に秀で、もだいぶ怪しい」
ミツキが腕を組む。
「絵なんて描いてるとこ、一度も見たことないんだけど」
「俺もルークスは国歌以外歌っているところ見たことない」
コージが即追撃する。
「楽器も触ってないよな?」
「王妃護衛隊配属が優秀な成績も言い方があるわね」
アヤがため息をつく。
「一位は近衛。王妃護衛隊は二番手か三番手でしょう?」
「……」
ルークスは黙り込んだ。
「で、極めつけがこれ」
ハルトがページを叩く。
「赤子を見て、その配下で大将軍になるって、
人生設計が長期すぎない?」
「いくらなんでも赤子の時に知性といわれるちょっと」
アリアが苦笑する。
「つまりだな」
ダリウスが肩をすくめる。
「この本だと、
俺や近衛を抜いて大将軍になる気満々だった男
って読めるぞ?」
「ち、違う……!」
ルークスが珍しく声を荒らげた。
「俺は、ただ忠誠を——」
「はいはい、焦ってる」
コージが楽しそうに言った。
「焦るとだいたい図星だからね」
「……」
アリアは本を閉じ、にっこり笑った。
「なるほど。
英雄譚としては、とても読みやすいですね」
「でも」
その笑顔のまま、続ける。
「史実としては——
かなり盛られているようですね」
ルークスは天井を仰いだ。
「……まだ、序章だよな」
その呟きに、
全員が無言で頷いた。




