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エピローグ

1,英雄記はなんだったのか


「つまりさ」

ハルトが指を折る。

「発案や計画は俺たち。でも、実際に命懸けで動いたのはルークス」


ルークスは少し安どしてうなづいた

「……そうなるな」


「じゃあ、英雄記として『ルークスが英雄』は……」


アリアがな止めた

「……間違ってはいないですね」


コージもまとめにはいる

「プロデューサー的に言うとさ」


「コージが久しぶりにまじめね」


「なんだよ、久しぶりって。

 それはともかく。

 『全部やった』は嘘。でも『英雄はルークス』は本当」


「……」


「盛りすぎだけど、芯は外してない。だから売れるんだよ、これ」


「……俺は、お前たちの策がなければ動けなかった」


「知ってる」


「だが、本にはそう書かれていない」


「知ってる」


「……すまん」


「謝んなくていいわよ。

 書いたのエリアスで、出版認めたのロッシュだし」


「……まあ、いい」

ダリウスがそうつぶやいた。


「いいの?ダリウスの活躍、全部ルークスに奪われているのに」

 それに気づいたアヤが少しだけダリウスに気遣う。


「俺は生きている。家族はいないが、新しい仲間がいる」


「……」


「ルークスは腕を失った。英雄記の主役くらい、くれてやる」

ページを閉じる。

「それに——」

「それに?」

「俺の功績を知っているのは、お前たちと——」

少しだけ間を置いて、

「——亡き家族だけで、十分だ」

静かな声だった。 悲しみではなく、穏やかな諦めがあった。


コージが動く:

「……なあ、ダリウス」

「ん?」

「英雄歌、作ろうか」

「は?」

「お前の歌。俺が作る」


ダリウスが目を丸くする。

「本には残らなくても、歌なら残るだろ」

「……」

「民が歌えば、百年後も残る。ルークスの英雄記より長く残るかもな」

 コージはニヤッと笑った。

「アイドルプロデューサー舐めんな。俺が作った歌は売れるんだよ」

「……いらん」

「えー」

「俺は、歌われるような男じゃない」

「でもそれじゃあ、ダリウスが——」

「だが」

ダリウスは少しだけ笑った。

「……悪くない気遣いだ。恩に着る」


2.ハルトがすねる:

「…………」

「どうしたの、ハルト」

「いや、別に」

「顔に出てるわよ」

「……俺、全然英雄っぽくないし、みんなみたいに心に残らない」

「え?」

「コージは歌詞書いた。ミツキは絵を描いた。アヤは歴史書を書いた。俺は?」

「……」

「俺の名前残らなくない?」


みんなが慌ててフォローする

「いや、あんたトロッコ革命の——」

「それは鉱山の話だろ!今の話だよ!」

「インフラは地味だから……」

「地味って言うな!」

「でも歌にしにくいんじゃない、軸受けとか?」

「軸受けの歌があってもいいだろ!!」


コージが追い打ちをかける

「じゃあ作るか?『軸受けの歌』」

「……聞きたいか?そんな歌」

「♪ 摩擦を減らして〜 車輪が回る〜」

「やめろ」

「♪ 地味だけど〜 大事な〜 軸受け〜」

「やめろって!」


ミツキも必死にフォローする

「ハルト、大丈夫よ」

「何が」

「あなたの功績は、私が図面に残してるから」

「……図面」

「百年後の技術者が見たら、わかるわ。『この人が革命を支えた』って」

「…………」

「歌より長く残るかもね」

「……まあ、それならいいか」

「単純ね」

「うるさい」

でも少しだけ、機嫌が直っていた。


そこでコージがふと思い出したように三人に告げる

「そういえば、リバトーンライブの後、町の人に聞いぞ」

「何を?」

「三人の名前、愛称になってるらしいぜ」

「え、そうなの?」

「アヤ水道、ミツキ橋、ハルト下水だって」

「水道!インフラの要じゃない!歴史に名前が残るわ!」

「ミツキ橋!私のデザインが認められたのね!!」


「下水…………

 いや、わかるよ。下水は大事だよ」

「そうよね」

「インフラの基盤だよ。俺がやったことだよ」

「そうそう」

「でもさ」

「……」

「水道と橋、下水て並べられると、こう……

格差、感じない?

……まあ、いいけどさ」


ハルトは窓の外を見た。

「百年後の技術者が見たら、わかってくれるよね」

「……そ、そうよ、歴史がちゃんとあなたの仕事を証明してくれるのよ」

「図面に残してくれたんだろ?俺の仕事」

「ええ」

「なんかそれもミツキの功績になりそうだけど。

 なら、いいよ。下水で」


 少し間を置いて、

「……いや、やっぱりちょっと悔しいな」


「「「「知ってた」」」」


3.最後のオチ

アヤが締めくくった。

「結論。発案はほとんど私たち、実行はルークス、

その発案を全部ルークスにした物語を執筆したのが商業ギルド」


「……一番得してるの誰だよ」


「「「「「ロッシュ」」」」」


ようやくみんなの気持ちが一致したところで、アリアがふと思い出した。


「そういえば、ルークスはなぜここへ参ったのですか?」


「グランフィールへの散歩の打ち合わせにと思いまして」


「ライブ!散歩じゃない」


「ふふ。そうですね。散歩についてきなさいとは私の王命でしたね。

 父にも久しぶりに会えますものね。」


「歩くの大変だったら、牛に括り付けてあげるけど」


「勘弁してくれ。この手なんだから、さすがに馬車でいいだろ」


「はい、そうですね。それじゃあ、具体的な話をしましょうか

 コージ、ライブの企画はお任せしますよ」


「ライブ!次こそは『われらの推しはアリア様』をみんなで!」


「私は歌わないからね!!!!」


「ついでに、ハルト下水がうまくいっているかリバトーンも見ておくか」


「今度は山の風景をスケッチしたいなあ。ゆっくりと」


歌姫革命はまだまだ終わらない。


4.後日談

「そうは言うもののなあ、ミツキ」

コージが珍しくまじめに語りかける。

「ん?」

「ルークスの英雄記、派手なシーンばっかりだろ」

「そうね」

「でもダリウスって、ずっと『守ってる』んだよな」

「……確かに」

「剣じゃなくて盾。攻撃じゃなくて防御。そういう英雄って、本には残りにくい」

「だから歌にするの?」

「ああ。派手じゃなくていい。『守る』ってことの価値を、歌にしたい」


コージの歌詞

守れなかった日を背負い それでも盾を構え続ける

誰も覚えていなくても 家族だけが 空から見ている


「完成したぞ」

コージが歌詞を広げた。


「私も描いたわ」

ミツキが絵を添える。

盾を構えたダリウスの後ろ姿。

その向こうに、アリアの横顔。

『名も残らぬ騎士の歌』——


「……いい出来じゃない」

アヤが頷く。

「リバトーン商業ギルドに持ち込めば、すぐ売れるわね

ロッシュとエリアスに儲けさせるのは癪だけど」


「でも、歌は歌われてこそ意味があるから」

「そうだな、インフラは使われてこそだな」

「そうよ、図は理解されてこそね」


アヤが小さく笑った。

「みんなが、使って、理解して、歌って

 そうやって歴史を紡いでいく——

 それが、歌姫革命譚よ」

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