表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/13

アイアングリップ補給路遮断戦

1.騎兵の戦い方改革

 敵英雄を退けたとはいえ、戦局は依然として厳しかった。

 敵の兵数は、なおこちらの倍。

 正面決戦を選べば、いずれ押し潰される。


 勝つためには、戦ってはならない。

 まず断つべきは――補給である。

 敵に占領されてはいるが、補給路はもともと王国領だ。

 山道、谷、獣道。

 それらは、我々が鉱山時代に叩き込まれた地形だった。

 敵にとっては未知。

 我々にとっては、散歩道に等しい。


 そこで私は、騎兵の運用を再定義することを提案した。

 ――弓騎兵である。

 補給部隊を叩くのに、重装は不要。

 むしろ、敵後方から迅速に離脱するためには軽装が望ましい。

 馬と弓を扱える者を選抜し、

 防具を最小限に抑え、機動力を最大限に引き出す。


 騎士たちは抵抗した。

 弓は騎士の武ではない。

 正面から戦わぬ戦いに、誇りを見いだせぬ者も多かった。


 だが私は告げた。

 騎士の誇りとは、剣を振るうことではない。

 国を守ることだ、と。


 説得の末、彼らは従った。

 そして結果は、明白だった。

 補給部隊は歩みがどうしても遅い。

 それを山の上から弓で射て、ダメージを与えて即撤退。

 火矢が一本でも当たれば、敵の物資は燃えて使い物にならなくなる。

 敵補給部隊は次々と壊滅。

 敵は糧を失い、進軍速度は著しく低下した。


 さらに、身軽な騎兵は斥候としても機能した。

 敵を発見次第、信号弾で位置を共有。

 それによって、敵の機動は常に先手で封じられた。


 結果として、こちらの補給路はほぼ無傷で保たれた。

 正面から斬り結ぶだけが、騎士の戦いではない。

 国を存続させることこそが、本分である。

 そのことを、私はこの戦いで改めて悟った。


2.弓騎兵の真実

 アヤが、静かに記録を閉じた。

「補給路遮断に必要な獣道の存在は、

 王子の無謀な侵攻に付き合わされた経験から

 ダリウスとその部下たちが“裏道を知っていた”のが発端ね」


 ダリウスが頷く。

「あれは地獄への片道切符かと思った。

 誇れる話ではないが、役には立った」


「山道の探索方法を体系化したのは、ハルト

 それを地図に落としたのが私」

ミツキが補足する。


 ハルトは淡々と言った。

「高低差と水脈を見れば、

 馬が通れる道は自然と絞られる」


「弓騎兵の発想は?」

 誰かが尋ねる。


 アヤが答えた。

「遊牧民の事例よ。

 正面決戦を避けて、補給と情報を断つ戦い」


 ルークスは少し視線を逸らした。

「……最初は反対した。

 弓は騎士の武ではないと思っていた」


「実際、文句言ってたよね、みんな」

 コージが言う。

「だけどさ、

敵の侵攻が遅れている間に、

 騎兵たちの弓の技術は目に見えて向上していったじゃん

あれだけすぐ上達するって、

やっぱり俺たちと鍛え方が違うんだね」


 ミツキが頷く。

「いつの間にか、

 騎士たちを説得して回っていたのはルークスだったわ」


「結果として、大戦果だった」

 ダリウスが静かに締めくくる。

「斥候も、騎士の役割だという意識が定着した。

 攻撃より、情報を持ち帰ることを優先する判断もな」


 少し間が空いた。

 アヤが結論を述べる。

「最初の提案が英雄記通りだったかといえば――嘘。

 でも、流れをまとめ、実行に移し、

 部隊の意識を変えた立役者が誰かといえば」


 全員が、ルークスを見る。

「……ルークスですね」

 アリアがルークスの功績を肯定した。

「いよいよ、最後の決戦ですか。

 ここがどう書かれているのか、

 しっかりみんなで検証しましょうね」

鉱山でくすぶっていた中年の逆転劇、最後の幕がいよいよ上がる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ