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アイアングリップ対英雄戦

1.敵英雄の脅威

 一時的に、帝国の脅威は影を潜めていた。

 革命を経て国力は回復し、人心も安定しつつあった。

 だが今にして思えば、それは嵐の前の静けさに過ぎなかった。


 前線砦が一瞬で崩壊した――

 その報は、王都に混乱をもたらした。

 敵英雄の出現。

 それを予見できた者は、誰一人いなかった。


 だが、王国の底力はそこからだった。

 私は異世界人四人を従え、ただちにアイアングリップへ急行した。

 到着と同時に、防備の再構築に着手する。


 堀は深く掘り直し、

 敵の目を欺くための偽の指令所を設け、

 司令部は地形と構造を利用して巧妙に隠蔽した。

 さらに私は、士気維持のために歌のステージを設けることを提案した。

 戦とは剣と盾だけで行うものではない。

 心を折られれば、いかなる軍も瓦解する。


 これらを実際に形にしたのは、四人の異世界人たちだった。

 かつて鉱山で戸惑っていた彼らが、

 ここまで成長した姿を見られたことは、感慨深い。


 幸いにも、敵の進軍は想定より遅れた。

 その猶予によって、準備は万全に整えられた。


 そして――

 ついに、敵英雄が姿を現した。

 観測魔法と長距離魔法は、想定より脅威ではなかった。

 対策が奏功していたのだろう。


 だが、敵の歌の魔法は違った。

 精神を侵し、司令部の心を徐々に蝕んでいく。

 崩れかけた空気の中、私は踏みとどまった。


 まず、コージに声をかけた。

「お前が、この軍の心の柱だ。

 お前が折れてどうする」


 そして、軍楽隊に叫んだ。

「歌で負けるとは、歌姫革命の名折れだ。

 それで、お前たちはいいのか」


 その言葉に、コージと軍楽隊は奮起した。

 まずはアリア様を称える歌。

 それによって、兵たちは正気を取り戻した。


 だが、それだけでは足りない。

 我々が信じているのは、個人の偶像ではない。

 王と民が、ともに歩むという理念だ。


 私は、コージに最後の指示を出した。

「皆で歩もう。

 国歌だ。

 国歌こそが、あの精神汚染を打ち砕く」


 響き渡る国歌。

 軍楽隊だけでなく、兵たち、そして要塞の民までが声を重ねた。

 その瞬間、敵の魔法は完全に無力化された。

 敵英雄は我々の士気に恐れをなし、撤退した。

 こうして、英雄同士の戦いは決したのである。


2,英雄戦の真実

 ……沈黙が落ちた。

 最初に口を開いたのは、ミツキだった。

「二重堀をやろうって言ったのは、確かにルークスだけど

 設計したのはハルト、作業の図示は私よね」


 アヤが静かに続ける。

「偽の指令所は、私の発案よ」


「“見えない工夫”って言ってるけどさ」

 ハルトが肩をすくめる。

「鉄道の高架橋の設計応用だよ」


「歌のステージも、俺の提案だし」

 コージが淡々と言った。


「そもそも全軍指揮は私だったはずだが、まあ、それはいい」

 ダリウスが腕を組む。

「英雄戦そのものは短かった。

 だが、“簡単に勝った”と言われると、さすがにな」


 アヤが頷く。

「観測魔法がドイツ語だったせいで、

 最初、誰も読めなかったからてまどったのよ

 みんなちゃんと語学も勉強しなさいよ」


「そこから“ズームレンズみたいなもの”だって気づいて

 鏡を集めるように指示したの、俺だし」

 ハルトが続ける。


「要塞中走り回って、鏡集めたんだけど」

 コージがぼそっと言う。


「配置図は、私が全部描いたわ」

 ミツキが言って、ふと首をかしげる。

「……で、ルークスは?」


「……」

 沈黙。

「だったよね」


 全員が納得したように頷いた。


「長距離魔法もね」

 ミツキが続ける。

「精霊を汚してたの、気づかないうちに」


「環境破壊は、できるだけ抑えたいよな」

 ハルトが応じる。


 コージが話題を変えた。

「それよりさ。

 敵の神聖魔法のあと、ルークス、落ち込んでたよね

 ダリウスの地位を奪おうとしてすまない、とか言ってたな」


 ダリウスが思い出す。

「部下を守れなかった、出来損ないだ、ともいわれたような」


「いや、それは……」

 ルークスが言い淀む。


 アリアが穏やかに割って入った。

「まあ、まあ、ルークスをいじめるのもその程度にしましょう

 アヤさんも、下剋上を狙うとか言っていたらしいですし」


「え、いや、その……」


 アヤが慌てる。

「そう、妄想よ。あれは妄想、怖い魔法だったわね」


「お、アヤ、珍しく気が合うな。怖い魔法だった。

 まったく、簡単に勝ったなんて気軽にエリアスが書くから」


「……そういうことにしておこう」

 ハルトがまとめた。


 少し空気が緩む。


「でもね」

 アヤが眉をひそめる。

「最初の選曲、どう考えてもアリア様推し全開だったわよね

 この書き方だと普通の曲に見えるけど、

あれ女性歌手のアイドルソングのオマージュでしょ。

軍楽隊が歌う曲じゃないわよ」


「えー、ギャップ萌えじゃない。

 それに女性歌手の歌っていうんだったら、アヤとミツキこそ、

 フリフリ衣装で歌ってほしいのに」

 コージが言う。


「「嫌って言ってるでしょ!!」」

 アヤとミツキが同時に叫んだ。


「……国歌の指揮は、見事だった」

 ルークスがぽつりと言う。


 アリアが微笑む。

「要塞全体が震えた、と報告を受けています。

 私も、その場で歌いたかったです」


「あんな戦場じゃなくて、ちゃんとした会場で

 愛と平和の歌を歌ってください。

 みんな、陛下が来れば喜んで歌ってくれますよ」


「そ、そうです、陛下、いつもで散歩は付き合いますので。」


「皆さんと掴んだ平和ですものね。

 その中で民が喜んでくれ方が確かに良いですね。」


「ルークス、いい話で終わろうとしてない?

 ここからがいよいよ佳境でしょ」


「もう、よくないか?」


「「「「何言っているの、ここからが本当の英雄記でしょ」」」」


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