第13話 鳴り止んだ雷
白刃が閃き、雷牙が受ける。
衝撃が凄い。
だがもう踏ん張れず、蓮の足が崩れる。
「っ……!」
肋骨が軋む。
いや、もう折れている。
呼吸のたびに鋭い痛みが走るが、それでも立っていた。
彩乃を送り出すまで。
それが役目だった。
陽菜が静かに近づく。
白夜はまだ刀の姿で、淡く光を放っている。
「なんでそんなに、人のために戦えるの?」
白刃が蓮の喉元へ向けられる。
「自分が得する事、ある?」
蓮は血を吐きながら笑った。
「何言ってんだよ」
息が荒く、視界が揺れる。
「ほんと変わっちまったな、陽菜ちゃん」
陽菜の瞳がわずかに揺れた気がした。
「前はさ……困ってる人ほっとけない、って怪我までして……怜央に怒られたくせによ」
蓮はその場に仰向けに倒れた。
もう、立てない。
紋の力を使いすぎ、身体は完全に限界だった。
陽菜は無表情のまま見下ろす。
「……私は何も覚えていないわ。白夜に会ってから、その前の事なんて一つも。だから私は、白夜のそばに居るの。……白夜の邪魔をしないで」
蹴りが蓮の腹に入り、身体が宙に浮いて、木へ叩きつけられる。
鈍い音がし、背中に激痛が走る。
「ぐっ……!」
呼吸が止まり、蓮の視界が歪んだ。
「ごめん、怜央……」
血が口から零れる。
「彩乃先輩……」
いつものように笑おうとするが、うまくいかない。
「……そっちには、行けそうにねぇや……」
白刃が光を失い、白夜が人の姿へ戻る。
「よく頑張ったね」
白夜が手をかざすと、地面から黒い蔦が伸び、生き物のように蠢き、蓮の身体へ絡みつく。
腕、足、胴。
そして木に縛り付けられた。
蓮はすでに意識が朦朧としている。
雷牙が手から滑り落ち、白夜がそれを拾い上げる。
「これが君の力か。この子も、もう終わりみたいだね」
白夜が雷牙を軽く振るが、雷はもう走らない。
蓮の身体はもう、動かない。
かすかな呼吸が聞こえる。
白夜は雷牙を逆手に持ち替え、刃先を蓮の急所へ向ける。
「君達は、ここでゲームオーバー。残念だったね」
陽菜が無言で見ている。
白夜は微笑むと、刃がゆっくりと近づく。
蓮の鼓動が弱まり、意識が闇に沈む直前――
終わりを告げるように、遠くで雷鳴が鳴り響いた。




