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第10話 深紅の誓い

黒牙との戦いから三日経ち、神社は静まり返っていた。


境内の霧は晴れたが、鳥居には小さな亀裂が残っている。


そして彩乃は、まだ目を覚ましていない。


その知らせを受けた怜央は、胸の奥に冷たいものが落ちるのを感じた。


あの朝、自分は何も知らず呑気に寝ていた。


黒牙ーー。


その名を思い出すだけで、拳に力が入る。


絶対に……許さない。


怜央は石段を駆け上がり、扉の前で深呼吸をする。


玄関で祖母に頭を下げ、怜央は部屋へ通される。


布団の上には包帯を巻かれ、静かに眠る彩乃が居た。


顔色はまだ白い。


呼吸は安定しているが、目は閉じたまま。


怜央はそっと隣に座り、震える手で彩乃の手を握る。


温かくて、生きているのが分かる。


「彩乃……さん」


怜央は思わず声がかすれてしまう。


守れなかった。


側にいられなかった。


黒牙への怒りが、心の底から湧き上がる。


その時、指先がかすかに動いた気がした。


怜央が顔を上げると、ゆっくりと、彩乃のまぶたが開く。


「……神崎……」


弱々しい声だが、それでも確かに、彼の名を呼んだ。


「来てくれたのか……」


小さく、嬉しそうに微笑む。


怜央はその笑顔に、胸が締めつけられる。


この人を、守らなければ。


守られる側ではなく、並んで立てる存在になる。


怜央はおもむろに、鞄を開ける。


取り出したのは、小さく可愛くラッピングされた袋。


「……いつか、渡そうと思ってました。何だか、今な気がして」


怜央は少しだけ視線を逸らす。


「受け取ってくれますか?」


彩乃は布団に横になったまま、手を伸ばし、自分に似合わないような花柄の可愛い袋を受け取る。


「……今、開けても?」


途端に、怜央の顔が赤くなった。


「え、えっと……その……中の物は……そのままの意味で捉えてくれていいですから!」


怜央は早口で喋ったと思うと、勢いよく立ち上がる。


「じゃ、じゃあ、また来ます!」


そしてほとんど逃げるように部屋を出ていった。


彩乃は小さく笑い、ゆっくりと身体を起こす。


「まったく……」


まだ痛むが、中が気になって袋を開ける。


中には、小さな箱があり、そっと蓋を開けた。


「これは……」


シルバーのブレスレット。


差し色の深紅の薔薇のチャームが、静かに輝いている。


赤い薔薇の花言葉は――


“貴女を愛しています”。


彩乃は、そんな深紅の薔薇のチャームを指先でそっと触れる。


胸の奥が、じんわりと温かくなり、ブレスレットを大切に握りしめる。


「……怜央……私もだ……」


静かに、名を呼ぶ。


その瞳は、どこか柔らかく感じた。











深紅の薔薇が、2人の愛を確かめるかのように輝いた日の夜、人気のない路地裏で黒牙は、笑っていた。


「はは……ははは……」


鳥居の守護者ーー彩乃と戦ってから、黒牙の様子がおかしかった。


あれから十五人。


欲望に塗れた人間を選び、契約を持ちかけが誰一人、適合しなかった。


力に耐えきれず、壊れた。


「……待てよ」


黒牙の口角が吊り上がり、


「守護者を取り込めばいい話じゃねぇか」


愉快そうに笑う。


その時、


「……あまり現代を荒らさないで」


静かな声が黒牙に届き、空気が凍るような気配を感じ、振り向く。


そこには、陽菜が立っている。


「白夜の楽園を荒らさないで」


その圧に、黒牙は思わず息を呑む。


「……ちっ」


黒牙は逃げるように闇に溶けると、陽菜の背後に、白夜が現れた。


「もう用済みだね。黒牙は、十分楽しませてくれた」


陽菜は静かに頷くと、白夜は夜空を見上げる。


「さあ……次は僕の番だ。……待っててね、神崎怜央」


月が雲に隠れ、月までも2人を怖がっているようだった。

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