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プロローグ
夢を見ていた。
誕生日おめでとう、と笑う声。
そしてーーー
広がる、何か。
指先が濡れている。
温度が、失われていく。
やめろ。
呼吸ができない。
「あああああ!」
――目が覚めた。
カーテンから陽の光が漏れている。
朝だ。
心臓がまだ、昨日の続きを感じて暴れている。
夢じゃないーー。
「随分、うなされていたな」
ドアの方から、冷たい声がする。
知らないはずーーいや、知りたくなった筈の少女が立っていた。
長い黒髪に、どこか冷えきった紅がさした瞳。
見た事の無い羽織を身にまとっている。
「昨日のこと、覚えてるか?」
忘れたいと思っても、忘れられるわけがない。
「ーーこれが、夢だと良かったんだけどな」
世界は何も知らない顔をしている。
でも、俺は知っている。
残酷な世界の始まりを。




