6. 違和感
入学式も終わり、1 年生として日々勉強に励んでいます。アマリリスです!
本日はヒロインちゃん探しですっ!
どこでしょう?もしかしたらお話できるでしょうかっ?
わくわくわくわく!わくわく!わく、わく?
あれ?あれれ?あれれれ?
ひ、ヒロインちゃん、いません。
原作でいたはずの同じクラスにはいませんし、他のクラスにも、他学年にもいません...?
...ヒロインちゃん、どこですか?!
はあああ~いないです。ヒロインちゃん。
会うの楽しみにしたんですが。
...というより、ヒロインちゃんがいないことでなのか、攻略対象者たちの性格も何だか違う気がします。
キラキラ王子は、無口系
熱血漢はなりを潜め、爽やかイケメンに
知的無口くんは少し笑顔で、
純粋可愛い子は腹黒可愛いに
チャラいやつは硬派になっています。
ん?どういうことでしょう?
何も知らないアマリリスはただひたすらに首を傾げる。
ここは現実の世界。ゲームではなくまさしく現実。
それを考慮すれば、性格の悪い悪役令嬢が消えるだけで周囲に多大なる影響があることも、少し想像できるかもしれない。
そう、それはたとえば
悪役令嬢が皇太子と婚約したことで、原作では強制的に矯正され無口が治った王太子が無口のままで
王太子も頑張ったんだからと、父に教えを乞い熱血になった騎士は爽やかに育っただけ
悪役令嬢の相手でストレスが溜まった主人に、これ以上迷惑をかけないためにと感情を殺した知的従者は、無口なままの主人の感情をだそうと笑顔が増え
完璧な主人への良い噂しか聞いていなかった可愛い奴は無口な主人に対する世間の厳しさを知って腹黒に
原作では悪役令嬢の王太子への態度を見て女性関係を諦めたチャラいやつは何も見なかったため硬派なままに
なっただけ
たったそれだけ。悪役令嬢が悪役令嬢でなくなり、婚約をしたのが皇太子であったことで世界の運命が少し狂っただけ。
ついでにヒロインの方も、男爵家に拾われる前に村の騎士に恋をして、学園に来る運命がなくなっただけ。
その結果絶対に断罪はされないし、皇太子から逃げられないどころか、婚約破棄しようとしていたことがバレて愛が重くなるのはそれもまた運命。
すべては運命の悪戯にすぎないのだ。
そんなことは知らない“元”悪役令嬢、もといこの物語の"ヒロイン"は今日も婚約者の愛を重くしながら運命を変えていく。