フランチェスコ・〈フランク・ロバーツ〉――
フランチェスコ・〈フランク・ロバーツ〉・ロンバルドーは〈ギャング〉たちの会合が終わると、車に美人を乗せて帰っていった。ステラストラーダというふたり乗りの高速自動車でダイヤモンドで造ったように高価だった。ただ、ロンバルドーは体重が百二十キロを超えていて、乗ると車が運転席側に傾いた。女が助手席に座っても、鉛筆みたいに細い女だったので、車は傾いたままだった。
「いまにひっくり返っちまうぜ。あの車」〈ギャング〉のひとりが言った。
「何をどれだけ食ったら、あんなに太れるんだ?」
「あの娼婦、新しい女だな。ぺしゃんこになっちまうんじゃねえか」
好色な肥満漢は既に五人の娼婦を死なせていて、そのたびに警察に握らせる金が馬鹿にならないことを話し合いながら、〈ギャング〉たちはうまい烏賊を食べさせる店があるということでそこに向かった。
ロンバルドーはそれから行方不明になった。消息を絶ってから五日後、〈砂イワシ雲〉村の羊飼いの少年が羊を牧草地へ移動させていると、道の途中にある、谷の行き止まりで、ひどいにおいをさせる自動車を見つけた。田舎では見かけない、高級車で、ひどいにおいはそのトランクからにおっていた。
羊飼いは村の憲兵にこのことを連絡し、憲兵准尉がふたりの憲兵ラモルカとアドリアノを連れて、問題の谷に向かった。車を止めると、ガソリンのにおいを超える甘ったるい腐臭がした。トランクから黒く濁った泥水のようなものがポタポタ垂れていた。
「お前ら、吐くんじゃねえぞ」
准尉はふたりの憲兵に言ったが、ふたりとも顔が蒼白だった。
准尉がトランクの鍵にバールを突っ込んで、ねじると、蓋を開けた。
ロンバルドーの死体があった。一万レラの高級スーツに身を包んだ〈ギャング〉の大物は口を大きく開けて、目が飛び出しそうになっている。死因は首に食い込んだピアノ線で線の両端には取っ手に使うらしい金属の棒が結んであった。
この手の絞殺具は〈叔父〉がよく使う。〈叔父〉が〈ギャング〉を殺したかもしれない。准尉は自分が見つけた死体が予想以上の災難を島じゅうに降らせることに気づいて、震えだした。
それから、〈ギャング〉たちは一緒に乗っていた娼婦を探したが、女はとうとう見つからなかった。