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新学期

ニ学期が始まった。

葉子と彼氏はまた喧嘩したらしい。 休み時間に愚痴りに来て手紙を置いて行った。


 親愛なる祐美さま

外はこんなに暑いし、まーくんとは仲直り出来てないし 数学なんてやってる場合じゃないのだよ!

まーくんも私のこと考えてるかな?

早く仲直りしたいって思ってくれてるかな?

私は今すぐにでもまーくんの所に飛んで行って

やっぱり別れない!

って言いたいよー!

でも私から謝るのは絶対やだ!!

でも会いたい♡

でもでも、絶対私からはダメだよね!

あー、どーしよー!!!

            

          悩めるはこより


ノートを破った手紙には丸みを帯びた可愛い文字で、下に彼氏の似顔絵が書いてある。

結構似てて笑える。

ノートをとるふりをして書いていたのを想像すると何ともいじらしい。

葉子は学校でも休み時間や放課後に私と過ごす事が増えた。元々共通の友達もいたから、周りから見ても自然に見えていたと思う。

後で橋野に彼の様子を探り入れてみようと思った。橋野と葉子の彼は違う学校だが、放課後は毎日のように一緒にいるはずだ。


橋野と示し合わせて葉子たちを会わせる事にした。

放課後、最初に4人で会ったファミレス。葉子を連れて行くと二人はもう来ていた。

「絶対怪しいと思った」

葉子は不満そうに言ったが顔は嬉しそうだ。

「俺だって変だと思ったんだよ」

「二人ともそう思ったのに来たんだろ?素直に仲直りすれば?」

二人とも最初は気まずそうだったけど、あっという間に仲直りした。

「結局なんで喧嘩したの?」

「それがさ、まーくん付き合った日を忘れてたんだよ!もうすぐ2ヶ月になるから記念デートにしようって言ったら、いつ?って聞くの!」

葉子は怒り再燃の様子。

「そんなの男は覚えてないよ」

葉子の彼氏は同意を求めるように橋野をチラッと見た。

「俺達も8日で2ヶ月だな。どこか行く?」

橋野は全然気付かぬ様子で、いつものニヤケ顔。

「ほら!光ちゃんはちゃんと覚えてた!まーくんの愛が足りないんだよ!」

「どうせ仲直りするんだから、もう喧嘩はしないで」

葉子を宥めすかして

「橋野、巻き込まれる前に先帰ろう」

二人で店を出た。


「よく覚えてたね、付き合った日」

自分は知っていたかのように平然を装った。

「ライヴの5日後に付き合ったから」

ちょうど家の近くに着いた。

百日紅の濃いピンクと青い空のコントラストが目に痛い。

「覚えてたご褒美くれる?」

言い終わるのと同時にキスした。 最近は別れ際にキスするのが当たり前になっていた。キスに慣れると共に後ろめたさも薄れていった。

「ご褒美じゃなくてもするくせに」

「じゃ、もう一回」

2度目のキスは目を閉じたふりをして、橋野越しの百日紅と空を見ていた。

「行きたい所決めといて」ニヤケ顔だ。

「うん、わかった」

家に入ろうと振り返った瞬間、母と目が合った。

「祐美?」

母が近付いてくる。橋野を見ながら

「こんにちは、どなた?」

「はじめまして、橋野です」

流石に真顔。

「降りる駅が一緒だったんで送って来ました」

「あら、そう?ありがとう」

にっこり笑うと

「祐美、中に入ろう」

と家に入って行った。

私も橋野に手を振ると母に続いた。

母に見られたかもしれない。一気に後ろめたさが蘇ってくる。好きな人とのキスなら親に見られてもこんなに後ろめたくないんだろうか?

部屋に入って着替え終わった頃、母が部屋に入ってきた。

「橋野と付き合ってるんだ」

先手を打つ事にした。

「もうすぐ2ヶ月」

「あの人は止めておきなさい」

やっぱり見られてたんだ。 だが続く言葉に耳を疑った。

「顔が良いから」

母は大真面目だ。

「顔が良い人は浮気するから止めておきなさい」

突拍子もない理屈に納得が行くはずもない。

「私は顔はタイプじゃない」

「ハッキリしてて格好良かったわよ!」

そうだった!私と違って母は橋野のような顔が好きだった。

子供の頃、一緒にテレビを観ていた時に出演しているアイドルの中で誰が格好いいかで揉めた事がある。

私は一番すっきりした顔のスポーツが得意そうなタイプを選んだ。対して母が選んだのはマイルドな濃い顔のインテリ系の人だった。大きく分類したら橋野は母のタイプに属するだろう。

とりあえず何も見られて無かったのはホッとした。

「そんな理由では別れないから」

母に宣言して部屋から追い出した。

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