表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/29

祭りの前

夏祭りへ葉子達と一緒に4人で行くことになった。 この辺りでは一番大きな祭りで、人生初の彼氏と行くお祭りはとても楽しみだった。

葉子も嬉しそうで、二人で祭りに着ていく服を買いに行くことになった。夏物はバーゲンも終わりに近付いていて一角には秋物も入荷していた。

「まだこんなに暑いのに秋物なんか買う人いるのかな?」

秋物には目もくれず、セール品のラックを1枚ずつ見ていく葉子。

「これ、祐美に似合いそう!」

ワンピースのハンガーを私に充てがう。葉子はセンスがいい。私が選ばないような物も葉子が選んでくれて身につけると、とても素敵に見える。

「祐美はワンピースとか似合っていいよね。私は似合わないからなー。これ、どうかな?」

ブルー系のトップスをあてながら聞いてくる。スッキリしたデザインが手足が細長い彼女にとてもよく似合っている。

「すごくいいよ!私にはこういう色が似合わないから羨ましい」

「何かお揃いの物も買おうよ!」

色違いのブレスレットも買って、二人はすっかり祭りに向けて浮かれていた。

買い物帰りにファストフード店でひと休みした。

「私はまーくんと先月の16日から付き合ってるんだ。お祭りの時には1ヶ月経ってる。祐美はいつから付き合ってるの?」

ドリンクのストローを指先を擦るようにしてクルクル回しながら聞いてくる。

「いつからだったろう?先月の10日くらいかも」

「ちゃんと覚えてないの?」

葉子も男の人とちゃんと付き合うのは初めてらしい。

「記念日とか出来ないじゃん!あ、でも光ちゃんが覚えてるかも!」

橋野が覚えてる気はしなかったけど、そうだねと答えた。

「なんか祐美って冷めてるよねぇ」

少しため息混じりに

「私の前では素直になってみなさい!恥ずかしい?」

お姉さん気取りで少しふざけて私の顔を覗き込む。

「私は…橋野のこと好きで付き合ってるわけじゃないからね」

キョトンとした顔の葉子に橋野と付き合った理由を説明した。

「きっかけはそうだったとしても、今もこれっぽっちも好きになってないの?」

私が頷くと何度も

「本当に?1ミリも?」と聞いてくる。

「1ミリも」

葉子は納得出来ない感じだったが、それ以上は追求して来なかった。


店から出た拍子にふと目が合ったが、気付かなかった振りで目を逸らした。

「木下さん?」

中学の時の同級生だ。同じクラスだったけど、ほとんど話した事もない。

「あ、久しぶりだね。」

「久しぶり!なんか感じ変わったね」

何だか話しかけ方がわざとらしい。

「そんな事ないよ」

そう言いながら気がついた。この子は橋野と同じ高校に進学したはずだった。

「もしかして彼氏とかできた?」

「今友達と一緒だからまた今度ね」

話を切り上げようとした時

「もしかして、うちの学校の人と付き合ってる?」

食い下がって来た彼女の目が確信に満ちていた。橋野と居るのを見たか、誰かから聞いたに違いない 。面倒くさいが、相手をするしかないと悟った。

「そっちの学校の2年に橋野っているでしょ?その人と付き合ってる」

「えー!橋野先輩?」

言葉とは裏腹に驚いた様子はない。やっぱり知ってて声を掛けて来たんだ。

「でも…あの人遊び人で有名だよ、女たらしだって。止めときなよ」

これが目的かと思った時

「いい加減なこと言わないで!」

葉子が割って入ってきた。

「嘘じゃないよ!だってうちの学校の薫里(かおり)とだってデキてるんだよ」

カオリ?初めて聞く名前だった。杏奈ではないのか?

「そんなわけ無いでしょ!祐美と付き合ってるのに!」

葉子は今にも掴みかかりそうな勢いだ。

「うちの学校では有名な話なんだから!親切に教えてあげたのにさ。信じなくてもいいけど、その内分かるよ、本当だから」

そう言い捨てて彼女は去って行った。

「なにあの子!あんなの気にしなくていいよ」

葉子が肩を抱いてポンポンとしてくれる。

「気にしてないよ」

「だよね。祐美は堂々としてて格好良かったよ!」

こういう時に態度に表れないのは幸いだ。相手は私が傷付いたり狼狽えたりするのを見たかったのだろうから。

ただ葉子の心配とは別に、未知なるカオリの存在が気になっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ