後の祭り
「それで?どうしたの?」
葉子はかなり興奮しているようだった。
帰宅してすぐ葉子に電話したのだ。
橋野はあの場所で私を待っていた。
「待ってたの?私がさっきの人と一緒に来たらどうするつもりだったの?」
「付き合ってるの?そうは見えなかったから」
なんだか腹が立った。
「自分には2日後に彼女が出来たけど、1ヶ月過ぎても私には彼氏が出来るわけないってこと?」
つい感情的になってしまった。
「振られたのは俺だろう?」
橋野は冷静だった。それが余計に私の癇に障った。
「振られたのは私だよね?私と付き合ってる時から杏奈と会ってたでしょ?」
橋野の反応が変わったのが分かった。
「気付いてないと思ってた?私に別れようって言わせたのは橋野でしょ!振られたのは私でしょ?」
「何であの時言わなかったんだよ」
橋野も少し声が大きくなった。
「あの時、何て言ったら良かったの?杏奈と会わないでって?彼女じゃなくて私を選んでって?そう言ったら何か変わった?」
もう止まらなかった。こんな風に詰め寄りたくなくて別れを選んだのに、本末転倒だ。別れてから責め立てるなんて格好悪い。
「ごめん」
橋野はそれ以上何も口にしなかった。
それは何を謝ってるのか分からなかったけど、私とやり直す気がない事だけは伝わって来た。
「それで帰って来たの?元サヤかと思ったのに」
葉子は残念そうだ。
「光ちゃんは一体何しに来たの?」
「確かに!」
すっかりヒートアップして気付かなかったが、橋野はなぜ私を待ってたのか、謎である。