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部屋に入ってきて立ち止まりそこから動こうとしない夫に「何をしてるんだ」と首を傾げつつ、嫌な事はさっさと済ましてしまおうとフィオナが動く。


「陛下、早く初夜を済ませてしまいましょう」

彼女の言葉に、弾かれた様にあからさまに狼狽え、顔を真っ赤にした。

「なっ・・・そんなに、すぐに、だなんて・・・」

あんなことを言っていたけれど、フィオナも初夜を待ち望んでいてくれたのか?

と、どこまでも自分の都合の良い事を考えるアルヴィン。

だが次の彼女の言葉に、真っ赤だった顔が一瞬で真っ青になったのだから、他に人がいれば今巷をにぎわせている奇術師のようだと、きっとその不思議さに拍手を送ったに違いない。


「陛下、こちらに潤滑油がございます。勿論、媚薬入り。必要最低限の接触で子作りをしましょう」

「・・・・ え?」

「とにかく陛下には突っ込んで最速で子種を出していただきます。あ、私の身体には指一本触れないでくださいね」

「・・・・えぇ?」

目の前に差し出されたそれは、透明な瓶の中にピンク色のとろりとした液体が入っていた。

「コレ、めちゃくちゃ高かったんですよ?」

自慢気に見せながら、ベッドへと足を向けた。

さっさとベッドに上がり「何してるんですか」と顔面蒼白のアルヴィンに声を掛ける。

ハッとしたように顔を上げ、殴られてきたかのようによろよろとベッドに近寄る。

「説明するのでそっちに座ってください」

と、自分の向を指さした。

覇気のない顔で、言われた通りに動くアルヴィン。

「では説明します。まず陛下はこれを陛下のイチモツに塗り込んでください。媚薬が入っているので自然に勃起するはずです」

「えっ!?ちょっと・・・・」

二十五才になったばかりの童貞アルヴィンには、美しい妻から語られる直接的な言葉に恥ずかしくて真っ赤になる。

恥じらい焦る目の前の男の事など無視し、一応自分はどうするのかも説明した。

「私はちょっと大きめの綿棒に液体を浸し膣内に塗り込みます。少し時間が経てば陛下を受け入れる位は自然とほぐれるようですから」

「っ!!!」


ちょっと待って!本当にただ突っ込んで終わりにしようとしてる!?


アルヴィンは愕然とし、泣きそうになった。

だがそんな胸中など慮るフィオナではない。彼女は嫌いになったらどこまでも残酷になれる、そんな女なのだ。



そして新婚夫婦の初夜は、フィオナの思い描くものとなり、彼女は満足そうに朝食に出たフルーツを美味しそうに食べていた。

向に座るアルヴィンは、ただもう情けなくて悲しくて泣きたくて、食欲すらわかない。

「あら、陛下はお食べにならないの?」

今日も昨日より美しい妻に見惚れるも、大きな溜息と共に首を振った。


昨晩は本当に突っ込んで動いて終わった。

媚薬を塗りすぎたのか、はたまた自分の浅ましい欲望なのかはわからないが、気付けば抜かずの三発。

最中、どこまでも冷静だったフィオナ。その体に触れようとすればその手を叩き落とされ、口づけさえ許してくれなかった。

抜いてしまえば、もう二度と触れさせてはもらえないと直感で分かったアルヴィン。

彼も必死だった。

本当はもっと頑張れたのだが、フィオナからストップがかかって三発で終わってしまった。

そして案の定、今朝になって宣告される。

「今日から月のものが来るまでは、性交渉しませんから」

「っ・・・・」

「あら、嬉しくありませんの?陛下、女に触れられるのも気持ちが悪いんでしょ?これで子供ができれば、二度と関わらなくてもいいんですよ。デキているといいですね」

満面の笑みで、自分のお腹を撫でるフィオナはまるで聖女の様に美しい。

だが、アルヴィンにとってその言葉は、ぼろぼろの精神を今以上にボコボコにするだけで、新婚初夜を終えた夫婦とは程遠いものだった。

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