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出産から一月が経った。


赤ん坊はすくすくと育ち、髪の色は父親に似て銀髪。瞳の色はフィオナに似て美しいエメラルドグリーン。

顔立ちはどちらかと言えばフィオナに似ていた。


両親は不愛想なのに、誰に似たのかとても愛想がよく、周りの人間達は彼にメロメロで下僕の様に仕えている。


一月も経てばフィオナの体調も落ち着き、アルヴィンは今後について話し合う事にした。

このまま何も言わないからとズルズルと引き留めても、いつ彼女がここから去ってしまうのかとびくびくして過ごすよりは、彼女の気持ちを確認し傍にいてもらえるよう説得したほうが建設的だし、精神的にも今よりはいいはずだ。


庭がよく見えるサロンで二人きり。

いつも側を離れない侍女も側近も護衛も、部屋の外で待機させていた。


「フィオナ、今後の事を話し合おう」

そう切り出したアルヴィンの顔は強張り、緊張しているのがビシビシ伝わってくる。

「承知しました」

と、平然とした風に返事をするフィオナだったが、肌に感じるアルヴィンの緊張感に内心焦りを感じていた。


私追い出されるのかしら・・・・子供も産んだし、もう、用無しよね?

マリアの言う通り、家族として子供の傍にいる事は出来ないかしら?

陛下が側室とか愛人を囲いたいと言われても、子供の傍に居られるのなら私はそれを受け入れるし・・・・


そこまで考えて、何故かずんと胸が重くなる。

まるで石か何かを置かれたかのような、重苦しさ。でも、それが何故なのかはフィオナにはわからない。


マリアがそこに居たならば、きっと怒り狂っていた事だろう。


あれだけ陛下に好意を示されて告白されているのに、何でそうなるの!?馬鹿じゃないの!?と・・・


信頼のおける侍女からどう思われているかなど知る由もないフィオナは、どうすれば子供の傍にいる事ができるのかだけ頭の中を巡る。

自然と眉間に皺を寄せ考え込むような表情の彼女の前に、アルヴィンが跪いた。

そして白く滑らかな手を取り、まるで戦にでも行くのではと思う様な険しい表情で見上げてきた。


「フィオナ、私と夫婦になってくれないだろうか」

「え?」


思ってもみなかった言葉に、思いっきり間抜けな声が出てしまった。

その表情と発した言葉があまりにちぐはぐで、すぐには理解ができない。

険しい顔つきで見つめられ、てっきり離縁を言いつけられるのかと思い、構えていたから。

「えっと・・・私達は一応、家族でもあるし夫婦でもあると思うのですか・・・」

「確かに、私達は夫婦だ。それも形だけの。そして子供も生まれ家族にもなったが、私達が仮初の夫婦である限り、本当の家族にはなりえない」

アルヴィンの至極真っ当な言葉に、ドキリとする。

自分はその仮初のままで居座ろうとしていたのだから。

言葉に詰まるフィオナに、アルヴィンは握っていた手に力を込めた。

「だから、本当の夫婦になりたい。もう一度、チャンスをくれないだろうか。フィオナ、あなたを愛しているんだ」

はっきりと言われ驚いたように目を見開くが、そんな彼女を見てアルヴィンはちょっと拗ねたような顔をした。

「前にも、俺はあなたに気持ちを伝えていたと思ったのだが・・・・」

「あ・・・そうでした・・・お聞きしてました。出産子育てで・・・・忘れてました。ごめんなさい・・・・」

「何気に酷いですね。まぁ、俺に興味が無いからなんでしょうけど・・・でも」

痛い所を衝かれ、ぐうの音も出ないフィオナ。

「それも全て織り込み済みだ。あなたのその裏表のない性格や言葉。時には胸に刺さる事もあるが、俺にとってはとても好ましい。その美しい見た目とは裏腹に、意外と腕にも覚えがあり、お転婆な所も魅力的だ。あなたという人を作り上げているその全てが、俺は愛しくて仕方がない」

突然始まった、褒め殺しの様な言葉の数々。

始めは何が何だか分からず黙って聞いていたが、それが自分を褒めているのだと・・・ところどころそうではない所もあるが・・・理解したとたん、全身が熱くなった。

黙っていれば延々と続きそうなその言葉に居た堪れず、アルヴィンの口を咄嗟に手で塞いでしまった。


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