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眠っていたはずのフィオナ。


一瞬、何が起きたのかわからずアルヴィンは彼女を凝視した。真っ赤な顔で睨み付ける様なフィオナに、アルヴィンは真っ青になって立ち上がった。

「す、すまない!起こしてしまったか。母子共に大丈夫だったから安心して!俺はもう行くから、ゆっくり休んでくれ」

まさか起きているとは思わなかった妻に、情けないかな気持ちをぶちまけてしまったアルヴィンは、動揺が収まらず急いで出ていこうとした。

だが意外にもそれを止めたフィオナ。

「お待ちください」

背を向けたアルヴィンは、恐る恐るフィオナに身体を向ける。

「お座りください」

躊躇いながらも、彼女に言われるがままに座る。

静かで長い沈黙が二人の間に流れる。


既にフィオナの顔色は元に戻っているが、アルヴィンだけは未だ血の気を失ったような顔色をしていた。

沈黙が続く中、口を開いたのはフィオナ。

「先ほどの告白は、本心からですか?」

「・・・・どこから、聞いていたの?」

「あなたが部屋に入ってきた時から、起きてましたから」

という事は、始めからじゃないか!と、今度は羞恥から真っ赤になった。

そんな気持ちを静める為に、数度深呼吸するとフィオナの美しい瞳を見つめた。

「あれは、本心だ」

「陛下は・・・・私を嫌っていたはずですよね?」

「それは・・・前にも話した通り、フィオナと出会う前の女難の所為からで、あなたの事は嫌ってはいない」

「そうなのですか?確かに謝罪は受けましたしその背景も聞き納得しました。ですが、女性そのものがお嫌いで私に構うのも子供の為なのでしょ?」

結婚し妊娠してから、とにかくフィオナの許に通い憂いのない生活が出来るよう気を配ってくれていた。

彼と会話するようになったのはそれこそ胎動を感じてからで、さほど時間は経っていない。

だから彼が優しいのは、子供を無事に産んで離縁したい・・・フィオナの根底ではそれが理由なのだと、ずっと疑う事なく思っていたのだ。

彼の優しさがまさか、自分に対する恋情だとは微塵も思うはずもない。


「本当は、あなたにこの想いを告げたいと何度も思っていた。でも、初対面であのような事があり、何を言っても信じてもらえないと思っていたし、あなたは離縁を望んでいる。その気持ちを何とか変えてもらいたかった・・・・どうしても・・・・あなたを失いたくなくて、少しでも傍に居られればと・・・・」

彼の言葉は、冷めきったフィオナの気持ちに温かな風を送り込んでくるような、そんな気持ちになる。

「・・・・いつから・・・私に好意を?」

「それは・・・・」

ちょっと言いよどむように下を向き、だが全てを話す決心をしたかのように顔を上げた。

「あの、初めて顔を合わせた時・・・・」

それにはフィオナも驚く。まさか陰であれだけ悪態をついていた舌の根も乾かぬうちに、一目惚れなどと・・・・

「理解できないわ・・・・」

思わず心の声が漏れた。

そんなフィオナに、悲しそうに笑うアルヴィン。

「わかってる。でも、この想いだけは今も変わらないし、育っていく一方なんだ」

この気持ちだけは否定して欲しくなくて、受け入れてもらえなくても、信じてだけは欲しかった。

そんなアルヴィンを見て、少し考え込む様にしながらフィオナが口を開いた。

「ご存知の通り、私は物言いがきついと言われています。愛想もいいわけではありません。初夜の事といい、私は一度嫌いになると相手を慮る事ができません。それは陛下が一番わかっていると思います。こんな私なのに、嫌いにならないのですか?」

フィオナの口から今まではっきりと言われた事がなかった「嫌いな人」という言葉。

それは思っていた以上にアルヴィンを傷つけた。だが、やはり好きという気持ちは薄れることは無かった。

「それら全ては、フィオナという女性を作り出す一部に過ぎない。俺は今、目の前にいるあなたを愛しているんだ」

ジッと見つめるアイスブルーの瞳は、どこまでも澄んでいて、このまま吸い込まれるのではと錯覚してしまうほど。


「・・・・陛下の気持ちは、理解しました。ですが、私としてはずっと嫌われていると思っていたし、あなたの優しさは子供を産んで離婚する為だと先程まで思っていたので、すぐには気持ちを切り替えることはできません」

「それはわかっている。ただ、俺の気持ちを知ってくれれば、信じてもらえれば、それだけでいい。それと、今は無事に子を産む事だけを考えて欲しい。無事に出産したその後で、俺と話す時間を貰えないかな?」

「わかりました」というフィオナの返事に満足そうに頷き、アルヴィンは「やることがあるから」と、退室していった。

先程までとは違い、どこかすっきりとした表情で。


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