心が折れる。
日が当たる地面。爽やかに吹く風。チュンチョンとなく小鳥たち。そして、森の外でボーとする俺。
あれから何年たったのかと思いながら、自分の時間が削れていく毎日。楽しさもなく、面白いこともなく、心が空っぽになっていく。
そこで俺はふと思った。
なぜ、俺はチート能力を貰ってしまったのかを。
俺は最初、神の手違いにより、死んでしまった。そこで神により、異世界転生とチート能力を貰った。俺は、喜んだ。チート無双で女の子達とハーレム生活ができると。異世界転生した後では、城の姫様を救ったり、奴隷の女を手籠めにしたり、女騎士を落としたり。俺の願った事はチート能力で簡単にゲット出来た。そこで、俺は気付かなかった……。
お金持ちがなぜ、物を簡単に捨てたり簡単に買えたりした理由を…。
俺に惚れ込んでしまった女達とイチャイチャしたり、ズッコンバッコンしたりと、男の願望が簡単にかなえることができてしまった。また、俺は異世界にあるギルドに女達と入り、チート能力で無双していった。伝説のドラゴン、最強の魔王、魔人など、色んなモンスターたちを手下にしたりしていった。
しかし、俺は満足出来なかった。
女は簡単に手籠めにできるし、最強のモンスターを倒せるしと、自分が苦戦することがなかったからだ。有名な漫画やゲームはなぜ人気になったのか、そこには熱い展開。神がかった戦闘。そして、ストーリー。それがあるから人気になったのだと。俺にはそれがなく、簡単に入手出来た。モンスターや女、金などのものを簡単に。
だからこそ、俺の心はなおさら満足できやしなかった。
俺は心が満足するように色んな事をしまくった。世界を旅したり、色んな女を手籠めにしたり、政策に手を貸したりと色んな事をしまくった。
しかし、俺の心は満足出来なかった。俺にあるチート能力が邪魔する限り、俺の心は満足しない。俺は悟ってしまった。故に死ぬまで心は満足しないと思ってるしまった事で、絶望し、嘆き悲しんだ。
あぁ…、あぁ…。
俺の心は一生満足しないのだと。
そこでの俺は、人生を終わろうとし、首を吊った。だが死ねない。次に毒を飲んだ。これも死ねない。火に入った。これも死ねない。水で溺死した。これでも死ねない。何やっても死ねず、なおさら絶望する。チート能力がある限り、死の耐性があるのだと。俺に惚れている女たちは俺の行動の豹変ぶりに戸惑い、心配していた。もちろん、手下のモンスター達も心配していた。
それを見た俺は、寿命が来るまで、彼女達と過ごした。平穏な毎日だった。世界が危することもなく、静かに、ただ変わらずの平和な毎日。でも、俺の心が満足せずに寿命を迎え、死んだ。
しかし、俺はまた絶望することになる。
死んだ俺は天国か地獄に行くはずだと思っていたのに異世界にいたのだ。今度は赤ん坊のままで。俺は泣いてしまった。赤ん坊だったのではなく、チート能力がある限り、俺はまだ心が満足できないのだと。
そこでの俺は色んな事をやりまくった。モンスターを統率して、世界を支配したり、勇者を倒してしまったり、人間や他の人間に友好的な種族を奴隷にしたり、一度目の異世界生活とは反対なことをやりまくった。だが、満足せずにこの世界で寿命を全うした。
そして、別の異世界で目覚めるといったループを俺は何度も味わい。心が満足しない日々を過ごした。
やがては俺の心がすっかり折れ、今は森で自分が作った家の庭で椅子を拵え、空を見上げながらボーとする毎日を過ごしている。
俺が死んで生き返っての繰り返しの生活でもいつまでもいるチート能力を思いつつ空を見上げていた。
しかし、ふと気付く。なぜ、死んで別の異世界で生きることの繰り返しの生活に、チート能力がついているのだと。
がばっと椅子から立ち上がった。
「もしかして、チート能力のもう一つの能力があるから、この繰り返す生活があるんじゃないか?」
俺は一つ不思議だったのは死の耐性があるにもかかわらず、寿命で死ぬことができた。つまり、そこにチート能力のもう一つ能力が起動したのではないかと。しかし、寿命で死ぬことを消してしまうと、俺は一生死ぬことができない不死になってしまう。
「いや、待てよ?」
「その能力を消せば、俺は異世界に行かず、ちゃんと来世に行けるのでは?」
そこで、俺の心は決めていた。異世界に行かず来世に行く方法を必ず見つけ出すことを。
だが、そこで行動するには遅すぎた。彼はもう、年齢がおじいさんであり、まともには動けるが、寿命が来てしまったのだ。
「……ちっ!もう寿命か!仕方がない…。また異世界に生まれるが、そこで必ず……見つけ…だして……や…る…………。」
おぎゃあおぎゃあとなく声に彼の意識が蘇る。
「あなた!生まれたわ!!」
「ああ!!俺に似て可愛い娘ではないか!!」
ちっ、また赤ん坊か、また大人になるまでがしんどくなる…。
…………ん???娘???
もしかして……、俺って女になってるのか!?
「おぎゃぁぁぁ!?」
「はぁ~い、こわくないでちゅよぉ~。よしよし」
母親みたいな人が俺をなだめつつ、頭をなでている。
まさか、今回の俺は女になっているのか?はぁ~…。また女の子設定をしなくてはいけないではないか……。仕方ない。俺にあるチート能力について詳しく知るのと、設定を考えながら、小学生の年齢にまでやって行くとしようか。
しかし、設定を考えるのはめんどいな………。