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※二人の見た目は美少女です

見切り発車作品は話が進むと続きを考えるのが苦しくなる(経験者)


説明回です。



「あの、チャノさん。少しは落ち着けましたか?」


「おー……ちーっとだけだけどな」



そう言って目の前のチャノさんは、その美麗な見た目からじゃ想像できない程の乱雑な動作で胡座をかいて座る。

そわそわとしながら忙しなく周囲を見渡したりする様子は、落ち着ききれない事を全身で表していた。


チャノさんが混乱する気持ちもすごい分かるけど、今はそれよりも優先すべき行動がある。


「チャノさん、とりあえずここを出ましょう。話はそれからってことで」


「あぁ。そうだな」


それはこの洞窟から出ること。

チャノさんは今の危険性に気付いているのか、特に躊躇ったり戸惑ったりする素振りもなく肯定してくれた。


チャノさんの手を取って引っ張り上げる。


「……あのさ、嬢ちゃんはエル……なんだよな?」


「……はい、カシエルです。見た目は変わっちゃいましたけど」


そう困惑気味にチャノさんは訊いてきたので、肯定を返す。

チャノさんはこの質問自体が少し酷いものだと思ったのか、「だよな、悪い」と謝罪をしてくる。

きっと、今混乱の元である体の変化を指摘するような質問だったからだと思う。

僕は全然気にしてないし、そうなる気持ちは良くわかるので「気にしないでください」と言っておいた。


「……そうだな。俺も変わっちまった……一体全体どうなってんだかなぁ」


「ですね……暗いので灯りをつけますね。【光よ】……わっ、今回はいつもと違ってちゃんと指先を光らせれましたよ!珍しくちゃんと魔術を使えました!」


「あー……やっぱり前に全身光ってたのは失敗してたんだな……」


はい。失敗してました。

全身を光らせるのって、魔力の消費が地味にだけど激しかったりする。需要の供給と損失が割に合ってないんだよね。

指先だけを光らせるくらいで充分光源は確保できるから、できるならそっちの方がいい。それに、魔力も節約できて長持ちするからね。

あと慣れてないうちは目の前が光で埋め尽くされて、視界を確保することさえままならない。僕は何回も失敗しちゃってるから、上手く光の出力とか、角度を調整できるようになってしまった。



そんな会話をしつつ歩き出す僕達。



この『アーティファクト?』が置かれていた円状の空間から、元来た道を右壁伝いに歩いて行く。


三回ほど曲がり角を曲がると、道端にポツンと落ちている何かが二人の目に写る。



「あー、え〜と……はぁ。マジかー。こんな見つけ方か〜……エルすまん」


「まあ察しはつきますけど……つまり、僕達は大馬鹿者って事で合ってます?」


「んーまぁ、そういう事……だな。うん……マジごめん。でもエルは全然悪くないぞ、コレは100俺が悪い。しかも俺はここ一回探しに来たし」


「いえ……まあ、コレに気づかなかった僕も同罪かなって。寧ろこっちこそごめんなさいと言いますか……」



二人が見つけたそれは、皮袋だった。

この洞窟の道端にポツンと落ち、隠れることなくその姿を見せている。

チャノは、まるで皮袋が「僕ここにいるよ!早く拾ってちょうだいよ!」と主張しているようにすら感じる。

カシエルとチャノは、喜劇に終わったこの状況に二人して涙を滲ませた。


チャノはとぼとぼと頼りげ無く歩いて、皮袋を拾う。


「っ!?これは……」


「ん?チャノさんどうしました?」


皮袋を回収しようとするチャノを後目に歩き始めていたカシエルは、拾ってすぐ意味深な反応を見せるチャノに気付き足を止める。


「……いや、なんでもない。早く出るか」


チャノはなぜか急にキョロキョロと落ち着きを無くして周りを見渡し、早歩き気味に進み始めた。

カシエルはその様子に疑問を覚えながらも、チャノの後に続いた。







カシエルとチャノは、あの後なにかある訳でもなく無事に隠し洞窟を出た。

野営地に戻って来ると焚き火は消えていて、その上に吊るしていた鍋は水分が蒸発して少し悲惨なことになっていたりした。

それを見たチャノは、カシエルへの罪悪感がぐんぐん膨れ上がっていく。

カシエルは気にしていないが、命を助けて貰ったり、一人で洞窟に向かった自分を気にかけてもらったり、探し物を手伝って貰ったり。カシエルには恩がある。

だがチャノがカシエルにしたことは、自分の不注意のツケにカシエルを巻き添えにしたりと恩を仇で返す事しかしていない。

チャノはそういった義理を気にする一面を持っていた。


「うへー……やばしですねこれは……鍋が逝っちゃいました」


「本当に悪いエル!詫びに新しいの弁償するから許してくれ!」


「ん〜と……チャノさんのせいって訳じゃないですよ。消すの忘れてた僕が悪いので気にしないでください……旅経験が少ないのが凶と出ましたね」


「それは流石に申し訳なさすぎるから鍋の弁償くらいはさせてくれ!ホントに!」


「で、でも……そこまで気にしなくて良いんですよ?鍋くらいならほら、幾らでも替えはきくんですから、ね?」


「いや聖人か!お前は聖人なのか!それとも天使か!」


チャノは泣いた。この子健気すぎる!

今まで見てきたどの人よりも圧倒的に健気すぎて、もうチャノの心は締めつけられた。それはもう悲鳴をあげるほどにだ。

今のカシエルの見た目が儚げな美少女になっているのも拍車を多いにかけている。


「ぐぉぉぉおお!!お、俺はどうすればいいんだぁあ!!」


カシエルは胸を抑えて喚くチャノを見て、思わずといった笑いがこぼれる。


「プッ……あははっ!」


「ぐぉぉぉおお、お?ど、どうしたんだエル?」


「あははっ…!だ、だってチャノさんが!あ、あまりに変な反応してるから!っあはは!」


カシエルは、こみ上げてくる子供のような笑い声でおかしそうに笑っている。

チャノはそんなカシエルに少し戸惑うものの、楽しそうに笑うカシエルを見ていると次第に自分も釣られて微笑みが零れる。


チャノは、先程起きてからずっと感じていたどこか後ろめたい気持ちが、少し緩和したのを感じる。

昨日の夜から……いや、出会った時から何度も迷惑をかけてしまっているというのに、当の本人はこんなに愉快に明るく笑っているのだ。

当然、ペースを乱さざるを得ないだろう。


「わ、笑いすぎじゃねぇかエルよぉ。おしまいだおしまい!もう笑うのおしまい!」


「あははっ!そっそうですね。んふふ、そろそろふふふ…………ゴホン!そろそろしつこくなってきますからね!ええ!」


カシエルは、なんとか肩を震わせる程度の笑いに抑える。それでも肩がプルプル震えているくらいにはツボに入っていたらしい。

チャノはカシエルの笑いのツボがどこなのかよく分からなかった。




「ふ〜……よし、落ち着いてきました」



「おう……エル。俺たちの体、よぉ……女になっちまったな…?」


「……はい、ですね。確認してみたんですけど……僕の股にあった性器も女性のものになっていました」


ここで二人は確認作業を入れることにした。

というより、『今起こっている不可解を整理する』といったほうが正しいかもしれない。


そしてカシエルからもたらされた残酷な事実に、チャノは眩暈がした。

自分達に当たり前のようにあった『アレ』が消えている、というなんとも言いようのない悲しみをチャノは抱く。

その様子は側から見ればどこか滑稽に映るが、本人達からすれば本当にショックな内容なのだ。


しかし、事態はそれだけで済む話ではない。カシエルとチャノは血涙を流しつつ、気持ちを切り替えていく。


「あの、チャノさん。確かに僕たちの体の変態は重大な問題なんですけど……それよりももっと重大な問題がありますよね……?」


「んー……あぁ、あれかぁ……」


そう切り出して、カシエルとチャノは見つめあう。お互いの認識は一致しているようだ。チャノの方はどうにも反応が少し薄いが。


「昨日、僕たちが見た黄金に光るあのどろどろした怪物みたいなあれって……」


「……あぁ、俺たちの勘違いじゃなければあれは『アーティファクト』だろうな」


二人は昨日見た謎の黄金のどろどろした怪物について話す。カシエルとチャノの認識は、あれは『アーティファクト』で一致していた。


ここで、なぜ二人はこんなにも深刻な面持ちで話しているか疑問が生まれるだろう。特にカシエルに至っては尚更だ。

世界の、魔術師界隈の神秘である『アーティファクト』を見つけたのだ。冒険者であるチャノにとっても名誉な事であるし、カシエルにとっても旅の目的を果たせて嬉しいはずなのに、だ。

二人がこうも深刻そうにしているのには理由があった。


「僕たち、使っちゃいましたね……『アーティファクト』を無断で……」


「だな。まぁ使ったというか使わされたというか……」


そう。こうも二人が悩んでいる理由は『アーティファクト』の無断使用にあった。




『アーティファクト』とは、この世界にて隠されるように存在し、人類に解明されていない【オーパーツ】というものを指すものだ。

『アーティファクト』はその希少性と由来ゆえ、解明されている情報があまりにも少ない。



だからこそ、『アーティファクト』を発見または入手した者は、冒険者協会および魔術師協会への報告が義務付けられている。



カシエルとチャノレンジが『アーティファクト』の無断使用に怯えているのは、この【特異性物体保管法】という掟があるからだ。

もし、『アーティファクト』を使用すれば、その者は『アーティファクト』の【所有者】となる。

そして『アーティファクト』を合法的に使用するには、冒険者協会と魔術師協会から発行される【特異認可証】が必要だ。

これを【所有者】が持っていない、又は提示出来なかった場合は『アーティファクト』の【悪徳使用者】となり、軽いお尋ね者になる。


そして、カシエルとチャノレンジは揃って【特異認可証】を持っていない。それなのに『アーティファクト』を使用してしまった。

つまり、この事実が露呈すれば二人はお尋ね者である。


「ど、どうしましょうチャノさん……!僕たちもしかして犯罪者になっちゃったりするんですかね!?」


「あー……まあ落ち着いてくれエル」


「そうなったら僕たち…騎士の人に捕まって、牢屋に入れられた後は臭いご飯を食べさせられて汚いダニがいるようなベッドで寝させられて、そのまま一生を過ごすんでしょうか……!?」


そんなことを頭を抱えながら涙目で嘆くカシエル。なぜか語られる妄想が無駄に具体的である。


「いやに具体的なシナリオだな……エルが危惧してるのは【特異認可証】を持ってないまま『アーティファクト』を使ったってとこだろ?なら多分だが大丈夫だと思うぞ。多分だけどな?」


「ううぅ……えっ?大丈夫って……ホントですか!?どういうことなんですかチャノさん!!教えてください!!」


「お、おう。と言っても俺も詳しくは知らないんだけどな?」


そう言ってチャノは、カシエルとは違いある程度の落ち着きをもってカシエルに教える。



見てくれてありがとうございます!


【】のネーミングは結構適当です。


すいません。毎日更新は諦めました……

見切り発車作品を毎日更新できて、かつ設定もストーリーもしっかりできる人がいたならもはやそれは神ですよね。


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