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プロローグ5

絶対読んでください(血涙)

この話を作るのに作者は6時間かけました。

もう一度言います。絶対読んで下さい。



僕、ことカシエルは衝撃を受けていた。

まさかチャノさんはあの、あの有名でみんなの憧れの冒険者だったなんて。


「いや、エリートって程ではねぇぞ?それに階級だって、ブロンズ・シルバー・ゴールドとある内の、一番下のブロンズ帯だしな」


チャノさんは冒険者としての階級が高いわけではないらしい。

と言っても、あの冒険者だ。

正直、階級がブロンズより高ければもっと驚いてもっと敬っていた気はしなくもないけれど、そもそも冒険者であるというだけで立派で箱がつくくらい凄い。


「いやいや、冒険者ってだけで凄いですよチャノさん!そもそも冒険者になること自体、誰でもできる事じゃないんですから!チャノさんチャノさん!僕、冒険者資格の印の徽章を見てみたいです!!良ければ見せてくれませんか!?」


「おぉ……エルよぉちょ、ちょっとばっかし褒めすぎだぜそりゃあ。まあそこまで言うなら見せてやらん事もねぇけどな〜!」


チャノさんはにんまりしながら頭をガシガシ掻きつつ、満更でもなさそうにズボンのベルト部分に片手を添えた。



そしてチャノさんの表情が固まった。というか、なんなら体の動きがピタッと凍りつくように停止した。



「あ、あれ?チャノさん?ど、どうしました……?急に固まりましたけど……」



チャノさんが急に動かなくなった事に動揺したまま、僕がそう声をかけるとチャノさんはやおら指を組み、本当にゆっくり肘を膝に付いて俯いた。


「……とした……」


俯いたチャノさんが本当に小さな小さな声で呟くものだから、僕は聴き取れなかった。



「へ……?チャノさん今なんて言いました……?」


「徽章を……いや……それだけじゃない……!」



そうチャノさんは震える声で言い、深呼吸を始めた。

そして吸った息を吐かずに


叫んだ。




「えっと……チャノさ」

「持ち物全部!!!!落としたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!」

「ええエエエエエエエエエエエエエええええええエエエエエエエエエエエエエエえええぇぇぇぇぇェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!!!!????」








「絶対あの洞窟に落としてきたんだあの疫病洞窟めえぇェェ!!!!」と大声で叫び、意外と冷静に焚き火から火のついた薪を持ち出して「エルすまん待っててくれ!今俺の徽章を回収してくるからよぉぉォ!!」と言い残して駆けて行った。

行先は……言わずもがな、かもしれない。



僕は少しの間呆気に取られて呆然としていたけど、


「落としたって……え、ええっ!?洞窟に!?それに回収ってことは……またあの洞窟に……?」


チャノさんが飛び出した行先が、あの恐ろしい体験をしたばかりの隠し洞窟だと察して、僕は急いで後を追った。


「チャノさん待ってください!一人は危険ですよーー!!!!」










洞窟の前まで来たチャノレンジは、入口を隠す草木を掻き分けて洞窟に駆け込んでいこうとした……が、手に持つ松明が邪魔で草木を掻き分けられない!


「あークソ!松明を持っては行けない……か」


松明を持ったまま草木を掻き分けようとすれば、まず間違いなく草木は燃えるだろう。

最悪、そのまま大規模な山火事に発展しかねない。

そうなればチャノレンジはもちろんだが、もしかするとカシエルにも被害が出かねない。

それはチャノレンジにとっても避けたい事だった。


そして、松明無しで洞窟に入るのはとても危険だ。

洞窟の中には明かりがなく真っ暗なので、洞窟内では視界を確保できない。

さらに未開拓の洞窟の構造は分からないので、高確率で迷子になってしまうだろう。そうなれば外に出れず餓死確定である。

そしてこの洞窟の危険性はそれだけに留まらない。

チャノレンジは、昼頃に襲ってきたあの謎の化け物を思い出し身震いする。


普段のチャノレンジなら、こうなった段階で引き返すだろう。事実、状況的には詰みなので引き返すのが正解だ。

冒険者には、そういったリスク管理能力が必要だから。


チャノレンジは、手に持った松明をその場に落とした。


「さっき通った道自体は覚えてる。なぁに、ちっと入ってぱぱっと回収してずらかるだけだ。家主も怒ってくれるなよ」


そう1人つぶやき、チャノレンジは洞窟に入って行く。


草木を掻き分け、足がさっきまで踏んでいた土より少し固くなった地を踏みしめた。

洞窟に入ったチャノレンジは前を向く。

暗い。真っ暗だ。光なんてどこにも無く、闇だけが広がっている。


チャノレンジは左に体を向け、手を伸ばしながら歩くとそう間もなく手が洞窟の壁に触れる。


(俺はこういう閉鎖された空間を探索する時、いつも左壁に沿って歩く)


それは冒険者が洞窟などを探索する時に、いつも心掛けること。

目印をたてるか、法則性がある探索をする事だ。

チャノレンジの場合は、左壁に沿って歩くという法則性に沿った物だ。

こうすることによって、チャノレンジは引き返す時に右壁に沿って歩けば絶対に来た道を戻れるという風に、閉鎖空間で迷わないようにできる。


チャノレンジは昼もそうして洞窟を探索していた。つまり、左壁に沿って歩くだけでチャノレンジは持ち物を落とした場所に行ける訳だ。

今回はそれがチャノレンジを洞窟に誘う要因になった。


(四回。四回曲がって……確か五回目に曲がる道の少し前で、あの化け物が上から降って襲ってきたはず。落とすとするならあそこだ)


チャノレンジはなるべく足音を立てないようにしつつ、左壁に沿って歩きだした。





「松明が落ちてる!?」


その頃カシエルは、隠し洞窟を隠す草木ゾーンの前まで来ていた。

そして、地面に無造作に燃えたまま落ちてる松明を見て驚く。


「チャノさんはいない……っ!ということは松明を持たずに洞窟に!?急いで探しに行かないと!」


松明が落ちてる理由は一先ず置いといて、今は洞窟に明かりもなしに行ってしまったチャノレンジを探さなければならない。


とはいえこの松明をそのままにしておくのも危ないとカシエルは危惧した。

カシエルは『水よ!』っと唱え、指から水が放射される魔術で松明の火を消化しようとした……が暴発し、全方位スプリンクラーになった。

松明の火も消えたものの、カシエルはびしょ濡れになった。


「あぁもー!!どうしていつもこうなるんだよー!」


ままならないと思いつつ、草木を掻き分けて歩いて3分程すると洞窟に辿り着く。


そのままカシエルは止まることなく駆けながら、昼と同じように大声で呼びかけた。


「チャノさーーん!!!何処ですかーー!!」


「……〜ルかー!こっ〜だーー!」


呼びかけて数秒経つと左の洞窟からチャノさんの声が聞こえてきた。


こっちだ!……なんというか……デジャブを感じる。チャノさんの声はあまり切羽詰まったような感じじゃないし、ちょっと気が抜けちゃうな。


でもチャノさんは灯りを持ってない。

それにこの洞窟はあの謎の化け物が出たところだ。なるべく急いだ方が良いかもしれない。


カシエルはそう思い、勢いを止めることなく走った。







そうして何度か呼びかけ合い、カシエルはチャノレンジと合流した。


「エル、来たんだな。というかなんでお前全身が光って……」

「チャノさん!歯ァ食いばれえええ!」

「えっ…ぶはァ!!??」


そして合流した矢先、カシエルはチャノレンジを普通に殴った。


「グハァ!……い、痛てぇ……エ、エル?なんで殴った? 」

「チャノさん!」

「は、はい!」


殴られたチャノレンジがカシエルに抗議しようとするが、カシエルがチャノレンジの名前を鋭く呼ぶとチャノレンジはなぜかいい返事で返してしまう。


そしてカシエルは尻餅を着いたチャノレンジの両肩を掴み、チャノレンジの目を真っ直ぐ見て訴えた。


「心配します」


そう一言。零した。

チャノレンジはちょっと勢いの寒暖差が激しすぎて思わず「……へ?」という声を漏らした。


そしてカシエルは言葉を紡いだ。


「チャノさんはきっと、落し物を拾ってすぐ帰る。それくらいの意識でここに来たと思うんです」


「え、あ、あぁ。まあそんな感じだったかと言われれば……そうだな?」


チャノレンジの今の内心を表すなら(広義的に見れば俺の行動はそうなるしそうだな。あとなんでコイツは全身光ってるんだ?)である。


「でもこの洞窟って、普通の洞窟とは違って化け物が出たところじゃないですか。僕としては、昼の光景を思い出さざるを得ないんです」


「あー……」


チャノレンジはここら辺でカシエルの言いたいことを察した。というより、最初の一言を思い出したと言うべきか。

『心配する』

あの一言は、カシエルの真っ直ぐな気持ちを伝えていたのだ。

チャノレンジはこの洞窟で落し物までの道を完璧に記憶して、昼の化け物は昼の道中あの一匹しか遭遇しなかったし、その一匹はカシエルが倒してくれたから大丈夫だとタカをくくっていたが、それでもカシエルは自分を心配してくれた。

チャノレンジは罪悪感を少し感じながら同時に、胸が少し温かくなった気がした。


「これは、ただの僕の我儘ですけど……チャノさん、もっと自愛して下さい」


「……わりぃ、気をつけるわ」


そんなこんなで話し終わると、カシエルはチャノレンジに手を伸ばして謝罪する。


「すみません殴ってしまって、立てます?」


「あぁ、立てる。あんがとよ」


チャノレンジはカシエルの伸ばしてくれた手を取り、立ち上がった。




そして立ち上がったあと、チャノレンジはカシエルに一つ尋ねた。


「よし、後はちゃちゃっと捜し物を回収して帰るとするか。カシエル、皮袋見なかったか?」







「チャノさん無いです!」


「こっちもだ。なんでだ?この付近で間違いないはずなんだが……」


チャノレンジとカシエルはまだ洞窟を出れてはいなかった。

もう昼の事件現場には来れているのだが、如何せん捜し物が見つからない。


そうして二人で血眼で探し回っていると、カシエルは目の端で光る物が見えた。


(あれ?)


なんだろうと思って目を凝らしてみても、さっきの光は見えない。

見間違いかとも思ったが、さっきから一向に見つからない捜し物の貴重な手掛かりかもしれないと思うと、とても無視は出来なかった。


「あのーチャノさん、チャノさんが落とした皮袋って金属の類いが装飾で着いてたりしますか?さっき何かが光ったのが見えたんですけど」


「ん?んー……装飾はついてない。見た目は本当に普通の皮袋なんだが……中の物が出たってのもな、考えにくいし」


「え?なんでですか?皮袋が破れたりしたら有り得そうですけど……」


カシエルは少し疑問に思った。皮袋の布に穴が空いて、中の物が出てしまうというケースは普通にあるからだ。


チャノレンジはその問いに少し迷った顔をして言う。


「あー、なんて説明すりゃあ良いのかな。一から話すと長いし、略すと上手くまとめれないし……」


「じゃあとりあえず一回だけ略して言ってみてください。聞きたいです」


「なら一文でまとめてみるか、中が異空間になってて物がいっぱい入る上に破れても異空間は崩れないから物が落ちない」


「出たあと一から聞きます」


「おう。んじゃその光ってたとこ見に行くか」


「はい」


カシエルは理解出来なかった。それが普通の反応なのでチャノレンジも気にせず場所移動を始めた。


「こっちに見えましたよ」


そうしてカシエルが案内した方向は、洞窟のさらに奥に繋がる道の方だった。


「……さ、流石にねえだろこっちは。反対方向から来てるのにあっちに落ちるはず…」


「……流石に違いますよね。可能性はありそうなので報告しましたけど」


そう二人で話していると、また洞窟の奥から何かがキラリと光る。


チャノレンジは固唾をのみ、カシエルに自分がもしやと思った推測を伝える。


「な、なあエル。アレってもしかして……お宝じゃないか……!?」


「えっ、お宝?」


そうカシエルが聞き返していると、チャノレンジは一人で先に洞窟の奥へ進んでいく。

チャノレンジは今は明かりを持っていない。明かりが絶えると危険なので、明かりが絶えないように急いでカシエルも後を追う。


だが、


「チャノさん?」


チャノレンジの姿をカシエルは見失ってしまった。

カシエルは驚く。数秒前まで見えていた姿を急に見失うなど、普通にありえることでは無い。


だが、チャノレンジはあのキラリと光る宝?の元へ向かっていた。

つまり、チャノレンジを見つけるならあの光の元へ行くのが最も確実だ。


カシエルは駆け足気味に光の元へ向かい、その光の正体を見た時言葉を失った。




その輝く光からは魔性の魅力があり、威厳すら感じる程の威圧を感じる。


その光るモノは不定形でドロドロしていて、偶然にもチャノレンジを襲ったあの化け物と似ていた。


カシエルは本能で、これが


『アーティファクト』であることを確信した。



そしてカシエルは自然と手を伸ばし……


伸ばした手に、分離した『アーティファクト』の片割れが飛び乗った。


その感覚があまりにも不快感を感じる物で、体が拒絶を示す。



「う、うわぁ!?なにこれ!?飛び付いてきた!?なっ!ちょっ!はなれてっ…よ!」



そうしてカシエルが抵抗していると、隣から見知った声が聞こえてきた。

チャノレンジの声だった。


「なっ!?コイツは昼間のアレの仲間か!?クソッ!離れやがれっ!!」



そしてチャノレンジも、カシエル同様『アーティファクト?』に襲われていた。


何が起きているのか、カシエルにもチャノレンジにも分かりはしなかった。



実のところ、チャノレンジとカシエルははぐれた訳では無い。彼らは互いを見失ってこそいたものの、距離で言えば本当にすぐ隣にいたのだ。

なぜ互いを見失ってしまったのか。

それは偏にアーティファクトのせいなのだ。


彼らはアーティファクトに近づいて行く度に、アーティファクトの魅力によってアーティファクトしか目に見えなくなっていき、ある程度近づけば互いを見失ってしまう程にアーティファクトに惹かれていた。


そして今、アーティファクトに襲われるという現象が起き、アーティファクト以外の情報が認識出来るようになった訳だ。



数分程二人で仲良くアーティファクトに抵抗していたが、彼らに疲れが見えて動きに少し疲弊が見えた瞬間、アーティファクトが二人の体の中へ入ってしまう。



「……っえ?体の中に入っちゃ……った。あ、あれ。体が……っあ、あつい!!」


そして少し経つと、体が発熱しだした。

カシエルは膝をつき、その熱さに悶える。周りを確認する余裕は無いが、きっとチャノさんもこの熱さを味わっているのだろうかと頭の端で思う。

最初は体が燃えるみたいに熱かっただけが、数秒経てばまるでマグマに浸かっているような程のショックに体が耐えきれず、二人は意識を落とした。












「……っん?んぅ……うぅん。こほっこほっ、喉が……乾いたな……ん?」


カシエルは、僅かな喉の乾きを感じながら目覚めた。

謎の倦怠感が体を包む感覚があり、少し気だるげに体を起こす。

カシエルのサラリとした純白の長髪が、肩を撫でる感覚に少し震える。そして疑問に思う。


なぜ髪が白くてこんなに長いんだ?



カシエルは自分の体を視認し、思わず「へ?」と呟く。その声がまるで鈴を鳴らすように綺麗に透き通っていて、またもやカシエルは混乱する。


何が起こって……?


カシエルは自分の体をもう一度確認する。

シミひとつなく、雪のように白い肌。今までの自分ではありえない程華奢な体に、少し膨らんでいるように見える自分の胸。


えっ?


自分が発するこの透き通った声は、洞窟の中を反響する。


僕、女の子になっちゃった?



なぜか上から差し込んでいる光が、まるでスポットライトのように自分を照らしている。


きっとこの光景を第三者が見たなら、こう語るだろう。




「まるで、天使様が降りてきたようだ」と



見てくれてありがとうございます!


長い。泣いた。

長すぎて最後の方は少し雑になってしまったかもしれません。そこはまあ、また後日直すかもしれません。もちろんの展開は変えませんのでそこは大丈夫です!


とりあえずこれでプロローグが終わりました。

作者は2日休みます。二日失踪します。

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