プロローグ2
声の方向へ向かっていく。どうやら声の主は隠し洞窟の中にいたらしく、彼は途中少し道に詰まりそうになったものの、なんとか道をみつけて洞窟の奥へ駆けて行った。
見つけた!あの人だ!!
先程の声の主を見つけた。しかしその男性はいま現在進行形で、不定形でドロドロした謎のナニカに飲み込まれそうになっていた。
彼は躊躇いなくその怪物に近付き、腕をドロドロの怪物に突っ込んで、呑まれそうになっていた男性を引き出して救出する。
「ゲッホ!ゲホッゲホ!!」
良かった!生きてる!
そう安心したのも束の間、謎の怪物は獲物を取られたのが気に食わなかったのか、こちらに這い寄ってきた。
「ヒッ!?」
流石に人命救出の為に必死だったので気付かなかったが、この怪物はなかなかに混沌的で根源的な恐怖を感じる姿をしていた。
そして彼は咄嗟に逃げようとするが、目の端に倒れている男性が見え踏みとどまる。
(こ、怖い!出来れば今すぐにでも逃げたいと思ってしまう程に……!でもここで逃げたらあそこの人は……それに、僕はあの伝説の魔術師みたいになるんだ。こんな化け物相手でも逃げちゃ……逃げちゃダメだ!)
彼は走り出した!己の恐怖と迷いを振り切るように!
それはただの無謀な行動だったかもしれない。蛮勇に身を任せる愚かな行為だったかもしれない。だが彼は、今までの凡人でしかなかった彼は今この瞬間、凡人ではなくなった。
彼はドロドロした不定形の化け物に、渾身のタックルをお見舞いした。魔術師のする事じゃないという点は置いておこう。
「くらえぇぇえ!!」
そしてタックルは……相手の体に大きな衝撃を伝えた。
化け物の体は不定形でドロドロしていただけあり、衝撃によって怪物の体が反対側からプシャァァァ!!と勢い良く飛沫が飛び散った。
そのまま形を保てなくなった怪物は、地面のシミになって消えた。
彼は体の火照りが治まるまでその場で立ち尽くしてしまった。やがて火照りが治まると足がブルブル震え始め、腰が抜けて尻餅をつく。
い、今のは一体……なんだったんだ。
彼はつい先程の事を追想する。
あんな化け物は見たことがない。そもそもアレは生き物だったのだろうか。僕は夢でも見ていたんじゃ……でもあの男性は襲われてたし夢じゃない……っ!?
そこまでボーッと頭が混乱で埋め尽くされていたが、ふと思い出した。
そうだ!後ろに怪我人がいるのに僕はなにを…!すぐ介抱しないと!
そう決断し、後ろで倒れる男性を抱えて彼は、謎の隠し洞窟を抜け出した。
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