暴走ラジオ~滅びの電波
ある夏休み、少年は父の実家に一家で帰省していた日の事だった。
実家において、少年は物置が大好きで、普段は見た事のない物が色々あるからだ。
そんな中、少年は年代物のラジオを見つけ、居間に持って来た。
ラジオはいかにも昭和の雰囲気そのままだった。
少年がラジオのプラグをコンセントに差し込み、ラジオの電源を入れると……
『堪え難きを堪え、忍び難きを忍び……、たえがたきをたえ、しのびがたきをしのび……、タエガタキヲタエ、シノビガタキヲシノビ……、くぁwせdrftgyふじこlp;@:「」……』
ラジオは一つの言葉を延々と繰り返すと同時に、周囲の全ての電子機器が火花を散らしながら煙を上げていき、壊れてしまった。
あらゆる電子機器が使えなくなってしまった事に一家は動揺した。
しかし、それは一家だけではなかった。
世界中の電子機器の配線が焼けて壊れてしまったのだ。
ラジオのせいだと踏んだ少年はラジオの電源を切ろうとしたが、ラジオの電源のつまみの手応えがなく、切れる様子もなかった。
ラジオは暴走したのだ。
エアコンが使えず、室温はひたすら上がるばかりだ。
そして、夜になる筈が太陽はまだ昇ったままで、温度は全く下がる様子もなく、一家はうちわであおいで涼をとろうとしたが、熱風だったため、水を飲もうとするも、お湯になっており、涼どころではなく、ラジオは相変わらず鳴り続けた。
間もなく一家は熱中症で倒れてしまった。
しかし、それは一家だけではなく、世界中の人々が熱中症で倒れ、一夜にして滅んでいったのだった。
それから百年後、周囲のみならず世界中が植物に侵食されていく中、暴走ラジオはひたすら同じ言葉を発し続けており、皮肉な事に、世界中の電子機器を破壊したラジオの電波は世界中の植物の生育を現在も促進しているのだった。
『堪え難きを堪え、忍び難きを忍び……、たえがたきをたえ、しのびがたきをしのび……、タエガタキヲタエ、シノビガタキヲシノビ……、くぁwせdrftgyふじこlp;@:「」……』
< 終 >