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ロンギオスの炎-Ⅱ 中原燃ゆ  作者: たかさん
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第四章 蒼き炎の旗(4)

×  ×  ×  ×


 オービタス山地に立った蒼き炎の旗と、将軍ストラゴスの名声を頼り、多くの兵士と、戦いに故郷を追われた人々が集まってきた。 兵士の数は騎馬の者百、(かち)の者二百を数えた。その中には戦場で拾った様々な武器を手にした者達までが混ざっていた。

 ディアスは老人と女子供をまだ戦えぬストラゴスとフェイに任せ、それらの軍とも言えない兵を率いファルスへと向かった。

 しかしファルスは既に陥ち、遠目にもその町は黒々とした煙に包まれていた。

 そんな中、最後までファルスに残ったフィルリアの騎馬軍団が、女王ミランダの行方の情報と共にディアスの軍に参加した。


 ザルタニアの兵二千、それに後から着いたロンダニアの兵同じく二千。

 オルランドの谷の砦は毎日の猛攻に晒されていた。

 ヒルタント一派の兵の脱走も相次ぎ、砦を守る兵約千、それも日ごとに少なくなっていく。

 密かに送り出したレジュアスへの救援を求める使者も、この重囲の中を突破出来たかどうか・・・

 ミランダに毎日の戦況を報告するギルサスの口調も、日毎に暗くなっていった。


「砦の密使を捕らえました。」

 ギルサスが放った七人の密使全てがロンダニアの幕舎に曳き据えられた。

 「いくら責めても口を割りません。」

 「なあに・・奴等も策に窮したと言うことだ。

 ザルタニアの将軍ルモーを呼べ。

 今晩から総攻撃に移る。」

 ロンダニア侯スクルフの命を受け、使者がザルタニアの陣へと急いだ。

夜を徹した攻撃が始まる。

 真っ黒だった空が群青色に変わり、朝焼けに染まる頃、

 「ここまでか・・・」

 ギルサスは死を覚悟した。

 後はミランダをどう落ち延びさせるか、それだけがギルサスに残された課題だった。

 敵の視察を兼ね、考えを纏めるためギルサスは城壁に登った。

 その時だった。

 昇る朝日を背に、谷の東の丘に一本の旗が立った。

 ギルサスは金色(こんじき)に光る眩い太陽を透かし、眼を細めてその旗を見た。

旗が逆落としに丘を駆け下る。

 その旗は・・・・

 蒼き炎の旗。

 

「止まるな。

 止まった時が死ぬ時だ。」

 ディアスは声をからし騎馬部隊を叱咤していた。

 左手に蒼き炎の紋章を染め抜いた旗を掲げ、右手の剣で右を切り、左を薙ぎ払った。ザルタニアの方形陣を突き抜け、ロンダニア軍との間隙に出る。

 一本の道のように砦に続く隙間を駆け抜ける。

 両側からの矢が嵐のように襲いかかるのをものともせず、砦の門を衝く敵兵に戦いを挑む。

 ザルタニアとロンダニアの兵の放った弓はお互いをも傷付けあい、両軍の間に微妙な空気が流れ出す。

 「ティルト右を頼む。」

 ディアスは城門の前で反転し、兵を二つに分けた。

 ティルトは半分の騎馬兵を引き連れ、再びザルタニアの軍の中へ、ディアスは無傷のロンダニアの軍の中へ駆け入った。

 それを追って城門の前の敵兵が動き、隙が出来る。

 「時は今だ。あの者達を討たすな。」

 ギルサスの大声が砦に響く。

 門扉が開け放たれ、砦に残った兵が撃って出る。

 背中を衝かれた敵軍が乱れる。それを振り返りディアスが微笑みを漏らした。

 しかし、敵中を駆けるディアスの剣は鋸のようにささくれ立ち、折れるのを待つばかりとなっていた。

 馬の息も上がる。

 「くそっ。」

 ディアスが胸の内で舌打ちをする。

 その目の端に突然現れた騎馬隊が敵を蹴散らすのが見えた。

 その先頭を疾風の如く駆ける馬は・・・

「イシューッ」

 「ディアース、これを。」

 イシューが投げてよこしたのはオルハリコンの剣。

ディアスの軍と交差するように、イシューの軍は一文字にザルタニアの陣を目指す。

丘の上からその様子を見ていたローコッドが指示を発する。

 狼狽する敵の本陣を(かち)の兵が襲う。

 ザルタニアとロンダニアの本陣はローコッドが操る炎の魔術に焼かれ、民衆兵の武器に追われた。

 そこへ、危急を聞きつけロニアスの視察から急ぎ戻ったハーディの騎馬隊が南から突き上げた。

 敵軍が散り散りに乱れる。

 スクルフが砦に背を向けた。

 それが壊走の始まりだった。

 日が真南を過ぎた頃、ディアスの軍とイシューの軍は、フィルリアの兵と共に勝利の雄叫びを上げていた。


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