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ロンギオスの炎-Ⅱ 中原燃ゆ  作者: たかさん
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第三章 それぞれの道(4)

×  ×  ×  ×


月の谷を後にしたディアス達四人は、道々情報を集めながらフィルリア王国の首都ファルスを訪れた。

 ここまでに得た情報は、月の谷で聞いたものと大して変わりはなかった。

 そしてこの都に住む人々は、平和を謳歌し自由にあふれていた。そんな雑多な人の間を縫い。ディアス達四人は城の大門の前に立った。

 門扉を叩き、城内への案内を請う。

 めんどくさそうな顔をして一人の衛兵が現れ、城門の横の小さな扉から城の中へ誘う。狭く粗末な部屋で来意を告げ、次の案内を待つ。しかし何時まで待っても、そこから先への案内はなかった。

 「おかしいな・・・昔この城を訪れた時はここの門は民衆に開かれ、誰もが物売りに、陳情にと賑わっていたが・・・今は・・・」

 ローコッドの声を遮るように、部屋の扉が軋む音を発て開いた。

 案内かと皆がそれを振り向く。

 しかし、大層な身なりをした男がそこに立ち、ここまで案内をした門番に紙包みを渡した。門番は頭を下げ、奥へと急いだ。

 暫くするとまた扉が開き、長く待ったディアス達ではなく、その男が呼ばれて行った。

 それから小一時間も待ったであろうか、再び扉が開き、先ほどの男が帰ってきた。

 男はここまで案内してきた衛兵に、また小さな紙包みを渡した。

 ローコッドがその男に声を掛ける。

 「失礼だが、ちょっと宜しいか。」

 「おや、あなた方は・・・まだここでお待ちか・・・」

 「なぜ貴方が先に・・・」

 男は金入れをジャラジャラと振り、

 「こういう物をご準備ですか。」

 と、逆にローコッドに尋ねた。

 「この国はそんな国ではなかったはず。」

 「それは昔のことですよ。今では・・・

 おっと、ここで立ち話はまずい。

 旅のお方とお見受けいたします。宜しければ私どもの宿へ如何ですか。そこで委細お話しいたしましょう。」

 ディアス達は誘われるままその男の後に従った。

 仕事が一息ついたのか、宿の主人がディアス達の部屋へ現れた。

 「さてさて、仕事も一区切りつきました。宜しければ昼の話しの続きを・・・」

 ローコッドがそっと紙包みを差し出した。

 「お止しください。私はそう言うつもりは毛頭ございませんよ。

 それよりも今後、この宿を懇意にしていただけばと思いまして・・・その方が私にとっては有難いことでございます。」

 「そうか済まぬ。それでは言葉に甘えて・・・」

 「ところでお客様方はどちらから・・・いえ、お気に障ったなら謝ります。お答えにならずとも・・・」

 ティルトとフェイの表情が僅かに動いたのに気付き、宿の主は話を逸らそうとした。

 「気にする必要はない。我々はロニアスからやって来た。」

 ディアスがそう答えた。

 こういう時にはロニアスは隠れ蓑になる、

 「それはまあ・・・

 あの村は閉鎖的で世の中のことにはとんと・・・おや失礼なことを・・・」

 宿の主は値踏みするように四人に目を遣り、失意に僅かな溜息をついた。

 それに気付いたローコッドが宿の主人に声を掛けた。

 「ま、そんなに落胆しなさるな。我が村は確かにご主人の言うとおり・・・この頭に巻いたターバンも彼の村の風習による物。全ての者を同じ考えで統一しようと言ってな。しかし、これはこれでけっこう都合がよい。暑さ寒さにな。」

 笑い声を上げ、ローコッドがティルトとフェイのエルフ族独特の耳を隠すターバンを正当化した。

 「我々四人はそんな村に嫌気がさし、逐電した。

 これからこの国で仕官し名をあげようという者。此方の方こそ宜しく頼む。」

 「そうでしたか・・仕官を求めて・・・」

 「そう。

 しかし、これでは仕官の道を閉ざされたも同じ。いつからこの国は変わったのかな。」

 「ミランダ様が女王の地位に着いてからでございます。

 僅か十二歳でミランダ様は女王様の座に着かれました。が、当然国政のことは何も解らず、乳母の夫であり、国政学の権威というふれこみのヒルタントが執政とし国政を見始めました。

 ヒルタントは国政に力を入れるよりも先に自分の息の掛かった者に王宮内の要職を与え、少しずつ政治を私物化していったのです。

 今ではミランダ女王の側は全てヒルタントの息の掛かった者で占められ、王宮内はヒルタントの取り巻きだけで占められており、汚職に馴れております。

 ですから、王宮にご用の際は、今日の私のように、まず金。それが一番早うございます。」

 「王宮を正そうという者は居ないのか。」

 「居るには居ますがそう言う者達は全て玉座から遠ざけられております。

 今晩もそう言う不平を持った将軍の中のお二方が私の店へお見えになっております。」

 「それはどなたかな。」

 「ギルサス様とハーディ様。」

 「宜しければその方々に取りなしてもらえまいか。」

 「仕官をお求めになるのであれば、お止しになったが宜しゅうございますよ。あのお二方にお近づきになっても、ヒルタントの取り巻き連中に睨まれるだけでございます。」

 「いや、彼らが何を考えているか探り、それを餌に、その取り巻き連中に取り入る。金もだが、その方が確かだとは思わないか。」

 「なるほど・・解りました。それではお二方にあなた方を紹介いたしましょう。

 暫くお待ちくださいませ。」

 「頼む」

 と言ってローコッドは先ほどの金を亭主に握らせた。


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