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幸福の灯(しあわせのあかり)

作者: 龍尾翼

昔、書いたショート&ショートから・・・

 年の瀬も迫る中、今年もこの時期が来た。

 天使たちは、神様に与えられた『幸福の灯』をともすマッチのあかりを下界すべての家の窓辺に届けていた。

 窓辺に近づいた天使は、自らの手でそのマッチの火をともし、あかりをその家の窓辺に残していった。天使たちは、そのあかりの向こうに微笑む人間たちの笑顔が好きだった。

 彼女もまたそんな天使の一人だった。彼女は踊るように、少しははやる気持ちを抑えつつも、次々と窓辺に明かりをともして行った。

 そうしていって、マッチは最後の1本になった。それは山奥に、ひっそりと一人で暮らす、木こりの青年のためのものだった。

 彼女は軽いステップで窓辺に降り立つと、最後のマッチを取り出し火をともした。

 その時だった、マッチはポキリと折れてしまった。

 慌てた彼女は、一生懸命に火をともそうとしたが折れてしまったマッチは、決して火がつくことはなかった。

困ってしまった彼女はどうしようかと一生懸命考えた。

 来年になれば、新たに別の天使が下界に降りてきて、彼に『幸福の灯』をともしてくれるかもしれない。それまで自分が彼を、不幸から守ってあげれば良いんだ。

 彼女は次の天使が訪れるまで、彼を守ると固く天に誓った。

 それから彼女は、彼が不幸から避けるようにしたり、彼に降りかかる不幸を払い除けたりして、彼に不幸が訪れないようにしていった。そう、決して見つからない様に、決して気付かれないように・・・

こうして彼をそばで見守っていた彼女は、真面目に働く彼の姿に惹かれていくものが有った。しかし、決して彼は彼女の事を見つける事はできないし、見る事はできなかった。

 そうして、今年もその時期が来た。

 その年の瀬も彼は、忙しく真面目に働いていた。この仕事が終わり、彼が家に帰れば、新たな天使が降りてきて彼に幸福を届けてくれる。

 そう考えながら彼女は彼を守ってきた疲れと、もうすこしでと言うことからウトウトとしていた。

 その時だった、彼が大きな事故に巻き込まれ、立ち上がることができなくなってしまった。

 彼女は大いに悲しんだ。自分の油断がなければ、彼を不幸な目に合わなくて済んだのに、目を離さなければ、彼をこんな目に合わせずに済んだのにと、彼のそばで大きく泣いた。

 その時、奇跡は起きた。彼女のながした涙が彼の傷を癒やし、彼が目を覚ました。

 そして泣きじゃくる彼女の方に目を向けて、彼はこう言った。

 「君だったんだね。今年一年、誰かにずっと見守られていた気がしたんだ・・・」

 彼女の悲しみの涙が、喜びの涙へと変わった。

 この時、二人のいる部屋の窓辺に、天使がそっと『幸福の灯』をともして行きました。


-fin-



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