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軌跡を辿る

俺の姿をした何かは、神の死体を食い散らかし、核すら噛み砕いた。本来悪魔であれば魔核というものが体内に存在する。魔核は魔力の源であり、悪魔を構成している結晶である。


66年前の悪魔の進行の時に初めて発見された地球外物質はこの魔核であった。そして今尚、対悪魔武器の原料とされている。だからハンターはより強い魔物を倒し、その魔核を手にいれることで更に強い武器を得ることができるのだ。


しかし今回は相手が『神』と名乗っていただけに、その核らしき物質が魔核と同様の物なのかは分からない。








【異能名『グラ』を獲得しました】

【この肉体への継承に成功しました】








写し出された映像の中からそんな【声】が聞こえた。ただの無機質な通知音。




『グラ』




俺の姿をしたそれがそう発すると、ぐちゃぐちゃに食い千切られ元の型を留めていない神の骸が "ジュ"と音を立てて無数の歯だけを残し一瞬にして床に沈んでいった。


そのとき


俺であるはずの物体が此方に振り向き、一瞬だけ目が合う。


俺はその瞳の奥を………………………





















「はぁ!!」




「…………大丈夫………お兄ちゃん?」


「藍!」


「大分うなされてたよ………」

綾小路藍、俺の3つ下の妹だ。俺と違い文武両道の自慢の妹だ。

そして妹が最近ハンターになりたいと言っていて、その原因が俺であるというからたちが悪い。以前やめておけと言ったら、お兄ちゃんのせいだからと言われてしまった。そんなこと言われたら何も言い返せないじゃないか。


「さっき看護士さんから聞いたけど明後日退院なんだってね!今度帰ってきたときダンジョンの話聞かせてね!ここに擦りリンゴとお茶置いておくから食べられそうだったら食べてね!」


そう言って妹が帰っていった。それから一時間ほど経った時本日2組目の来訪者がドアを叩く。しかし入室してきた男女共に特に面識はなく、どこかで会っているのでは、と記憶を遡る


「こんにちは、私井上真澄の母です。こんな急に押しかける形になってしまい申し訳ないです。」


「私は真澄の父です。いつも家では貴方の話ばかりしていたものですから、生存者リストに貴方の名前を見た時もしかしてと思いまして。少しでも構いません、真澄とのことをお話ししていただけませんか……」


「分かりました」


俺は彼女との思い出を全て話した。初めて出会った時のことから、最近ダンジョン仲間達とキャンプにいったときのことまで、彼女との時間を思い出すように………


「そうですか…………あの娘は……いろんな人と時を共にしてきたんですね……」


「本当に……ありがとうございます。これで娘を………真澄を………安心して送り出してやれそうです………」


彼女の両親は涙を流しながら俺にそう言った。俺は彼女と知り合ってまだ3年あまりしか経っていないし、俺には両親が感じた悲しみや虚無感なんてとても理解しきれないだろう。


ただ過ごしてきた度合いは違くても、俺と彼女は密度の濃い日々を過ごしたはずだ。互いに手を取り合いダンジョンで助け合ってきた。柔い体躯でありながら魔法士として俺たちを支えてくれた、時に励ましてくれた、そんな彼女に俺は憧れすら抱いていた。だからこそ俺は両親の目を真正面から見てこう言えた。



「彼女は立派な魔法士であったと、誇り高き人間であったと、この先俺が証明してみせます」






俺は肉体的外傷がなかったため、精神的リハビリもそこそこに3日間で退院した。あの後再びハンター統括支部の方々が事情を聞きに来たが、自分でも飲み込みきれていないし、尚且つ他人に話してもまず理解されないだろうと考え、暴食の神のことは伏せた上で事細かに話した。


俺だけ生き残ったことについては自分だけボス戦に行かず扉まえで待機していたと話した。少々厳しい言い訳だがハンター統括支部の方々もそれくらいじゃないとあの惨事からE級ハンターが一人で生き延びるのは無理だと思っていたらしくやけにすんなりして帰っていった。


後日、今回のダンジョンは悲惨な事件として大々的にメディアで報道された。



それと俺は病院にいる間にある変化に気がついた。



まず一つ



筋肉がついた。入院中筋トレ等した覚えはなくただ寝てただけだ。それなのに何故かがっしりした気がする。




そしてもう一つは








心臓が鼓動していないのだ。いや、違うな。正確に言うと胸の右側が鼓動している。俺はこれに気づいたときようやくあの時のことは現実だったのだと確信した。



俺はハンターを続けていくことにした。こんなことがあったなら本来やめるべきなのだろう。しかし彼女の死。そしておれ自身の変化についての謎が分かるまで俺はハンターをやめるつもりはない











傑は彼女に対して好意を抱いていたわけではありません。それは憧れであり道しるべでした。しかし彼女が傑に好意を抱いていたのかは彼女にしか分かりません

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