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その8:七つ目のヨコのカギ
『今日は、時間の経ち方が、遅いような気がする』誰かが残して行った新聞のクロスワードパズルを解きながら彼女は思った。
(何故、前の人は、タテのカギしか解いていないのかしら?)
『きっと、一人だからね』と、柄にもないセンチメンタルな気分に浸るつもりはないし、ヘンリーと一緒なら一緒で、疎ましかったり寂しくなったりしていたのだろう。
(七つ目のヨコのカギが、分かっているハズなのに、出て来てくれない。)
パッパラ、パッパラ。パッパラ、パッパラ。
パッパラ、パッパラ。パッパラ、パッパラ。――
前方のドアが開き、七人の姉妹たちが戻って来たが、先ほどとは打って変わって歌声も歩き方もおとなしくなっている。車掌にでも叱られたのだろうか?――一人、二人……六人目は男の子だったのね。
『間違えたのは、きっと、髪型のせいね』と、彼女は考えた。
男の子がこちらを振り返り彼女と目が合った。アイスか何かだろうか?口のまわりが薄い紫色で汚れていた。




