初陣!闇夜を照らす正義の光(その3)
「うわぁぁぁんん…こ、こ怖かったよぉ。」
それが消え去った後、蓮さんの叫び声でオレは現実の世界に引き戻された。
「もう大丈夫ですよ。終わりましたから。」
10歳くらい年の離れた二人だが、端から見ているとどちらが年上か解らなくなるほど佐伯さんは落ち着き払っていた。というよりもこの場合は蓮さんの方に問題ありか?
「ねえねえ。毎回こんな仕事やらなくちゃいけないのお?いくら給料よくてもちょっと恐すぎカモ…。」
「今回はまだ何もしてもらっていないような気がするんですが…あなたも選ばれた戦士なんですからきっとやればできるはずです。」
「うぅ〜ん。自信ないけど頑張ってみる。」
母親に叱られた小学生のような覇気のない返事に、佐伯さんも思わずやれやれといった感じで小さなため息を漏らしていた。
「どうやら父の予言通りに事は進んでいるようです。だとすると今後も今回のような敵と私達は戦っていくことになります。どうぞ今後もご協力の程を。」
あんな現実離れした出来事が起きて間もなにも関わらず、彼女は動揺一つ見せない。少なくともオレにはそう見えた。
「ねぇ。燈夜君はさっきの恐くなかったの?」
横にいる蓮さんが原付を押しながらそう話し掛けてきた。気持ちが落ち着くまで一人にしないで欲しいという彼女の願いを渋々受け入れ、近くのコンビニまで一緒に付いていくことになったのだ。
「恐いというよりビックリしましたけど…ほとんど勢いだったんで正直あまり何も覚えてません。」
「勢いでもすごいよ。私なんてダメダメ。あれじゃ給料貰えないよね。」
こんな時でもお金への執着は抜けていないらしい。
「次はなんとかなりますよ。オレはけっこう燃えてきました!最初はビックリしましたけどだんだんヒーローとして実感が湧いてきたというか…この歳になってダサいですけど憧れだったんです、ヒーローになるの。」
「ダサくなんてないよ。いくつになっても夢を持つのは素敵なことだもん。次もまた恐いのが出てきたら私を助けてくれる?」
そう言って上目遣いでオレを見つめる蓮さんにドキッとした。今まで忘れてしまっていたけれど蓮さんは見た目だけで評価すればかなりの美人。そんな女性にこんな近距離で見つめられたことなんてオレの人生でもちろん一度もない。
「もちろん!オレが蓮さんを守ってみせますよ!」
「わぁい。じゃあ次も期待しちゃうから。」
勢い余って恥ずかしい台詞を吐いてしまったオレに蓮さんは普段のほんわりした口調でそう返すのだった。