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初陣!闇夜を照らす正義の光(その1)

説明会から3日が経ったその日、オレはお風呂から上がり布団にくるまっていた。春が近いとはいえ、夜はまだ肌寒い。


「もしもし、三島さんですか?私、説明会でお会いした佐伯ですが。」

そんな電話が掛かってきたのは午後11時を少し過ぎた頃である。

「あ、はいそうですが…何か?」

「今日これからアルバイトに来ていただけないかしら?時間はこの後深夜0時20分。どうです?都合はつきますか?」

「アルバイトってサイエンジャーでしたっけ?」

あまり信じていなかったこともあり、この3日間ですっかり内容を忘れかけていたオレはなんとかその部分だけを思い出して問い返した。

「勿論そうです。電話で詳しく説明している暇はありませんのでもし都合がつくようなら0時丁度に今から私の言う所まで来て下さい。」

そう言って彼女が指定したのはオレの家からそう遠くない市立図書館だった。電話が切れると布団から抜け出したオレは、眠りに落ちかけていた脳を必死にフル回転させる。こんな時間にバイトとはどういうことだろう?彼女は次の機会に全てが分かると言っていたが…本当にヤバイ仕事なんじゃないか?(その時は麻薬の運び屋のようなものが瞬時に浮かんだ)あれこれ思い浮かべて考えが一周する頃には家を出て自転車にまたがっていた。思考のスピードより速く、オレの体は好奇心に導かれて目的地を目指した。


思ったよりもスピードが出ていたらしい。時計を見ると11時45分。少し時間があるのであたたかい飲み物でも買おうと自販機を探していると、一台の原付が図書館の前に止まった。それに乗っていた人物はキーを抜くとこちらへと一直線に向かって来る。

「あ〜っ!!やっぱりこの前の説明会にいた人だぁ!ねぇねぇ、私の事覚えてる?」

そう言って首をかしげた顔には見覚えがあった。

「えーっと、確か高井田さん?」

「当たり♪でも高井田さんはなし。蓮て呼んでくれていいから。名字だと堅苦しいじゃない。それで君は…ごめん、名前忘れちゃった。」

説明会の時も感じたことだが、どうやらこの人には場の空気といったものは関係ないらしい。

「オレは三島燈夜です。」

「そうそう、燈夜くんね。燈夜君も電話掛かってきたの?」

「ええ、まあ。ここに来たってことは高井田さんはあの話信じてるんですか?」

「こらっ!蓮て呼んでって言ったじゃなぁい。次名字で呼んだら罰ゲームだからね。」

「はぁ…それで蓮さんはこの前の話どう思ってるんですか?」

素直に彼女の指示に従ったのは罰ゲームが恐いからではない。このままでは話が先に進まない。そう直感的に感じたからである。

「あのヒーローになるとかどうとかって話?うーん、どうだろ。そんなに考えてなかったかも。私はバイト代さえいただければそれでいいの。このバイトかなりの高収入だよね。」

どうやら本気でバイト内容については何も考えていないらしい。自分もかなり行き当たりばったりでここまで来たと思っていたが、さらにその上がいたようだ。


「今日集まったのは三人だけのようですね。」

声のした方を振り返るとそこには佐伯さんがいた。時計を見ると0時丁度。蓮さんと話しているうちに約束の時間になっていたようだ。

「あと20分しか時間がないわ。要点だけ説明するのでしっかりと頭にたたき込んでくださいね。」

そう言うと彼女は肩に掛けていた革のカバンから何やらキラキラと輝く物体を取り出した。それは説明会の時、巻物と一緒に見せたあのアクセサリーだった。

「高井田さんはこれを、三島さんはこれを着けて下さい。」

佐伯さんは取り出したアクセサリーの中からピンクの小さな石の付いたネックレスを蓮さんに、青い宝石(種類はよくわからないが)の付いた指輪をオレに渡した。

「あと20分、正確には18分23秒後に世界の脅威となるものがこの図書館の裏に現れます。その時、私達サイエンジャーが世界の平和を守るのです。悪と対峙した時、今お渡ししたアクセサリーを身に着ければ正義の力を得られるはずです。ここまでで質問は?」

つっこみどころが多すぎて何を質問していいやわからず唸るオレを差しおいて、蓮さんの左手がスッと挙がった。

「はい。質問。今日のお給料はいくらですかぁ。」

本当にこの人はお金が貰えれば何でもいいのか…

「そうですね。本来は5人でする仕事を3人でするわけですからその分取り分は多くなります。成功したあかつきには5万円でいかがでしょう?」

「ホントにぃ!?来てよかったよぉ。見たいDVDあったから来ようかどうか迷ってたんだぁ。そんなに貰えるなら本気出しちゃうから任せといて!」

「ええ。頼りにしています。」

何かオレのいないところでスムーズに話が進んでいるようだ。仕事内容を自分ひとり難しく考え過ぎているのか?

いや、そんなはずはない。そもそも、こんな指輪で変身なんてできるのか?それに彼女の言う「世界の脅威」なんてものが現れるとも思えない。そうだ、まず一つずつ質問を…

「次の説明に入ります。変身した後は各自に武器が装備された状態になっているはずです。後はそれで敵の殲滅を目指すのみ。身体能力も普段より数段アップするのでそれなりに戦えるはずなのですが…私も実践は今回が初めてなので実際どうなるかはわかりません。父の残した文献から解ったことは以上です。」

オレの質問する間を与えず彼女はそこまで一気に説明すると、オレ達に背を向け図書館の裏へと歩き出した。

「さあ、参りましょう。」

その時の小柄な彼女の後ろ姿は、何故かとても凛々しく感じられた。

















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