手合わせ
昨夜の風呂場での一件で魔力を纏うイメージは大体できた
後は反復練習あるのみだな
俺は朝早くに稽古場へ向かう
そういえば最近はセシアが近くにいないな
そんなことを考えながら稽古場へ入ると
「ふん! ふん! ふん!」
あれはセシアだ
鉄の剣を何度も同じ動作をしながら振り続けている
いつも冷静で表情一つ変えない彼女が汗を流しながら集中している
俺はその姿を稽古場の入り口で見ていると
「ふん!...おはようございます」
「あぁおはよう」
俺の存在に気づいていたようだ
「セシアの稽古姿ははじめて見た」
「...そうですか」
「ザックさんはまだ来てないのか?」
「...そのようですね」
セシアはいつものように鋭い目つきで俺を睨んでくる
「...リュート様」
「なんだ?」
「よければ剣術での手合わせをお願いしたいのですが」
剣は使ったことがないがこれもいい経験だろ
「わかった、剣術は初めてだから相手になるかわからないが」
「...それではこの剣を」
セシアは俺に鉄の剣を渡してきた
「...刃は切れないよう削ってありますが叩き付けられればそれなりに痛みはあります」
「なるほど、真剣と同じ重みで訓練することで実践でも剣が手になじむのか」
「...突きの方は刺さるので上手くよけてください」
「わかった」
セシアから剣を受け取って説明を受けた後一定の距離をとって剣を構える
「...準備はいいですか」
「あぁいつでも」
「...それでは...行きます」
セシアがその言葉と同時に姿を消した
そう思った刹那俺の目の前にセシアが剣を振り上げながら現れる
「うお!!」
ガキン!!とセシアの剣を受け止めて鍔迫り合いになる
「...目はいいようですね」
「くっ!涼しい顔して凄い力だな」
セシアは身長も俺より低く見た感じ体つきも細いのにあり得ないほどの力で俺を押してくる
「...」
セシアは後ろに後退して体制を立て直す
「ふぅーーー」
大きく息を吐きながら次は剣を下ろしたままゆっくりと歩いてくる
それはまるで脱力しているようだった
「...!」
セシアの目が大きく開くと同時に剣を振り上げながら剣撃を繰り出す
カン カン と何度も連続して剣撃をして俺は何とか受け止めるが
衝撃が剣を伝わってくる
「くっ!なんだこの重さは!」
「...」
セシアは顔色変えることなく剣を振るう
そして俺の手が衝撃に耐えられなくなり
キン!! と手から離れた剣が宙を舞った
「はぁはぁ...勝負ありですね」
セシアは肩で息を上げながら俺に剣先を向ける
「...それはどうかな、チェーンバインド!!」
「...魔術!?」
セシアは自分に魔術をかけられると思い後ろへ後退した
しかし俺はセシアに魔術をかけたわけじゃない
魔力でできた鎖は俺の手から延びて宙に飛んでいった剣に絡まってそれを手元に引き寄せた
それを俺はキャッチしてまた剣を構えた
「まだ剣は離れてないぜ」
「...なるほど」
俺は剣を手から離れないようにチェーンバインドで巻きつけてある
これである程度の衝撃でなら離す事はないだろう
「...そちらが魔術を使うなら」
セシアは一定の距離をとりながらゆっくりと俺を中心にゆっくりと歩く
ゆっくりと歩いているはずなのにセシアの背後からもう一人のセシアの姿が見える
一歩二歩と歩くたびにセシアの姿が増えていく
まるで分身しているようだった
「...高等幻影魔術」
セシアが剣を突きの構えにすると分身たちも同じ構えをとる
「...すごいな」
正直この対処はまだわからないから俺は昨日習った防御魔術で全身に魔力を纏う
「...幻影剣術...壱の型!!!」
セシアが俺目掛けて高速で近づいて剣を突き立てる
「そこまでです」
「...」
俺の目の前にロバートが現れた
それと同時にセシアは剣を止める
「...セシア、なにがあってそのような行動に出たかはわからないが今は剣を納めなさい」
「...わかりました」
ロバートに言われたとおりにセシアは剣を鞘に戻した
「リュート様セシアとの稽古はここまでです、割って入ったことをお許しください」
「あぁ、あのままだと多分俺も只じゃすまなかったからな」
「...セシアには私から言って聞かせておきます」
「いや、いい勉強になったよ セシアも多分本気ではなかったと思うし」
「...わかりました、それではザックはそろそろ来ると思いますのでしばらくここでお待ちください」
「わかった、セシア」
「...なんでしょうか」
「今日はありがとう」
「...いえ」
その後はセシアとロバートは稽古場から出て行ってしまった
俺はザックさんが来るまでセシアが俺に向けてくる何かを考えていた
敵意に近いようなそれにしては殺気は感じられない
あまり考えすぎるのもよくないと思い俺は魔力を纏う練習をしていたらザックさんが稽古場へ来た
「おう坊ちゃん!遅れてすまねぇ」
「いえ大丈夫ですよ」
「俺が来ないうちにウォーミングアップは終了してるみたいだな」
さっきのセシアとの手合わせで俺の体は大分温まっていた
「いつでも特訓は開始できます」
「おう、そんじゃ昨日の続きで魔力攻撃の特訓やるか!」
「はい!」
腕に魔力を纏うイメージをして俺は昨日置かれていた岩の前に立つ
「こりゃすげぇ、坊ちゃんたった1日で魔力の纏い方覚えたのか?」
「まぁいろいろとあって今は片腕ならできます」
「そんじゃ昨日の要領でブチかましてみろ」
拳に魔力を溜めて構える
体に纏う魔力と拳から放つ魔力 同時に...同時に!!
俺は岩へ向けて拳を放った
バコン!! 岩が一部弾けた
しかし昨日のように前方の方へは上手く拡散できず爆発するような形で終わった
自分の拳へ目を向けると傷は付いていない
「体への負荷は軽減できているが攻撃と同時にするにはまだまだ経験不足ですな」
「難しいですね」
「それをできるようにするための特訓だ さぁどんどん打っていけ!」
しばらくは同じような拳を放つ練習をしていた
岩も3分の1は削れて無くなっていた、拳への傷は少しあるぐらいだ
そろそろベクターさんの指導時間になりそうな時だった
ギャリギャリギャリ!!!
「おお!こいつはすげー」
「い 今のは...」
俺は岩に攻撃を放った時その岩の表面が渦を巻いて亀裂が入った
螺旋を描いて攻撃跡が中央にいくにつれて奥へと削れていた
「坊ちゃんが腕に魔力を纏うイメージをそのまま攻撃にのせた結果じゃないか」
「なるほど」
俺は魔力を纏う時管が巻きつくようなイメージでやっている
その管が巻きつくというのが攻撃に反映された時螺旋状になったということか
「俺も長いこと戦ってきたがそんな攻撃は見たことねーな」
「この魔力の放ち方は相手に有効なんですか?」
「最初に伝わる衝撃が周りへ円を描きながら分散する、しかし一番威力が高い部分は中央へと向かい貫通しようと突き進む」
ザックさんは独り言のようにブツブツ呟く
「俺が教えた拡散と貫通の混合型の攻撃ってところだな」
「混合型ですか」
「だけど拡散特化の攻撃よりは拡散力は劣り 貫通攻撃よりも直線的ではないのは確かだな」
「中途半端ってことですか...」
どっちつかずの攻撃を覚えても役に立つのだろうか?
「いや、鍛え方によっては恐ろしい破壊力を生むかもしれないから練習するべきだ」
ザックさんはあまり見せない真剣な眼差しを向けて言い放つ
「今日はここまで!また明日以降その攻撃と俺が教えた攻撃の練習をしようか」
「はい!」
ザックさんはベクターさんと入れ替わるようにして稽古場を退場した
ベクターさんの横にはエドも一緒にいた
エドは俺に近づき魔力供給を行った
「体術訓練お疲れ様リュート」
「あぁありがとう」
魔力供給が終わるとベクターさんが近づいてきて
「リュート様、今日は傷も少なく魔力の減りも少ないように見えますね」
「そうですか?」
「えぇ、上手く魔力を纏う方法でも見つかりましたか?」
「自分なりにですがイメージはできるようになったと思います」
「それでは少し見せて頂いてもよいでしょうか?」
俺はベクターさんにお願いされ片腕に魔力を纏う
「なるほど、魔力を体に巻きつけるようにして循環させる...考えましたね」
「ロールって子のアドバイスのおかげでできたんですよ」
「そうでしたか、しかしまだ片腕だけでしょうか?」
「そうですね」
「それでは今日はエードとリュート様魔力循環の練習から始めましょう」
ベクターさんの指示通りにエドと一緒に座禅を組んで魔力を体に纏う練習を始めた
攻撃と同時にするときとは違い一つのことに意識を集中するから攻撃よりは楽だろう
意識を集中...まずは腕に...次にもう片方の腕に...
両腕に管を巻きつけてそこに魔力を流すイメージ
両腕に魔力を纏う事に成功はしたが片腕だけの時より纏う魔力の量が薄い
ベクターさんが俺の魔力の層の薄さに気づいたのか説明をはじめる
「魔力量は消費・循環させることによって少しずつ貯蔵量が増えていきます
魔力量は生まれもって違いますが経験と努力によっていくらでも増やすことは可能ですが貯蔵できる
量が増えるとその分拡張する為の時間も比例して必要になるのも覚えてください」
「生まれ持った量か...」
「リュート様のやり方ではまだ全身に片腕に纏った量の魔力を循環させるのは難しいですが時間を
掛けて鍛錬すればいずれは全身にさらなる魔力を纏う事も可能でしょう」
やはり力をつけるには時間が掛かるのか
父さんは相当の魔力を持っているはずだ、でもどうやってそんな魔力を得たんだろうか
「先ほど言ったように魔力は個々によって違います、生まれたときからもの凄い魔力を持っている
者もいますがその魔力を制御できずに暴走あるいは暴発するものがいることも確かです」
「暴発?」
ベクターさんは道具を入れている皮袋を懐から取り出し中身を出す
そして空になった皮袋の口を手で握り締め袋の中に魔力を入れて膨らます
「魔力量に見合った体をもっているならそんなこともありませんが留め切れずに押さえ込むと...」
皮袋はだんだん大きく膨らみミシミシと音を立てて
パン!!
とうとう限界を超えて破裂してしまった
「このように破裂してしまいます」
「なるほど」
「いま流し込んだ魔力を納めるにはそれに見合う体を作るしかないのです」
「体を大きくするってことですか?」
「んー確かにそれができればいいですがすぐにできますか?」
「いいえ」
「なのでこの皮袋が魔力を押さえ込めるほどの硬いものならどうでしょうか」
ベクターさんは手を広げて前へ出す
その手のひらの上で球状の魔力の檻を作る
「この魔力の檻の中に先ほどと同じ魔力を入れますね」
ベクターさんはその球状の檻の中に魔力を注ぎこんだ
「この檻は鋼鉄のような硬さをもっています 逃げ場のない魔力は圧縮されて中に留まります」
「つまりその檻が体で鍛えれば鍛えるほど...」
「その通りです」
ベクターさんははにかんで俺の考えを読み取った
さらに檻の中に魔力を注ぎこむが檻はビクともしない
「皮袋が破けるほどの量以上に溜めることができるのです」
ベクターさんはそう言って球状の檻を解除すると魔力の波動が辺りに広がる
小さい球体に入っていたとは思えないもの凄い量だった
「なので体の外側を鍛えることも重要ですが内側も重要だということをお忘れなく」
「暴発の事はわかりましたが暴走ってのはどういうことですか?」
「ちょっと待っててください準備をするので、私が準備を終えるまで練習をしててください」
ベクターさんは転移の魔術で何処かに行ってしまった
しばらくすると転移で帰った
その手にはグラスと酒のビンがあった
「お酒でも飲むんですか?」
「いいえ違いますよ」
ベクターさんはグラスを床において酒を注ぎながら説明をする
「このグラスが体だとして今注いでいるお酒が魔力です」
酒がグラス満たしてそこで注ぐのを止める
「これが体に留めておける魔力の量です」
「はぁ」
そしてベクターさんはさらに酒を注ぎ始める
「しかし器よりも注ぐと零れ落ちてしまいます...そして」
ベクターさんは酒ビンを持っている方の逆の手で火の魔術を放って零れ落ちた酒に引火させる
「体から溢れた魔術はこの火のようにどんどん燃えて空気中に消えていきます」
零れた酒に着いた火はグラスの表面にまで燃え移る
「暴走とはこの火のように溢れた魔力だけでなく体の中にある魔術も勝手に放出してします現象の
ことを言います」
「なるほど」
つまりあふれ出る魔力はしっかりと制御しないと自身も燃やし尽くして滅びるといいたいのだろう
ベクターさんはグラスに手を置いて火を消した
「なので魔道具や封印術でこの手のように暴走を抑えるのです」
とても分かりやすい説明だった
「さて、潜在魔力についての説明は以上です 練習の続きを行ってください」
俺は説明を聞いた後自分の中にある魔術をできる限り全身に纏う様に意識を集中させた
全身に管を巻きつけるイメージ...そしてそこに魔力を流す
客観的に見ると俺の体全身は管でグルグル巻きになっている感じだ
そこへ魔力を流してみると皮膚から大体2㎜位の魔力の層になっている感じがする
片腕だけだと大体2cm程だろうか、まだ1割しか全身に覆えない
「はぁはぁ...まだこれっぽっちか」
「おや!全身に纏えたではないですか」
「...そういえばそうだ」
俺も無意識だったのだろう自分に集中していてそのことを気にする暇もなかった
「その集中力です、周りは気にせず没頭してください」
「はい!」
ベクターさんの特訓は座禅で集中することであっという間に時間が過ぎていった
「今日はこの辺にしておきましょう、明日もまた頑張りましょうね」
「はぁはぁ わかりました~」
全身に魔力を纏うのは想像以上に疲れるものであった
循環させてるとはいえ、体の外側に出しているから少しずつ魔力も減っていく
もうヘロヘロだ
「魔力の纏い方だいぶ上手くなってるねリュート」
「あぁイメージが固まったおかげとはいえまだ少しむらがあるよ」
「2日でここまでコツを掴めたなら後は反復練習だよ」
「わかってる、エドはすげーな」
「僕は小さい時から父さんに教えてもらっているからね 飲み込みの速さはリュートに適わないよ」
「そりゃどうも」
エドは額に汗を少し流しながら微笑んでこちらを見てくる
なんか少し色っぽい感じがするけどこいつ男だよな?
まぁそんなことはいまはいいとして早く飯を食って寝よう
俺は風呂・飯をすませてヨロヨロと歩きながら自室へ戻ってベットの上に突っ伏した
そういえば今日はロールが来てないな...まぁいいか
意識がスッとなくなって深い眠りに着いた
サブタイトルの話が前半で終わってしまい後半は特訓のことばかりですいません
この話にあうサブタイトルが思いつかなかったのが正直な感想です
こういうタイトルは?という意見があればどうぞご指摘してくださるとありがたいです