魔力の使い方
稽古場に行った次の日から俺は特訓の毎日だった
ちなみにロールはまだ寝ているので起こさないように部屋に置いてきた
稽古場にいくとザックさんがいつも待機してくれている
挨拶を交わすと早速特訓開始だった
「坊ちゃん!腰が入ってねー腰が!」
「はい!」
ザックさんとの特訓はとにかく体力 筋力作り
より強い攻撃を放つにはそれに見合うだけの体が必要だ
見た目は細くてもありえない力を発揮できる者もいるのはわかるが
それには相応のリスクが必要なことも確かだ
しかしリスクを軽減するにはとにかく鍛錬しかない
強くなることに近道はない
「さぁ坊ちゃん、この岩を叩き壊してみてくれ」
ザックさんはそう言ってどこからか岩をもってきた
「この岩を...」
流石の俺も自分より2倍いや3倍も高さがあろう岩を見て驚きを隠せない
なによりもこの岩を持ってきたザックさんが一番の驚きだ
「なぁにそのうち持ち上げるやり方も教えますよ」
多分これも魔力の使い方が関連してるだろうから後々覚えていくことにしよう
「さぁ思いっきり!」
「はい!」
俺は魔力を拳に覆うように流し込み勢いよく岩に拳を叩き込む
ガッ!!
少し岩が欠けた程度でビクともしない
「あぁ~そうじゃないんだよな~」
「どういうことですか?」
「坊ちゃんはただ魔力を拳に覆っているだけだ」
「確かに...」
「拳が触れる瞬間にその魔力を勢いよく接触面から奥へ拡散させるイメージだ」
「拡散させる...」
「俺がいまから手本を見せるからしっかりと見ててくれ」
するとザックさんは拳を岩へつけて魔力を拳へ溜める
「ふん!!」
バコン!!と音を立てて接触面が大きく削れる
「こんな感じで魔力を爆発させるイメージだ やってみてくれ」
俺は見よう見まねでもう一度拳に魔力を込め
「ふん!!!」
岩に拳が接触すると同時に魔力を拡散させる
バリバリ!!!と大きな音を立ててヒビが先ほどよりも大きくさらに奥にも響いた
しかしその威力に拳が負けて俺も後ろのほうへ飛んでいく
「ぐぁ!!」
「坊ちゃん!!」
後方へ飛んでいく俺をザックさんは受け止める
「まぁ攻撃のやり方はあってるけどよ、ちゃんと自分の体も魔力で覆わねーと今みたいに怪我するぜ」
「魔力を覆いながら魔力を放つ...両方両立しないといけないのか」
「まぁいまの坊ちゃんには難しいだろうがいずれ無意識にできるさ」
「だけど魔力を拡散させる際にどうしても魔力がそこに集中しちゃうんだよなぁ」
「ん~坊ちゃんはまだ魔力を拡散させるイメージが爆発に近いんだろうな」
ザックさんはそう言って稽古場の外に出ていきすぐに戻ってくる
「坊ちゃんこれは砂だ」
「砂?」
ザックさんは手に砂を握って俺に見せてくる
「この砂を握っている時は手の中から零れないだろ?」
「まぁ」
「これがいま魔力を拳に溜めている状況だとしよう」
「この砂を握りながら攻撃するように拳を振った際に手を手を広げる!」
サァっと砂が手から離れて中を舞う
「今砂を手から放った時拳より先のほうしか飛んでいかなかっただろ?」
「...」
「砂が手から舞う瞬間、それが拳が対象に接触する瞬間と向きになる」
「...そういうことか!」
俺は拳が殴るものに接触した瞬間爆発するように拡散していたが
そうではなく砂のように勢いをつけた方向にだけ拡散させればよかったんだ
「大体わかってきたか?」
「もう一度やってみます!」
先ほどのイメージを忘れないうちに俺は試してみる
「それじゃ...行きます!」
「おうよ!」
「はぁ!!!!」
バコン!と音が鳴り拳が触れた周辺が粉々に消し飛んだ
「おお!やるじゃねーか坊ちゃん!」
「はぁはぁだけど岩全体を壊す程ではないですね」
確かに岩は砕けたがほんの一部に過ぎない
「いやいや最初からできたら苦労なんてしないっての」
「もっと強く魔力を込めれば」
「いや、坊ちゃん手を見てみな」
俺は自分の手を見てみると殴ったほうの手がズタズタで血まみれだった
「攻撃するほうに意識が向きすぎて魔力で覆いきれてねーんだ、だからそのまま魔力込めまくって殴れば
坊ちゃんの腕はその力で爆ぜちまうぜ」
そうだった攻撃にイメージをやりすぎて拳を魔力で覆いきれてなかった
「そこらへんもしっかりと練習していこうぜ」
「はい!」
「後拡散させる以外にもこんな方法もある」
ザックさんは俺の殴った跡に向けて体をむけて
「単純に攻撃するだけじゃなくその威力を一点に集中すると!」
ドゴンオオオオオン!!
ザックさんが拳を前に突き出すとそこには岩を貫通して拳の形に穴が開いている
「防御力が硬い相手なんかに通用するがこれは身体能力が必要で今の坊ちゃんには早いな」
「こっちの方が拡散させるよりも強いんじゃないですか?」
「いや、一点に集中する威力はその分体に返る反動も大きいから無闇には使えないな」
「なるほど...」
「拡散は対象に当たった時に放つが貫通はそのまま魔力が飛んで行っちまうから使いどころは
間違えないようにしないとな」
俺はザックさんに言われたとおりに岩を少しずつ削る練習をした
しばらく練習をしていたらベクターさんが来た
「ザック、そろそろ」
「おう、そんじゃ坊ちゃん次はベクターの番だ頑張れよ!」
「はい!ありがとうございました!」
「おう!明日もがんばろーな」
ザックさんはそう言って稽古場から去っていった
「その腕の傷を見る限りだいぶ頑張っていたみたいですね」
「あーあまた無茶してるね」
ベクターさんの横でエドも俺の腕を眺めていた
「まだまだ修行不足かな ははは」
「そうならないようにがんばろうか、エド魔力供給と治癒をやってみなさい」
「わかった」
エドは俺の体に魔力を流し込むように集中してさらに治癒まで行ってくれた
「すごいなエド」
「いや、まだまだ父さんには適わないよ」
「さて、リュート様私からは魔力の扱い方を指導させていただきます」
そう言ってロバートさんは手をかざす
「魔力とは私達魔族だけではなく生き物全てが持っているものです、そこはわかりますね?」
「はい」
「リュート様は魔力をどのような物として認識しておりますか?」
「えっと...なんかこうぐわーって湧き上がるエネルギーみたいなもの?」
「んーそれだとこれからの特訓で説明が難しくなってしまいますね」
「こう考えてみてください 時には鉄の用に硬く時には柔軟に形を変える水とお考えください」
ロバートさんは自分の手の上で魔力を形を変えて説明する
「私達の体を覆う時は水のように柔軟にしかしそれは水よりも遥かに硬い鎧を纏う感じで」
ロバートさんの体を魔力が覆う
「こうすることで他の魔力や物理に対して抵抗力を上げます」
「なるほど」
「大事なのはイメージです やってみてください」
自分の体に鎧を纏うイメージをしながら魔力を出す
「そうです、しなやかにそして頑丈に」
「うっ...これは」
柔らかくそして硬くという矛盾したことを同時にイメージしながら魔力を出すが想像以上に
難しい
「はい、そこまで」
「はぁ はぁはぁ」
魔力を体の外に纏うのは魔力の減りが早すぎる
「リュート様は魔力の循環が旨く操作できていないようです」
「魔力の循環?」
「はい、ただ放つのではなく体の近くにある魔力を取り込むのです」
ロバートは瞳を閉じたと思うと大気中の魔力を自分のほうへと集めた
「私は外気にある魔力を集めることができますがそこまでする必要はありません」
「父さんみたいに外気の魔力を吸い込むんじゃなくてこうやって」
エドが手本を見せるように魔力の玉を手から出して体の周りをふわふわと浮遊して
胸元に吸収されるように消える
「周りにくっついている自分の魔力を魔力の根源である心臓部に戻す感じでやってみればわかりやすいんじゃないかな?」
「なるほど」
常に放出するのではなく体に纏う魔力を一度体に戻すことで消費を抑えるのか
「まずはその循環させる練習をしましょう、やっているうちに魔力を溜めるコツも一緒に覚えられます」
俺はベクターさんに言われるとおりに集中するため座禅を組んでいた
「最初は少しずつでいいです、放出と吸収を交互にしてみてください」
俺の横ではエドが一緒に座禅して魔力を体に纏う練習をしていた
先ほどエドがやっていたように俺も魔力を少しだけ体に巡らせるように出して体全体を一周させて体内にもどしてみる
「いいですね、少しずつでいいので魔力の量を増やしてみましょう」
この練習は想像よりも遥かに難しく初日はあまり進歩がなかった
「はい、今日はここまでにしましょう」
「だぁーーー疲れたーーー」
「確かにこれは肉体的よりも精神的にくるね」
「エードは魔力の操作に長けているだけあってよかった」
「はぁ~俺はまだまだですね」
「今日一日でできるようなことではないですよ、今日は休んでください」
「わかりました、それじゃまた明日なエド」
「あぁお疲れ様」
エドに一言言って俺は稽古場から自室に向かった
体中特訓の後でボロボロだった
自室へ入ると
「...リュート様お帰りなさい」
尻尾を左右に振ってロールが待っていた
「ロール家に帰ったんじゃないのか?」
「...ケールとベールにはとめられましたがお母様に許可をとりました」
「はぁルルシーラさんったら」
「...それにしてもリュート様、お体が随分と汚れていますわ」
「あぁ特訓した後だから汗臭いかもしれないぞ」
「いいえ!私は構いません!」
ロールは最程よりも目を輝かせてなにか言っている
「俺はこれから風呂に入ってくるからロールは部屋でまっててくれ」
「お背中お流しします!」
「いや、大丈夫だから」
「...そうですか」
なぜか露骨に落ち込んでいる
「それじゃ行ってくる」
俺はロールを部屋に置いて大浴場に行く
大浴場誰もいなく貸切状態だった
体を洗おうとバスチェアに座り体にお湯をかけて体を洗っていると
「...リュート様」
「おわあああ!ロール!」
そこにはバスタオルを巻いた姿でロールがいた
「...来ちゃいました」
「来ちゃいましたじゃない!ここ男湯だぞ!」
「...いまは貸切なので大丈夫ですよ」
「いや大丈夫じゃないでしょ」
「私はリュート様に裸を見られても大丈夫ですよ」
「俺は大丈夫じゃないの!」
そういえばロールと一緒に寝ていたりしたときはまったく気にならなかったが
いざ半裸のロールの姿を見たらやっぱり女性なのだと認識してしまう
俺も年相応の反応をしてしまう、もちろん下半身の反応のほうだ
「...私魔獣人ですし、醜いですよね」
「いや...そんなことないと思うよ」
「...でしたらなぜこっちを見てくれないのですか?」
さっきちらっと見てしまったがロールは13歳とは思えないほどの胸の大きさをしていた
ケールやベールはそんなになかったのだがロール別だ
服を着ていた時はそんなに気にしなかったがバスタオル越しでもわかる大きさだ
男だったら気になってしまうのも無理はないと思う
「いや~ロールがあまりにも魅力的過ぎるから直視できないんだよ」
「...!嬉しいですわ!」
ロールはバスタオルをつけたまま俺の背中に胸を押し付ける
柔らかい感触が直に伝わる
「ちょ!ロール!」
俺は前かがみになって股間を手で押さえる
いくら13歳といえどこれは反則だ
「ロール!一旦離れて!」
「嫌ですわ!リュート様がお体を洗うことを許可しない限り離れません!」
「わかった!お願いします!お願いだから離れて!」
「わかりましたわ、それではお背中お流しします!」
背中を流すことを許可したらやっと離れてくれた
見られたら俺が恥ずかしいくて死んでしまう
「さぁリュート様失礼しますね」
「あ はい、お願いします」
俺はタオルを腰に巻きロールに背中を預ける
ロールの小さな手で背中全体をゴシゴシと泡を立てて洗う
「...痒いところはありませんか?」
「いや特にはないよ」
「...逞しい背中」
なんかロールは荒い息を立てながら小さく何か呟いていたが特に俺は洗い終わるまで何も言わずにいた
「それではお湯をかけますね」
ジャーっと背中にお湯をかけてもらい泡をながして俺はやっと終わるのだと思っていた
「...それでは次は前の方ですね」
「いやいや!前は自分で洗うから!」
「...ムー」
なぜかロールは不満げな顔をしていた
「それじゃ俺がロールの背中流すよ」
「本当ですか!」
先ほどの不機嫌顔が嘘のように笑顔に変わった
そしてロールが俺の横のバスチェアに座るとバスタオルを外し始める
「ちょっとまった!」
「...なんでしょうか?」
「前の方は隠してくれ、じゃないと背中流してあげないよ」
「...わかりました」
ロールは言うことを聞いて前の方はバスタオルで隠してくれた
「それじゃいくぞ」
「...はい、いつでも」
俺はロールの背中を泡を立てた垢すりでゴシゴシと擦る
ロールの背中はとても小さく細かった
「...ん///」
「悪い!痛かったか?」
「...いえ、リュート様にお背中を洗っていただけて嬉しくて」
「そうか、痛かったら言ってくれよ」
ロールはなんどか色っぽい声を上げていたが意識しないようにした
「それじゃ背中流すぞ」
「...はぁはぁ、お願いします」
ジャァーと背中の泡を流し終わって俺の番は終了だ
「それじゃ俺風呂に浸かってるからちゃんと前は洗えよな」
「...わかりました」
俺はそのまま浴槽に浸かった
なんかとても疲れた
「はぁぁぁぁ」
でかい息を吐いて肩まで浸かりながら今日のベクターさんとの特訓を思い出す
心臓から体の表面に魔力を流しながらまた心臓に魔力を戻す
言葉では表現できるがそれを実践に移すとなかなか難しい
ザックさんのように具体的に表現できればいいのだけれど
と考え事をしていたら
「...リュート様」
「うわ!!ロール!」
ロールがいつの間にか俺と一緒の浴槽に入って横にいた
「...なにか考え事のようでしたが、私に協力はできないでしょうか?」
「協力ね~」
俺は少し間をおいてロールに聞いてみる
「なぁ魔力を体に覆うイメージってどんな風にすればいいと思う?」
「...体に覆うですか...」
やっぱりまだ少女には早かったかな
そう思っていたらロールが俺の胸に手を当てて
「魔力がここから出るとして、こうやって...」
ロールは手で俺の肌をなぞる様に心臓から肩・腕・手の順に撫ではじめ
手から腕・肩・心臓へと戻っていく
「このように一本の通る管を作るのです」
「管?」
「はい、そして行きと帰りで交差した部分は魔力が重なって覆われていてより頑丈になるのです」
「管か...」
俺は腕を目の前にかざして言われたとおり心臓から肩・腕・指に1つの管で巻かれるイメージをする
そのイメージを持ったまま魔力を流し込んでみる
「ふん!」
そうして魔力を込めたところかざしたほうの肩から腕・手先まで魔力が覆われるのが感じ取れた
しかもただ放出されたのではなくしっかりと心臓部にまで魔力が戻ってきているのがわかる
「で できた!」
俺は嬉しさのあまり浴槽から立ち上がって喜んでしまった
ロールのおかげでイメージと感覚を見つけることができたため疲れを忘れるほど興奮した
「ロール!お前のおかげでイメージができた!本当にありがとう!」
「...いえ、リュート様のお役にたてたならうれしい限りです」
「このイメージを忘れないようにしないと!」
「...私も忘れられない思い出になりそうです」
俺はロールの目線の先が俺の顔じゃないことに気づいて目線の方向に目を向ける
「...なんともご立派な///」
「...うわああああああ!!!!!」
俺は興奮で下半身を丸出しにしたまま立ち上がっていたことを忘れていて
ぶら下げているものをロールに凝視されたことに気づき浴室から急いで
出て行って自室に戻ってしまった
「はぁ~ロールには申し訳ないことをしてしまった」
自室で落ち込んでいるとノックもせずにロールがまた薄着で入ってくる
「...リュート様」
「ロール、さっきはすまなかった!」
「...なぜ謝られるのですか?」
「あんなもの見せてしまって不快な気持ちになっただろ?」
「...いえ、寧ろ私にとっては///」
「怒ってないのか?」
「...怒ることはありません、リュート様ももうお気になさらずに」
「そうか、わかった」
なんかロールは怒っていなかったみたいだから気にしないようにしよう
「...それよりも早く横になりましょう」
「そうだな」
ロールは俺がベッドに横になると俺の横に来て腕を枕にするようにして密着する
あんな後だから少し緊張するが考えないようにしよう
「ロール、今日はありがとな」
俺は腕枕してないほうの手でロールの頭を撫でる
「...いえ、リュート様のお力ですよ」
「そんな謙遜するなって」
「...ご褒美として頭を撫でて下さい」
「あぁわかった」
俺はしばらくロールの頭をなでながら今日の感覚を思い出していた
そんな感じでゆっくりと瞳を閉じて眠りに付いた
なんかロールちゃんとばかりくっついていて申し訳ありません
この先の話では他の女性キャラとのやり取りもしっかりといれていこうと思います。
読んでくれた方には何か感想を書いてくれると今後に生かそうと思っています。